名古屋市を縦断し、伊勢湾へと注ぐ一級河川、庄内川。都会の喧騒の中にありながら、その豊かな水辺は、私たちに素晴らしい自然の恵みと釣りの楽しみを提供してくれます。特に、日差しが力強さを増す7月は、川の生き物たちが活発に動き出す絶好のシーズン。初心者の方からベテランの方まで、誰もが心躍る釣りを体験できる季節の到来です。
この記事は、7月の庄内川で釣りを始めてみたい、あるいはもっと楽しみたいと願うすべての釣り人のための完全ガイドです。家族で気軽に楽しめる小物釣りから、本格的なルアーフィッシングで大物を狙うスリリングな釣りまで、庄内川の魅力を余すところなくお伝えします。ターゲットとなる魚の生態から、具体的な釣り場のポイント、初心者でも分かりやすい釣り方の手順、そして何よりも大切な安全とマナーについて、丁寧に解説していきます。
さあ、このガイドを手に、夏の庄内川へ、忘れられない一匹との出会いを求めて出かけてみませんか。
7月の庄内川 ターゲット別早見表
ターゲット | 難易度(初心者向け) | 主なポイント | 主な釣り方 | エサ・ルアー |
テナガエビ | ★☆☆☆☆ | 公園周辺の護岸 | エサ釣り(ウキ/ミャク) | アカムシ |
ハゼ | ★★☆☆☆ | 河口域の砂地 | エサ釣り(ウキ/ミャク) | 石ゴカイ |
シーバス | ★★★☆☆ | 橋脚や水門 | ルアー釣り | 小型ルアー |
クロダイ | ★★★★☆ | 牡蠣殻や岩場 | ルアー釣り、エサ釣り(ヘチ釣り) | カニ・イガイ |
庄内川で釣りをする前に知っておきたい基本ルールとマナー

釣りを存分に楽しむためには、まず基本となるルールとマナーを心に留めておくことが不可欠です。自然への敬意と、周りの人々への配慮が、すべての釣り人にとっての素晴らしい一日を約束します。
遊漁券は必要?庄内川の特別な事情
まず、多くの方が疑問に思うのが「遊漁券(釣り券)は必要なのか?」という点でしょう。結論から言うと、本ガイドで紹介する愛知県内の庄内川水域では、原則として遊漁券は必要ありません。
これは、全国の一級河川の中でも珍しく、愛知県内の庄内川には漁業権を管理する「内水面漁業協同組合」が存在しないためです。この「自由河川」ともいえる状況は、初心者の方が気軽に釣りを始められる大きな魅力となっています。
しかし、この「自由」は、釣り人一人ひとりの「責任」と表裏一体です。漁協による放流活動や資源管理が行われていない分、川の環境や魚たちの未来は、私たち釣り人の行動にかかっています。釣った魚をすべて持ち帰るのではなく、特に大きな親魚は未来のためにリリースする、ゴミは必ず持ち帰るなど、資源を大切にする意識を持つことが何よりも重要です。
なお、庄内川は上流の岐阜県内では「土岐川」と呼ばれており、管轄が異なるためルールも変わる可能性があります。本ガイドは愛知県内の庄内川を対象としていることをご理解ください。
安全第一で楽しむための心構え
川は穏やかな表情を見せていても、天候の急変で危険な場所に変わることがあります。
- 釣行前の情報確認: 出かける前には必ず天気予報を確認しましょう。また、国土交通省のウェブサイト「川の防災情報」では、庄内川の現在の水位やライブカメラの映像をリアルタイムで確認できます。上流で雨が降ると、下流の水位が急に上昇することがあるため、釣りの計画に役立ててください。
- ライフジャケットの着用: 特に夜釣りや、お子様と一緒の場合、足場の悪い場所では、万が一に備えて必ずライフジャケットを着用しましょう。
- 適切な履物: 川岸は濡れて滑りやすい場所が多くあります。滑りにくい靴を選び、安全を確保してください。
- 周囲の確認: ルアーを投げる際(キャスティング)は、必ず後方や周囲に人がいないか確認する癖をつけましょう。
自然と周りの人への配慮
気持ちよく釣りを楽しむためには、自然環境と他の利用者への配慮が欠かせません。
- ゴミは必ず持ち帰る: 釣り糸の切れ端、エサの容器、弁当のゴミなど、自分が出したゴミはすべて持ち帰りましょう。「来た時よりも美しく」が釣り人の誇りです。
- 場所の譲り合い: 庄内川は多くの人に親しまれている場所です。先行者がいる場合は、十分な距離をとってから釣りを始めましょう。気持ちの良い挨拶を交わすことで、お互いに快適な時間を過ごせます。
- キャッチ&リリース: 釣りの楽しみは、魚を釣ることそのものにあります。食べる分だけ持ち帰り、小さな魚や将来の繁殖を担う大きな魚は、優しく水に戻してあげる「キャッチ&リリース」を心がけましょう。
駐車と立ち入りについて
- 駐車マナー: 庄内緑地公園のように駐車場が整備されている場所もありますが、そうでない場合は、地域の住民の方や通行の妨げにならないよう、交通ルールを守って駐車してください。
- 立ち入り制限: 堤防や河川敷への道には、事故防止や不法投棄対策のために車止めが設置されていることがあります。これらの場所には無理に侵入せず、ルールを守って利用しましょう。
【手軽さNo.1】家族で楽しむ!テナガエビ&ハゼ釣り

夏の庄内川で、まず最初に体験していただきたいのが、テナガエビとハゼの釣りです。特別な道具も難しい技術も必要なく、お子様から大人まで、誰もが笑顔になれる釣りの入門編です。
宝石のようなエビを釣る「テナガエビ」
梅雨時から夏にかけてが旬となるテナガエビ。透き通った体に、オスは長く美しいハサミを持つその姿は、まるで水中の宝石のようです。のんびりとアタリを待つ時間は、夏の日の良い思い出になることでしょう。
主なポイント
テナガエビは物陰に隠れるのが大好きです。そのため、狙うべきは石積み護岸や消波ブロック(テトラポッド)の隙間です。
- 庄内緑地公園前: 初心者に最もおすすめのポイントです。駐車場やトイレが完備されており、足場も良いため、家族連れでも安心して楽しめます。
- 庄内川河口: 広大なエリアですが、護岸の石積み周りなどを探れば、多くのテナガエビに出会える可能性があります。
初心者向けタックル(仕掛け)
- 竿: 2.1m~2.4m程度の短めの「のべ竿」が扱いやすくて最適です。
- 仕掛け: 釣具店で販売されている「テナガエビ用仕掛けセット」が最も手軽で確実です。これにはウキ、オモリ、ハリがすべて含まれています。
- 仕掛けのコツ「ウキを沈める」: ここがテナガエビ釣りの一番の秘訣です。仕掛けについているオモリ(ガン玉)を、ウキの浮力よりも少しだけ重く調整します。すると、仕掛けを水に入れるとウキが水面直下でゆっくりと沈んでいきます。この一工夫には二つの重要な意味があります。一つは、風や水の流れで仕掛けが動いてしまうのを防ぎ、狙った隙間にエサを留めておくため。もう一つは、警戒心の強いテナガエビがエサをくわえた時に、ウキの抵抗を感じさせにくくするためです。このテクニックが釣果を大きく左右します。
エサと付け方
- エサ: 最も実績が高いのは「アカムシ」です。釣具店で手に入ります。
- 付け方: 小さなハリに、アカムシを1~2匹、頭の硬い部分にハリ先を少しだけ刺す「チョン掛け」で十分です。
アワセのコツ
テナガエビのアタリは独特です。魚のようにすぐにアワセてはいけません。
- まず、ウキが「ツンツン」と動いたり、横にスーッと移動したりします。これが最初のアタリです。テナガエビがエサをハサミで掴んだ合図です。
- ここからが我慢の時間。テナガエビはエサをすぐに食べず、安全な自分の隠れ家まで運んでから食事を始めます。焦らず、心の中で20秒から30秒ほど数えましょう。
- やがてウキの動きが止まります。これがエサを食べ始めたサインです。
- ここで、竿先をゆっくりと、静かに持ち上げます。決して強く引いてはいけません。すると、テナガエビの口に自然とハリが掛かります。この「待つ釣り」こそが、テナガエビ釣りの醍醐味です。
テナガエビについて詳細を知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
【完全ガイド】テナガエビ釣りを始めよう!初心者向け仕掛け・エサ・ポイント選びのコツ
夏の風物詩「ハゼ」
「デキハゼ」と呼ばれる小さなハゼが釣れ始めると、本格的な夏の訪れを感じます。食いしん坊で好奇心旺盛なハゼは、次々とアタリを送ってくれるため、特に子供たちに大人気のターゲットです。7月はまさにシーズンの始まりです。
主なポイント
ハゼはテナガエビと同じような場所にもいますが、より砂地や泥地を好みます。川底に少しでも変化がある場所や、カキ殻が点在するような場所に集まっています。庄内川の下流域や河口部が主な釣り場となります。
初心者向けタックル(仕掛け)
- 竿: テナガエビ用より少し長い、3.6m~4.5mの「のべ竿」があると、少し沖のポイントも探れて便利です。
- 釣り方その1「ウキ釣り」: 最も直感的で分かりやすい釣り方です。テナガエビと似た仕掛けですが、ハゼ用の少し大きめのハリ(袖針5号など)を使います。エサが川底スレスレを漂うようにウキ下の長さを調整するのがコツです。
- 釣り方その2「ミャク釣り」: 少しステップアップしたい方におすすめなのが、ウキを使わないミャク釣りです。竿先や手元に伝わる「ブルブルッ」というアタリを直接感じて掛ける、よりアクティブな釣り方です。仕掛けがシンプルなため、魚がいる場所をテンポよく探っていくことができます。
ウキ釣りはのんびりとアタリを待つスタイル、ミャク釣りは積極的に魚を探しに行くスタイル。その日の気分で選べるのもハゼ釣りの魅力です。
エサと付け方
- エサ: 定番は「石ゴカイ」です。よく動き、ハゼへのアピール力は抜群です。
- 付け方: 1匹を2cmほどの長さに切り、ハリにまっすぐ通し刺しにします。ハリ先から少しだけ垂らすと、その動きでハゼを誘ってくれます。
- 疑似餌: 生き餌が苦手な方には、バークレイ社の「ガルプ!」シリーズのような匂い付きのワームも非常に効果的です。
ハゼは群れでいることが多い魚です。一匹釣れたら、その周辺に仕掛けを集中して投入するのが、数を伸ばすコツです。
ハゼ釣りについてより詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
ハゼ釣り完全ガイド!初心者でも爆釣できる釣り方、仕掛け、場所を徹底解説
【ルアー釣りの本命】大物を狙え!シーバス(スズキ)釣り

庄内川は、ルアーフィッシングのターゲットとして絶大な人気を誇るシーバス(スズキ)の宝庫でもあります。都市の夜景を背景に、強烈な引きで竿を絞り込む大物とのファイトは、一度味わうと病みつきになるほどの興奮があります。
7月のシーバス攻略は「マイクロベイトパターン」を理解せよ
夏のシーバスを釣るための最大の鍵、それが「マイクロベイトパターン」の理解です。
6月から7月にかけて、庄内川には「ハク」と呼ばれるボラの稚魚が大量に発生します。その大きさは2cmから5cmほど。シーバスたちは、春先のバチ(ゴカイ類)を飽食して体力を回復させた後、今度はこの豊富で食べやすいハクを主なエサとして狙い始めます。
この現象が釣り人に意味することはただ一つ、「**ルアーをエサに合わせる(マッチ・ザ・ベイト)」**ということです。シーバスは無数のハクの中から、ひときわ弱っていたり、群れからはぐれたりした個体を狙っています。そのため、私たち釣り人も、ハクのサイズや動きを模した小さなルアー(マイクロベイトルアー)を使い、彼らにとって「食べやすいエサ」を演出する必要があるのです。
庄内川の一級ポイント
シーバスは、エサとなる小魚を効率よく捕食できる場所に潜んでいます。
- 橋脚: シーバス釣りの代名詞ともいえる超一級ポイントです。特に重要なのが「明暗(めいあん)」の境界線。橋の街灯が水面を照らすことで、明るい場所と暗い場所のくっきりとした境目が生まれます。シーバスは暗闇に身を潜め、光の中を油断して通りかかる小魚を待ち伏せしています。庄内川では「庄内新川橋」がこの条件を満たす非常に有名な人気ポイントです。
- 河口・干潟: 海と川が交わるエリアは、潮の満ち引きに乗ってシーバスが出入りする玄関口です。広大な干潟である「藤前干潟」周辺は、川全体の生態系を支える重要なゾーンです。特に雨が降った後は、川の増水によって流されてくる小魚を狙ってシーバスの活性が上がることがあります。
- 水門・合流点: 流れに変化が生まれる場所は、すべてがチャンスポイントです。水門が開いて流れが生まれたり、支流が本流に合流する場所では、流れのヨレができます。シーバスはこうした場所に定位し、流されてくるエサを待ち構えています。
初心者向けルアータックル
- ロッド: 岸から釣る(おかっぱり)場合、8~9フィート(約2.4m~2.7m)のシーバス専用ロッドが最も汎用性が高くおすすめです。
- リール: 2500番~4000番のスピニングリールを選びましょう。糸のたるみを素早く巻き取れる「ハイギア(HG)」モデルが便利です。
- ライン(釣り糸): ここが初心者にとって最初の関門ですが、システムを理解すれば簡単です。
- メインライン: リールに巻く основная леска. 「PEライン」の0.8号~1.5号を使います。PEラインは伸びないため感度が非常に良く、ルアーの動きや魚の小さなアタリも手元に伝えてくれます。
- ショックリーダー: PEラインの先に結ぶ、長さ1mほどの「フロロカーボン」または「ナイロン」の糸です。太さは20~30ポンド(lb)が目安。このリーダーには、魚からPEラインを見えにくくする、根ズレ(障害物との摩擦)からPEラインを守る、魚の急な引きの衝撃を和らげる、という3つの重要な役割があります。
- 結び方(ノット): PEラインとリーダーを結ぶ作業は、ルアーフィッシングの基本です。「FGノット」などが有名ですが、最初は難しく感じるかもしれません。今は多くの解説動画があるので、いくつか見て練習することをおすすめします。
7月のおすすめルアーと釣り方
マイクロベイトパターンを意識したルアー選びが重要です。
- ルアーの種類:
- シンキングペンシル: 5cm~8cm程度のもの。弱って漂うハクを演出するのに最適で、夏の切り札的存在です。ただ巻くだけで自然なアクションを生み出します。
- 小型ミノー: 7cm~9cm程度のフローティング(浮く)タイプ。水面直下を元気に泳ぐ小魚を演出したい時に使います。
- バイブレーション: 金属製やプラスチック製のもの。より深い層を探ったり、強い波動で遠くの魚にアピールしたい時に有効です。夏は小型のモデルを選びましょう。
- 釣り方:
- 夜が狙い目: シーバスは夜行性の魚です。特に初心者のうちは、警戒心が薄れ、活発にエサを探し回る夜(ナイトゲーム)の方が圧倒的に釣りやすいです。
- 基本は「ただ巻き」: 最も基本的で、最も釣れるテクニックが「ただ巻き」です。ルアーを投げ、一定のスピードでリールを巻くだけ。これだけで、今のルアーは魚を魅了する動きをしてくれます。
- 明暗を攻める: 橋脚を狙う際は、自分が暗い側に立ち、ルアーを明るい側へ投げ、明暗の境目を横切るように巻いてきます。シーバスが飛び出してくるのは、まさにその境目です。
- ファイトの注意点「エラ洗い」: シーバスはハリに掛かると、水面で激しく頭を振ってハリを外そうとします。これを「エラ洗い」と呼びます。この時に糸が緩むとバレてしまうため、竿先を水面に向けて下げ、糸のテンションを保ち続けることが重要です。
シーバス釣りについてより詳しく知りたい方は以下記事も参考にしてください。
【2025年版】シーバス釣りの完全ガイド!初心者向け釣り方(ルアー・餌)の種類とコツを徹底解説
【奥深きターゲット】庄内川のクロダイ(チヌ)を釣る

硬い貝殻をも砕く強力な顎を持ち、警戒心が強く、釣り人を魅了してやまない魚、クロダイ(チヌ)。庄内川は、この賢く力強いターゲットを狙える素晴らしいフィールドでもあります。
夏はクロダイのハイシーズン!
6月から9月にかけての夏は、クロダイ釣りの最盛期です。春の産卵を終えたクロダイは、体力を回復させるために積極的にエサを探し始めます。水温が上昇するにつれて、海水と真水が混じり合う汽水域、特に川の河口部へと大挙して押し寄せてきます。
なぜなら、そこは彼らの大好物であるカニやエビ、貝類が豊富な「レストラン」だからです。この旺盛な食欲が、私たち釣り人にとっては絶好のチャンスとなるのです。時には水深1mにも満たないような浅瀬まで入ってくることもあります。
楽しみ方は2通り!ルアーとエサ釣り
庄内川でのクロダイ狙いには、大きく分けて二つのスタイルがあります。一つは、ルアーで積極的に探していく現代的な「チニング」。もう一つは、現地の伝統に根差した、シンプルかつ奥深いエサ釣り「ヘチ釣り」です。どちらもクロダイ釣りの魅力を存分に味わえる、素晴らしいアプローチです。
Path 1: ルアー釣り (チニング – Chining)
- 戦略: ルアーでのクロダイ釣りは、基本的に川底(ボトム)を攻略するゲームです。カニやハゼといった、底を這う生き物をルアーで模倣します。
- 主なポイント: 狙うべきは、クロダイがエサを探し回る**カキ殻がびっしり付いた場所(牡蠣瀬)**や、岩、コンクリートブロックなどの硬い底質のエリアです。
- ルアー:
- ボトム用ルアー: 底をズルズルと引く「ズル引き」や、時々跳ねさせる「ボトムバンプ」で使う専用のルアーが有効です。底を叩くことで砂煙を上げ、逃げ惑うカニやエビを演出します。
- ワーム: カニやエビの形をしたソフトルアーを、専用のオモリ付きのハリ(チニング用ジグヘッド)にセットして使います。非常にリアルな誘いが可能です。
- アタリとアワセ: クロダイのアタリは「ゴンッ、ゴンッ」と硬く、明確に出ることが多いです。違和感を感じたら、しっかりと竿を立ててフッキングさせましょう。
Path 2: エサ釣り (ヘチ釣り – Hechi-zuri)
- 哲学: 「ヘチ釣り」とは、その名の通り、堤防や護岸の「ヘチ(縁)」に沿って、エサを垂直に落とし込んでいく釣り方です。余計なものを一切排した、ミニマリズムの極致ともいえる伝統釣法です。庄内地方は、古くから竿とリールを使ったクロダイ釣りが盛んであった歴史もあり、その精神を受け継ぐ釣り方ともいえるでしょう。
- 専用のタックル:
- 竿: 2.4m~3.0mの「ヘチ竿」と呼ばれる専用竿を使います。非常に繊細な穂先と、竿を安定させるための「肘当て」が特徴です。
- リール: 「タイコリール」という、糸を巻くことよりも、親指一本でスムーズに糸を送り出すことに特化したシンプルなリールが使われます。
- 仕掛け: 道糸に、小さなオモリ(ガン玉)とハリを結んだだけ。ウキもサルカンも使わない、究極のシンプル仕掛けです。
- エサ: 現地でクロダイが食べているものをエサにするのが一番です。
- イガイ(カラス貝)やミジ貝: 夏の特効エサです。貝殻の中にハリを隠すのではなく、貝から出ている「足糸(そくし)」と呼ばれる繊維の部分にハリを掛ける「繊維掛け」が、ハリ掛かりを良くする秘訣です。
- カニ: これもまた非常に有効なエサです。甲羅の横からハリを刺して使います。
- 釣り方:
- 静かにポイントに近づき、壁際にエサを落とします。
- リールに添えた親指でブレーキをかけながら、エサが自然に沈んでいくようにコントロールします。
- 竿先や、水面に浮かぶ道糸の動きに全神経を集中させます。糸の沈む速度が止まったり、少し引き込まれたり、フッと軽くなったり…そのわずかな「違和感」がアタリです。
- アタリを感じたら、竿で聞きアワセをするように静かに竿先を上げ、魚の重みが乗ったら一気に合わせます。足元での強烈なファイトは、ヘチ釣りならではのスリルです。
クロダイ釣りについてより詳しく知りたい方は以下記事も参考にしてください。
クロダイ(チヌ)のルアー仕掛けの紹介!チニングのコツも伝授します。
まとめ
夏の庄内川は、まさに釣りのパラダイスです。家族で楽しめるテナガエビやハゼの小物釣りから、ルアーで狙うシーバス、そして伝統釣法で挑むクロダイまで、あなたのレベルやスタイルに合った、多種多様な楽しみ方が待っています。
もしあなたが釣りを始めたばかりなら、まずはテナガエビやハゼ釣りからスタートすることをおすすめします。簡単な仕掛けで、魚からの反応を得る喜びを知ることは、きっとあなたを釣りの世界の虜にするでしょう。そして、道具の扱いや魚とのやり取りに慣れてきたら、ぜひシーバスやクロダイといった、より戦略的で奥深いターゲットに挑戦してみてください。
庄内川という素晴らしいフィールドが、いつまでも豊かな恵みをもたらしてくれるように、安全第一の心構えと、自然や周りの人々への感謝と思いやりの気持ちを忘れずに、釣りを楽しんでください。
それでは、良い釣りを!