導入:アドレナリン全開の岸釣りへ、ようこそ

静寂に包まれた夜明けの海。水平線がほのかに色づき始める中、ロッドをしなやかに振り抜き、メタルジグが美しい放物線を描いて遥か沖へと飛んでいく。着水音とともにラインが走り、ジグがキラキラと輝きながら未知の深みへ沈んでいく。そして、その瞬間は突然訪れる。「ガツン!」という、ロッドをひったくるような強烈な衝撃。ラインの先で、パワフルな青物が生命感あふれるファイトを開始した合図だ。このアドレナリンが全身を駆け巡る感覚こそ、ショアジギングの最大の魅力です。
この記事では、そんなエキサイティングな釣りを関東の身近なフィールドで体験するための最適な入門法、「ライトショアジギング(LSJ)」の全てを解説します。LSJは、船に乗る必要も、本格的で重たいタックル(釣り道具)を揃える必要もなく、岸から手軽に、しかしダイナミックに青物をはじめとした美味しい魚たちに挑戦できる釣りです。
この記事を読めば、ショアジギングの基本から、あなたに最適なタックル選び、ルアーを操るテクニック、そして関東のおすすめ釣り場とベストシーズンまで、LSJを始めるために必要な知識が全て手に入ります。さあ、準備はいいですか?強烈な魚の引きをその手で体感する、新たな冒険への扉を開きましょう。
第1章:ショアジギングを徹底解剖!SLSJ・LSJ・本格派の違いとは?

この章では、ショアジギングの世界を明確に理解するため、その定義と、パワーによって分類される3つのスタイルを徹底的に解説します。この違いを知ることが、あなたに最適な釣りを見つけるための第一歩です。
ショアジギングとは?
ショアジギングとは、岸(ショア)から「メタルジグ」と呼ばれる金属製のルアーを遠投し、様々なアクション(操作)を加えることで小魚の動きを演出し、それを捕食する魚(フィッシュイーター)を釣る、非常にダイナミックなルアーフィッシングの一種です。主なターゲットは、ブリやカンパチ、ヒラマサといった遊泳力が高く強烈な引きを持つ「青物」で、そのエキサイティングなファイトが多くの釣り人を魅了しています。釣り場は堤防、サーフ(砂浜)、磯など多岐にわたります。
パワーで分かれる3つの階層
「ショアジギング」と一言で言っても、実は使用するメタルジグの重さによって、大きく3つのカテゴリーに分類されます。そして、ジグの重さが変われば、必要となるタックルのパワーや狙える魚のサイズも変わってきます。この分類を理解することで、ライトショアジギングがなぜ初心者にとって最適なのかが明確になります。
項目 | スーパーライトショアジギング (SLSJ) | ライトショアジギング (LSJ) | 本格ショアジギング |
使用ジグ | 3g – 20g (主に5g-20g) | 20g – 60g (主に30g-40g) | 60g – 150g以上 (主に80g以上) |
主な対象魚 | アジ、サバ、メバル、カサゴ、小型回遊魚 | 中小型青物 (イナダ、サゴシ)、ヒラメ、マゴチ、タチウオ | 大型青物 (ブリ、ヒラマサ、カンパチ)、シイラ |
主な釣り場 | 堤防、漁港、河口 | 堤防、サーフ | 沖磯、水深のある堤防 |
タックルパワー | ライト (アジング・メバリングロッド流用可) | ミディアムライト~ミディアム (シーバスロッド流用可) | ヘビー~エクストラヘビー (専用タックル必須) |
初心者おすすめ度 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★☆☆☆ |
スーパーライトショアジギング (SLSJ)
SLSJは、アジングやメバリングといったライトソルトゲームの延長線上にある、最も手軽なショアジギングです。5gから20g程度の非常に軽いメタルジグを使い、アジ、サバ、カサゴといった身近なターゲットを狙います。体力的な負担がほとんどなく、漁港や穏やかな湾内で気軽に楽しめるため、ルアーフィッシング入門に最適です。
ライトショアジギング (LSJ)
本書の主役であるLSJは、SLSJと本格ショアジギングの中間に位置する、まさに「良いとこ取り」のスタイルです。20gから60g(主に30g~40g)のメタルジグを使用し、イナダ(ブリの若魚)やサゴシ(サワラの若魚)といった中小型の青物をメインターゲットとします。本格的なショアジギングほど体力的な負担や専門的なタックルを必要としないにもかかわらず、青物の強烈な引きを十分に味わえることから、近年爆発的な人気を博しています。
本格ショアジギング
本格ショアジギングは、岸から釣れる魚のサイズとパワーの限界に挑む、最もパワフルなスタイルです。80gを超えるような重いメタルジグを大遠投し、10kgを超えるブリやヒラマサといった「夢のターゲット」を狙います。釣り場は外洋に面した潮通しの良い磯などがメインとなり、強靭な肉体、専用のヘビータックル、そして高度な知識と安全意識が求められる、経験者向けの釣りと言えるでしょう。
このように、ショアジギングが3つの階層に分かれていることは、単なる分類以上の意味を持ちます。それは、釣り人にとって明確な「ステップアップの道筋」を示しているからです。アジングやシーバスフィッシングを楽しんでいる人が、まずは手持ちの道具でSLSJやLSJに挑戦し、そこで成功体験を積む。そして、さらなる大物を求めて本格ショアジギングの世界へ…という自然な成長経路が生まれます。このアクセスのしやすさが、ショアジギングというジャンル全体の人気を支える大きな要因となっているのです。
第2章:LSJが最強の入門である5つの魅力

なぜ、数ある釣りの中から、初心者にLSJがこれほどまでにおすすめされるのでしょうか。その理由は、単に「手軽だから」という一言では片付けられません。ここでは、LSJが持つ5つの具体的な魅力を深掘りし、その人気の秘密に迫ります。
1. ライトな道具で味わう、スリリングなファイト
「ライト」という言葉から、釣れる魚も小さいのでは?と想像するかもしれません。しかし、それは大きな誤解です。LSJの魅力は、あえてライトなタックルを使うことで、魚とのやり取り(ファイト)を最大限に楽しむ点にあります。例えば40cmのイナダがヒットした際、本格的なヘビータックルでは力任せに引き寄せられてしまいますが、LSJのしなやかなロッドなら、竿が満月のように曲がり、魚の動き一つ一つがダイレクトに手元に伝わります。この増幅されたスリルこそが、一度味わうと病みつきになるLSJの醍醐味なのです。
2. 青物だけじゃない!豊富なターゲット
LSJのもう一つの大きな魅力は、ターゲットの豊富さです。もちろん主役はイナダやサバといった青物ですが、同じタックル、同じルアーで、高級魚として知られるヒラメやマゴチといったフラットフィッシュ、人気のシーバス、神出鬼没のタチウオ、さらにはカサゴやハタなどの根魚まで狙うことが可能です。本命の青物の回遊がない時間帯でも、狙いを切り替えて別の魚を狙えるため、「ボウズ(一匹も釣れないこと)」で終わる日が少なく、常に何かが釣れるかもしれないという期待感を持って釣りを楽しめます。
3. 安全・手軽な釣り場で楽しめる
本格ショアジギングが、時に危険を伴うアクセス困難な磯を主なフィールドとするのに対し、LSJのメインステージは、私たちの身近にある安全な釣り場です。足場の良い堤防や広々としたサーフは、駐車場やトイレといった設備が整っている場所も多く、家族連れや釣りが初めての方でも安心して楽しむことができます。特別な装備を必要とせず、思い立ったらすぐに行けるアクセスの良さも、LSJが多くの人に愛される理由です。
4. 体への負担が少なく、長時間集中できる
80gや100gといった重いメタルジグを一日中投げ続ける本格ショアジギングは、時に「修行」と形容されるほど体力を消耗します。一方、LSJで主に使用するジグは30g~40gと比較的軽いため、体への負担が格段に少ないのが特徴です。これにより、体力に自信のない方や女性、子供でも疲れにくく、魚の活性が上がる貴重な時間帯(時合い)に集中力を切らさずに釣りを続けることができます。長く楽しめることは、結果的に釣果へと繋がる重要な要素です。
5. 手持ちのタックルで始められる「流用のすすめ」
LSJを始めるにあたり、最もハードルを下げてくれるのが、この「タックルの流用性」です。特に、人気のシーバスフィッシングで使われるM(ミディアム)クラスのロッドは、LSJで多用する30g~40gのメタルジグを扱うのにまさに最適です。もしあなたがシーバスロッドをお持ちなら、新たに高価な専用ロッドを購入せずとも、メタルジグをいくつか買い足すだけで、すぐにでもLSJの世界に飛び込むことができるのです。
この点は、LSJの人気の核心を突いています。LSJは独立した釣りであると同時に、シーバスフィッシングという巨大な既存コミュニティと強力な相乗効果を生み出しています。多くのシーバスアングラーが、自分のタックルでそのまま青物が狙えることを知り、LSJへと興味を広げていく。この「入門の壁」の低さが、LSJを一大ムーブメントへと押し上げた原動力なのです。
第3章:最初のLSJタックル:初心者のための道具選び完全ガイド

ここからは、実際にLSJを始めるための道具選びを具体的に解説します。専門用語も出てきますが、一つ一つ丁寧に説明するのでご安心ください。まずは、以下の「初心者向けLSJタックルセッティング例」を参考に、全体のイメージを掴んでみましょう。
道具 | 推奨スペック | ポイント |
ロッド | 長さ: 9.6ft (約2.9m), 硬さ: M or MH | 遠投性能と操作性のバランスが良い。シーバスロッドM/MHクラスでも代用可。 |
リール | 4000番 (シマノ) / LT4000番 (ダイワ) | PE1.2号が200m巻ければOK。ハイギア(HG/XG)が手返し良くおすすめ。 |
メインライン | PEライン 1.0号~1.2号 | 200m巻いておくと安心。8本撚りが滑らかでトラブルが少ない。 |
リーダー | フロロカーボン 20lb~25lb (5~6号) | 長さは1.5m (一尋)が基本。根ズレや歯切れを防ぐ必須アイテム。 |
ルアー | メタルジグ 30g & 40g | まずはこの2重量から。イワシカラー、ブルピン、アカキンがあれば万全。 |
ロッド
長さ
初心者が最初に選ぶべき長さの基準は**9.6ft (フィート、約2.9m)**です。この長さは、ルアーを遠くまで投げる「遠投性能」と、ルアーを意のままに操る「操作性」のバランスが最も優れています。サーフなど広大な場所で飛距離を最優先するなら10ft以上、足場の狭い堤防などで取り回しを重視するなら9ft前後という選択肢もありますが、最初の1本としては、あらゆる状況に対応しやすい9.6ftが最適です。
硬さ
ロッドの硬さは、M (ミディアム) もしくは MH (ミディアムヘビー) クラスが基本です。この硬さは、LSJの主力となる20g~60gのメタルジグを最も快適にキャストし、アクションさせるために設計されています。ここで重要なのは、ロッドの硬さは釣りたい魚の大きさではなく、使うルアーの重さに合わせるということです。「大物が掛かるかもしれないから硬い方が安心」と考えがちですが、硬すぎるロッドでは軽いジグの重みを乗せて投げることができず、飛距離が落ち、ルアーのアクションも不自然になってしまいます。
専用ロッド vs シーバスロッド
LSJ専用ロッドは、強い青物の引きに負けないためのパワー(バットパワー)と、脇に挟んでリズミカルにロッドをしゃくる(ジャークする)ための長いグリップが特徴です。一方、シーバスロッドはより軽量で感度が高く、ミノーなどのプラグ類を扱いやすい反面、パワー面では専用ロッドに一歩譲ります。初心者にとっては、汎用性が高く様々な釣りに使えるシーバスロッドから始めるのも非常に賢い選択です。
リール
サイズ (番手)
リールの大きさは、シマノなら4000番、ダイワならLT4000番~LT5000番が標準的なサイズとなります。このクラスは、後述するPEラインを十分に巻ける糸巻き量、青物とのファイトに耐えるドラグ性能、そしてロッドとの重量バランスに優れています。
ギア比
リール選びで特にこだわってほしいのがギア比です。ハンドル1回転でどれだけラインを巻き取れるかを示す数値で、LSJではHG (ハイギア) または XG (エクストラハイギア) と表記されるモデルを強く推奨します。理由は3つあります。第一に、ルアーの回収が速いため、次のキャストまでの時間を短縮でき、手返しが良くなります。第二に、ロッドをしゃくった際に出る糸ふけ(ラインスラック)を素早く巻き取れるため、ルアーの動きを損なわず、アタリも明確に伝わります。第三に、魚がこちらに向かって走ってきた時にもラインのテンションを保ちやすいからです。
ラインシステム
LSJでは、感度と強度に優れた「PEライン」をメインラインとし、その先端に摩擦に強い「リーダー」を結ぶのが基本です。
PEライン
メインラインはPEラインの1.0号~1.2号を選びましょう。PEラインは同じ太さのナイロンラインに比べて数倍の強度を持ち、ほとんど伸びないため遠くのルアーのアクションや小さなアタリも手元に伝えてくれる、LSJに必須のラインです。リールには200m巻いておくと、万が一ラインが切れても釣りを続けられるので安心です。より滑らかで強度が高い8本撚りの製品がおすすめです。
リーダー
PEラインは非常に優れたラインですが、根(海底の岩など)や魚の歯といった摩擦(擦れ)には弱いという弱点があります。それを補うために、PEラインの先にフロロカーボン素材のリーダーを結びます。太さは20lb~25lb (ポンド)、号数で言うと5号~6号が目安です。長さは**約1.5m(両手を広げた長さ、一尋)**が基本です。
ノット (結び方)
PEラインとリーダーを結ぶ作業は、初心者にとって最初の関門かもしれません。「FGノット」が最も強度が高く理想的ですが、習得に時間がかかります。まずは**「トリプルエイトノット」や「10秒ノット」**といった、簡単で確実に結べるノットから覚えましょう。不完全なFGノットよりも、完璧な簡単ノットの方が信頼できます。動画サイトで検索すれば、分かりやすい解説がたくさん見つかります。
ルアー
メタルジグ
LSJの主役です。初心者はまず、最も出番の多い30gと40gの2つの重さを揃えましょう。
- 形状: 最初は、最も汎用性が高いセンターバランス(重心が中央にある)の標準的な形状のものがおすすめです。あらゆるアクションに素直に反応してくれます。飛距離重視の「リアバランス」や、低活性時に有効な「スロー系」は、慣れてきてから試してみましょう。
- カラー: ルアーの色は釣果を左右する重要な要素です。以下の3系統を揃えておけば、ほとんどの状況に対応できます。
- ナチュラル系(ブルピン、シルバー): イワシなどの小魚を模したカラー。どんな状況でもまず最初に投げるべきパイロットカラーです。
- アピール系(ゴールド、ピンク、アカキン): 朝夕のマズメ時や、潮が濁っている時に魚に強くアピールします。
- グロー系(夜光): 夜明け前の暗い時間帯や、タチウオを狙う際には必須のカラーです。
その他のルアー
LSJタックルは、メタルジグ以外にも様々なルアーを扱うことができます。表層で魚が小魚を追い回している時はシンキングミノー、ただ巻きで手軽に探りたい時はブレードジグやスピンテールジグ、ボトム付近をじっくり攻めたい時はメタルバイブレーションなども有効です。これらをタックルボックスに加えておくと、攻め手の幅が大きく広がります。
第4章:ルアーに命を吹き込む!LSJの基本アクションと戦略

最高のタックルを揃えても、ルアーが魚にとって魅力的に見えなければ意味がありません。この章では、単なる金属の塊であるメタルジグに生命を吹き込み、魚の捕食スイッチを入れるための基本的なアクションと戦略を学びます。
基本の攻め方:キャスト→着底→アクション
LSJの釣りは、この3つのステップの繰り返しです。
- キャスト: 周囲の安全を確認し、できるだけ遠くへキャストします。飛距離が出れば出るほど、魚と出会うチャンスは増えます。
- 着底: ルアーが着水したら、リールのベール(ラインを放出するアーム)を返したままにして、ラインをフリーで送り出します。やがてラインの放出がフッと止まる瞬間が、ルアーが海底に着いた「着底」の合図です。この「底を取る」という感覚を覚えることが、上達への第一歩です。
- アクション: 着底後、ベールを戻して糸ふけを取り、ルアーのアクションを開始します。
レンジコントロールの秘訣:「カウントダウン」
魚は常に海底にいるわけではありません。日や時間帯によって、中層や表層を泳いでいることもあります。そこで重要になるのが、狙う水深(レンジ)を把握する「カウントダウン」というテクニックです。やり方は簡単。ルアーが着水した瞬間から、心の中で「1、2、3…」と数を数え始め、着底するまでの秒数を測るのです。例えば20秒で着底するポイントで、10秒沈めたところ(中層)でアタリがあれば、次からは10秒沈めてからアクションを開始することで、効率的に魚のいるレンジを攻めることができます。
マスターすべき3つの必須アクション
LSJのアクションは、実は捕食者である魚に対して「言葉」で語りかけるようなものです。それぞれの動きは、弱った小魚の特定の行動を模倣しており、魚の捕食本能を異なる角度から刺激します。この「言葉」を理解し、使い分けることが釣果への近道です。
1. ただ巻き (Tada-maki – Straight Retrieve)
- アクション: キャストして任意のレンジまで沈めたら、あとは一定の速度でリールを巻くだけ。最もシンプルなアクションです。
- 小魚の言葉: 「逃走」。速いスピードでただ巻きをすると、ルアーは一直線に逃げる小魚を演出します。これを見た青物は、追跡本能を刺激され、思わず口を使ってしまいます。特に魚の活性が高い時や、ブレードジグを使う際に非常に有効です。
- コツ: ただ一定に巻くだけでなく、時々巻くスピードを速めたり、一瞬止めたり(ストップ&ゴー)と、変化を加えることで、見切られにくくなります。
2. ワンピッチジャーク (One-Pitch Jerk)
- アクション: ロッドを1回しゃくり上げる(ジャークする)ごとに、リールのハンドルを1回転させる動作をリズミカルに繰り返します。LSJの最も基本的かつ重要なアクションです。
- 小魚の言葉: 「パニック」。ワンピッチジャークによって、ジグは左右にダートしながらキラキラと光を反射し、不規則に跳ね上がります。これは、捕食者に追われてパニックになり、必死に逃げ惑う小魚の動きそのものです。この動きは、青物の捕食スイッチを最も強力に刺激します。
- コツ: 力任せにしゃくるのではなく、ロッドの反発力を利用して、リラックスした状態で一定のリズムを保つことが重要です。
3. リフト&フォール (Lift & Fall)
- アクション: ロッドをゆっくりと大きく持ち上げてジグを浮上させ(リフト)、その後、ロッドを倒しながら糸ふけを巻き取り、ジグを自然に沈下させます(フォール)。
- 小魚の言葉: 「瀕死」。リフトされたジグがヒラヒラと舞い落ちるフォールの動きは、傷ついて泳ぐ力を失った瀕死の小魚を完璧に演出します。捕食者にとって、これは抵抗できない「絶好の獲物」に見え、リアクションバイトを誘発します。
- コツ: 青物の活性が低い時や、ヒラメなどの底付近にいる魚を狙う際に特に効果的です。アタリはフォール中に集中するため、ラインの動きに常に注意を払いましょう。
これらの3つのアクションを状況に応じて使い分けることで、あなたはルアーを通じて魚と対話し、釣果を劇的に向上させることができるでしょう。
第5章:関東フィールドガイド:初心者におすすめのLSJ釣り場5選

タックルとテクニックを学んだら、いよいよ実践の場へ。ここでは、広大な関東エリアの中から、特に初心者が安全に楽しめ、釣果も期待できる選りすぐりのLSJフィールドを5つ紹介します。
釣り場 | 県 | 主なターゲット | 施設 | ワンポイントアドバイス |
横須賀うみかぜ公園 | 神奈川 | イナダ, サバ, タチウオ | P (有料), T, 自販機 | 潮通し抜群の湾口部。足場も良く安全。根掛かりに注意し、底から少し上を狙おう。 |
国府津海岸 | 神奈川 | ワカシ, イナダ, ソウダガツオ | P (有料), T (近隣) | 西湘サーフの聖地。急深なので遠投不要。朝マズメは非常に混雑するので早めの到着を。 |
鹿島港魚釣園 | 茨城 | イナダ, ショゴ, ヒラメ | P (無料), T, 売店 | 有料施設で安全管理万全。ライフジャケット必須。先端部が青物の一級ポイント。 |
若洲海浜公園 | 東京 | シーバス, タチウオ, イナダ | P (有料), T, 売店 | 都心から最も近い本格ポイント。人工磯は根掛かり多発。中層~表層狙いが基本。 |
館山・勝浦周辺の漁港 | 千葉 | イナダ, ショゴ, カンパチ | P, T (場所による) | 外房は魚影が濃い。潮通しの良い堤防の先端や、ワンドの入り口が狙い目。 |
1. 横須賀うみかぜ公園(神奈川県)
東京湾の入り口に位置し、潮通しが抜群に良いことで知られる超人気スポットです。足場が良く、安全柵も設置されているため、ファミリーや初心者でも安心して釣りを楽しめます。イナダやサバ、タチウオなど回遊魚の実績が非常に高く、いつ訪れても何かが釣れる期待感が持てます。ただし、海底には障害物(根)が点在しているため、メタルジグを着底させすぎると根掛かりしやすいので注意が必要です。
2. 国府津海岸(神奈川県)
「ショアジギングの聖地」とも呼ばれる西湘サーフの代表的なポイントです。最大の特徴は、岸からすぐの場所が急に深くなっている「急深」の地形で、これにより青物が岸のすぐ近くまで回遊してきます。そのため、他のサーフほど長距離の遠投を必要とせず、初心者でも十分にチャンスがあります。ワカシやイナダ、ソウダガツオなどがメインターゲット。シーズン中の朝マズメ(夜明け前後)は、平日でも釣り人がずらりと並ぶほどの人気なので、場所を確保するには早めの到着が必須です。
3. 鹿島港魚釣園(茨城県)
安全性を最優先するなら、この有料の海釣り施設が最適です。入場料はかかりますが、施設は常に整備され、スタッフが常駐しているため安心して釣りに集中できます。ライフジャケットの着用が義務付けられており、レンタルも可能なため、安全意識を高める上でも良い経験になります。沖に突き出た堤防は、潮通しが良く水深もあり、イナダやショゴ(カンパチの若魚)、ヒラメといった人気魚種の実績が高い一級ポイントです。
4. 若洲海浜公園(東京都)
都心からのアクセスが最も良い本格的な釣り場として、多くの都内在住アングラーに愛されています。海釣り施設と隣接する人工磯がメインのポイント。特に人工磯は、コンクリートの堤防とは異なる自然に近い環境で釣りを楽しめますが、足元や水中には岩が多いため、根掛かりが多発します。そのため、ボトム(海底)を攻めるよりも、中層から表層を意識した釣りが基本となります。シーバスやタチウオの実績が高いですが、シーズンにはイナダの回遊も見られます。
5. 千葉サーフ・堤防(千葉県)
魚影の濃さで言えば、千葉県の房総半島や鹿島灘サーフは関東でも随一のポテンシャルを秘めています。特定の港を挙げるよりも、良いポイントを見つけるための「考え方」を身につけることが重要です。青物を狙う上でキーとなるのは、潮通しの良い場所です。具体的には、「堤防の先端」、「岬の先端」、「ワンド(入り江)の入り口」、そして**「河口」**などが挙げられます。これらの地形は潮の流れが変化しやすく、青物のエサとなる小魚(ベイト)が溜まりやすいため、自然と青物も集まってくるのです。釣具店の釣果情報や地図アプリを参考に、これらの特徴を持つ場所を探してみましょう。
第6章:釣果はタイミングが9割!関東LSJシーズンカレンダー
LSJで釣果を上げるためには、「いつ、何を狙うか」というタイミングが非常に重要です。魚たちの行動は、水温とエサとなる小魚(ベイトフィッシュ)の動きに大きく左右されます。この自然のサイクルを理解すれば、あなたの釣行計画はより戦略的になり、釣果も格段にアップするはずです。
このサイクルは非常にシンプルです。春になり水温が上昇し始めると、カタクチイワシなどのベイトフィッシュが産卵や餌を求めて岸に近づいてきます。そして、そのベイトフィッシュを追って、イナダやサゴシといったフィッシュイーターたちも岸へとやってくるのです。特にベイトが豊富で水温も安定する秋は、魚たちの活性が最高潮に達し、「爆釣」や、水面が沸き立つような捕食シーン「ナブラ」が頻発するゴールデンシーズンとなります。
魚種 | 春 (4-6月) | 夏 (7-8月) | 秋 (9-11月) | 冬 (12-1月) |
イナダ/ワラサ | ★★★ | ★★★★★ | ★ | |
ショゴ | ★★★ | ★★★★★ | ||
サバ/ソウダガツオ | ★ | ★★★★★ | ★★★★ | |
サゴシ/サワラ | ★★ | ★★★ | ★★★★ | ★ |
タチウオ | ★ | ★★★★ | ★★★ | |
ヒラメ | ★★★★ | ★★ | ★★★★★ | ★★ |
マゴチ | ★★ | ★★★★★ | ★★★ | ★ |
(評価: ★★★★★ = ハイシーズン, ★ = 可能性は低い)
季節ごとの解説
春 (4月~6月):目覚めの季節
長い冬が終わり、海水温が上昇し始めると、海の中も一気に活気づきます。この時期の主役は、サーフで狙えるヒラメです。産卵を控えて体力をつけるため、積極的にエサを追い求めます。また、サゴシ(サワラの若魚)の回遊もこの頃から始まります。青物の本格シーズンはまだ先ですが、春の訪れを感じながらの釣りは格別です。
夏~秋 (7月~11月):黄金のハイシーズン
LSJが最も盛り上がる季節です。水温が高く安定し、ベイトフィッシュの量も最大になるこの時期は、ワカシ→イナダ(ブリの若魚)やショゴ(カンパチの若魚)といった青物が大挙して岸に押し寄せ、非常に高い活性でルアーを追いかけます。初心者の方がLSJを始めるには、まさに最高のタイミングと言えるでしょう。
晩秋~冬 (11月~1月):銀龍の季節
水温が低下し始め、青物の活性が落ち着いてくると、次なる主役が登場します。それが、夜の堤防のターゲットとして絶大な人気を誇るタチウオです。夕マズメから夜にかけてが狙い目となります。また、水温が下がりきる前の晩秋には、脂が乗った「寒ブリ」の回遊や、「寒ビラメ」と呼ばれる肉厚なヒラメが釣れることもあり、一発大物の夢が膨らむ季節です。
マズメ時と潮の動き
どの季節においても、魚が最も釣れやすい時間帯、それが**「マズメ」です。具体的には、日の出前後の「朝マズメ」と、日没前後の「夕マズメ」**を指します。この薄暗い時間帯は、プランクトンの活動が活発になり、それを食べる小魚、さらにその小魚を食べるフィッシュイーターたちの活性が連鎖的に高まる、一日で最も貴重なチャンスタイムです。また、潮が動いている時間帯も重要です。潮の流れはベイトを運び、魚の捕食スイッチを入れるきっかけとなります。釣行前には、必ずマズメの時間と潮の動き(潮汐表)を確認する習慣をつけましょう。
第7章:安全第一、マナーは一流。賢いアングラーになるために

LSJは非常に楽しい釣りですが、自然を相手にする以上、安全への配慮と、他の人や環境を思いやるマナーが不可欠です。素晴らしい一日を締めくくるためにも、以下の点を必ず心に留めておきましょう。
安全は最優先事項
ライフジャケット
これは絶対に着用してください。万が一の落水時、あなたの命を守る最後の砦です。堤防など動きやすさを重視するなら自動膨張式、磯場などでは浮力体が入った固形式がおすすめです。
足元
濡れた堤防やテトラポッドは非常に滑りやすいです。スパイクシューズや滑りにくいソールのフィッシングシューズを履き、転倒を防ぎましょう。
天候確認
釣行前には必ず天気予報と波の高さを確認する癖をつけましょう。少しでも危険を感じたら、釣りを中止する勇気が大切です。特に、雷や高波の予報が出ている場合は絶対に行ってはいけません。
あると便利な装備
タモ網(ランディングネット)
足場の高い堤防で良型の魚が掛かった場合、抜き上げるのは非常に困難です。無理に引き上げようとすると、ロッドが折れたりラインが切れたりする原因になります。5m以上の長さがあるタモ網を用意しておけば、安全かつ確実に取り込むことができます。
プライヤー
魚の口に掛かったフックを安全に外すための必須アイテムです。素手で外そうとすると、フックが指に刺さったり、魚の歯で怪我をしたりする危険があります。
フィッシュグリップ
タチウオのような鋭い歯を持つ魚や、毒のあるヒレを持つ魚を安全に掴むための道具です。魚に直接触れずに済むため、手の汚れや匂いを防ぐ効果もあります。
その他
日差しから肌や目を守るための帽子や偏光サングラス、キャストやファイトで手を保護するグローブなども、快適に釣りをする上で非常に役立ちます。
釣り人の心得
ゴミは持ち帰る
「釣り場に来た時よりも美しく」が基本です。自分が出したゴミはもちろん、落ちているゴミも拾うくらいの気持ちで、美しい釣り場を未来に残しましょう。
先行者への配慮
先に釣りをしている人がいたら、挨拶をしてから十分に距離をとって釣りを始めましょう。人の目の前をルアーが通過するようなキャスト(クロスキャスト)は、トラブルの原因となるので絶対にやめましょう。
資源保護
食べる分だけ持ち帰り、小さな魚や釣る予定のなかった魚は、優しくリリースしましょう。未来もずっと釣りを楽しむために、海の資源を大切にする意識が重要です。
結論:さあ、冒険を始めよう
ここまで、ライトショアジギングの魅力から、タックル、テクニック、関東のフィールド、そして安全とマナーに至るまで、あなたが最初の一歩を踏み出すために必要な全ての情報をお伝えしてきました。
LSJは、関東の身近な海で、誰もが気軽に本格的な大物とのファイトを体験できる、最高のルアーフィッシング入門です。この記事を羅針盤として、タックルを揃え、季節を読み、フィールドへ足を運んでみてください。
朝マズメの澄んだ空気の中、力強くロッドを振り抜く。その一投が、きっとあなたの日常を忘れさせる、忘れられない興奮と感動の始まりになるはずです。さあ、冒険を始めましょう!
よくある質問 (FAQ)
Q1: シーバスロッドでも本当に大丈夫?
A: はい、全く問題ありません!特に40gまでのメタルジグをメインに使うのであれば、M(ミディアム)やMH(ミディアムヘビー)クラスのシーバスロッドはLSJの入門に最適です。まずは手持ちのタックルで気軽に始めてみましょう。
Q2: 一日で一番釣れる時間帯は?
A: 間違いなく「朝マズメ」です。夜が明け始める時間から、日が昇りきるまでの約2時間がゴールデンタイム。次にチャンスが大きいのが日没前後の「夕マズメ」です。この時間帯に魚の捕食活動が最も活発になります。
Q3: リーダーの結び方が難しくてできません…
A: ご安心ください。理想は「FGノット」ですが、不完全に結ぶくらいなら、もっと簡単で確実に結べるノットの方が信頼できます。YouTubeなどで「トリプルエイトノット」や「10秒ノット」と検索してみてください。初心者でも覚えやすく、LSJで使うには十分な強度があります。