美しいパーマーク(小判型の斑点)を持ち、「渓流の女王」とも称されるヤマメ。その優美な姿と力強い引きは、多くのアングラーを魅了し続けています。しかし、ヤマメ釣りは奥が深く、初心者にとっては少し敷居が高いと感じられるかもしれません。
この記事では、そんなヤマメ釣りの世界へ足を踏み入れたい初心者の方に向けて、ヤマメの生態から必要な装備、代表的な4つの釣り方(餌釣り、ルアーフィッシング、テンカラ釣り、フライフィッシング)、そして釣果を伸ばすための秘訣まで、網羅的に解説します。一般的なヤマメ釣りの知識を深め、安全に楽しく、そして一匹でも多くのヤマメとの出会いを実現するためのお手伝いができれば幸いです。
ヤマメってどんな魚?

まずはじめに、ターゲットであるヤマメについて理解を深めましょう。魚の習性を知ることは、釣果への近道です。
ヤマメの生態と習性
ヤマメはサケ科の魚で、主に河川の上流域から中流域にかけての冷たく清澄な水域に生息しています 。適水温は8℃~18℃とされ、高水温は苦手です。そのため、夏場は水温の低い上流域や日陰、湧水のある場所などを好みます 。
食性は雑食で、水生昆虫(川虫)やその幼虫、水面に落下した陸生昆虫、時には小魚まで捕食します 。警戒心が非常に強く、人の気配や物音に敏感に反応するため、釣りにおいては静かなアプローチが求められます 。
ヤマメには、一生を川で過ごす河川残留型(陸封型)と、海に下って成長し産卵のために川に戻ってくる降海型がいます。降海型のヤマメは「サクラマス」と呼ばれ、体が銀色になり大型化するのが特徴です 。
ヤマメ釣りのベストシーズンと時間帯
ヤマメ釣りのシーズンは、一般的に禁漁期間が明ける3月頃から9月末までです 。
- 春(3月~5月): 解禁当初はまだ水温が低く、ヤマメの活性も低いことが多いです。しかし、水温が上昇し始める4月下旬頃からは活発に餌を追い始め、特に里川などでは比較的釣りやすくなります 1。
- 初夏(6月~7月上旬): 梅雨時期にあたり、適度な増水と濁りはヤマメの警戒心を和らげ、活性を高めることがあります。水量が多いときは無理せず、平水時から20~30cm程度の増水で、「笹濁り」と呼ばれる薄い濁りの状態が狙い目とされています 。この時期はヤマメの活性が最も高くなり、数釣りが期待できるベストシーズンの一つです 。
- 夏(7月下旬~8月): 梅雨が明けると一時的に釣果が上向きますが、真夏の日中は水温が上昇しすぎてヤマメの活性が著しく低下します 。この時期は、水温が比較的低い早朝や夕まずめ、または標高の高い源流域が主なポイントとなります 。
- 秋(9月): 産卵を意識し始める時期で、ヤマメは体力をつけるために積極的に餌を捕食します。特に大型のヤマメが釣れるチャンスもありますが、禁漁間近となるため、ルールを守って楽しみましょう。
時間帯については、一般的に朝夕のまずめ時が有利とされています。特に夏場は日中の高水温を避けるため、早朝や日没前後がゴールデンタイムとなります 。
ヤマメ釣りに適した天候
ヤマメ釣りに最適な天候は、季節によっても異なります。
- 春先: 水温が低い時期は、晴れて水温が上がりやすい日が釣果に繋がりやすいです 。
- 夏: 晴天が続くと水温が上がりすぎてしまい、ヤマメの活性は低下します。そのため、曇りの日や雨の日の方が、水温上昇が抑えられ、ヤマメにとっては快適な水温が保たれやすいため、釣果が期待できます 。
- 雨の影響: 小雨程度であれば、水中のプランクトンや陸生昆虫が流され、ヤマメの捕食スイッチが入ることがあります。また、雨音や濁りによって人の気配が消されやすくなるというメリットもあります。しかし、大雨による急な増水や強い濁りは危険であり、釣りが困難になるだけでなく、魚の活性も下げてしまう可能性があります 。雨の日は、本流よりも増水や濁りの影響が少ない支流を選ぶのが賢明です 。
釣行前には必ず天気予報を確認し、特に雨予報の場合は河川の増水に十分注意しましょう 。
ヤマメ釣りの準備:服装と基本装備

安全で快適なヤマメ釣りを楽しむためには、適切な服装と装備が不可欠です。特に渓流は自然環境が厳しく、天候も変わりやすいため、しっかりとした準備を心がけましょう。
安全第一!必須の服装と装備
- ウェーダー: 川の中を歩くための防水ズボンです。胸まで覆う「チェストハイウェーダー」が、様々な水深に対応できるためおすすめです 。素材には、透湿防水素材のものと、ネオプレンなどの保温性が高いものがあります。季節や水温に合わせて選びましょう。
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楽天で購入- 偏光グラス(サングラス): 水面のギラつきを抑え、水中の様子やラインの動きを見やすくするだけでなく、紫外線や飛んでくる可能性のある釣り針から目を保護するためにも重要です 。
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楽天で購入- ランディングネット: 釣った魚をすくうための網です。ヤマメは非常にデリケートな魚で、人の体温でも火傷してしまうことがあります。魚へのダメージを最小限に抑えるためにも、特にリリースを考えている場合は必ず用意しましょう 。
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楽天で購入- 救急セット: 絆創膏、消毒液、痛み止めなど、万が一の怪我に備えて携帯しましょう 。
あると便利な道具
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楽天で購入- 虫除けスプレー・ハチ・アブ用殺虫スプレー: 渓流にはブヨやアブ、ハチなどの虫が多いため、対策は必須です 。
- 熊鈴・熊除けスプレー: 熊の生息地域に入る場合は、遭遇を避けるために必ず携帯しましょう 。
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楽天で購入- 飲み物・食料: 釣りに夢中になると忘れがちですが、水分補給やエネルギー補給は重要です。
- ヘッドライト: 朝まずめや夕まずめ、林道や暗い場所を歩く際に役立ちます。
- タオル: 手を拭いたり、汗を拭いたりするのに便利です。
- ゴミ袋: 釣りで出たゴミは必ず持ち帰りましょう 。
ヤマメ釣りの基本ルールとマナー

ヤマメ釣りは、自然の中で楽しむレジャーです。美しい自然環境と貴重な魚資源を守り、他の釣り人と気持ちよく釣りをするために、ルールとマナーを必ず守りましょう。
遊漁券は必ず購入
日本の多くの河川では、ヤマメなどの渓流魚を釣るためには「遊漁券(入漁券)」の購入が必要です 。これは、漁業協同組合が河川の環境整備や魚の放流など、資源保護のために行っている活動資金となります。遊漁券は、釣具店、コンビニエンスストア、漁協の事務所などで購入できます。無許可での釣りは密漁とみなされる場合があるので、必ず釣行前に購入しましょう 6。
禁漁期間を守ろう
ヤマメなどの渓流魚には、産卵期を中心に「禁漁期間」が設けられています 。これは魚資源を保護するための大切なルールです。地域や河川によって期間は異なりますが、一般的には10月1日から翌年の2月末または3月頃までが禁漁期間となります。釣行前には必ず確認し、禁漁期間中の釣りは絶対にやめましょう。
釣り場をきれいに
美しい渓流を未来に残すためにも、ゴミは絶対に捨てず、必ず持ち帰りましょう 。釣り糸の切れ端や空き缶、弁当の容器などが放置されていると、景観を損なうだけでなく、野生動物に悪影響を与えることもあります。
先行者がいたら挨拶を
人気の釣り場では、他の釣り人と出会うこともあります。もし先行者がいたら、気持ちよく挨拶をし、釣りをしている場所の邪魔にならないように十分な距離をとってから釣りを始めましょう。渓流釣りでは、下流から上流へ釣り上がるのが基本マナーとされています 。
キャッチ&リリースも考えよう
釣ったヤマメを食べるのも楽しみの一つですが、資源保護の観点から、必要以上に持ち帰らず、小型の魚や抱卵している可能性のある魚は優しくリリースすることも大切です 。リリースする際は、魚へのダメージを最小限にするため、濡らした手で素早く、水中で針を外すように心がけましょう 。ランディングネットを使用すると、魚に触れる時間を短縮できます。
ヤマメ釣りの種類と釣り方徹底解説

ヤマメを釣る方法は一つではありません。ここでは代表的な4つの釣り方、「餌釣り」「ルアーフィッシング」「テンカラ釣り」「フライフィッシング」について、それぞれの特徴、必要な道具、基本的な釣り方を初心者にも分かりやすく解説します。
餌釣り:渓流釣りの王道
餌釣りは、ヤマメ釣りの最も基本的なスタイルの一つで、自然の餌(川虫やミミズなど)を使ってヤマメを誘います。
餌釣りの特徴
自然の餌を使うため、ヤマメにとって警戒心が薄れやすく、比較的簡単にアタリ(魚が食いついた感触)を得やすいのが特徴です 。繊細なアタリを竿先や目印で感じ取り、魚との駆け引きを楽しむことができます。初心者でも比較的釣果を上げやすく、ヤマメ釣りの入門として最適です。
餌釣りに必要な道具
- 竿(のべ竿): リールを使わない、シンプルな延べ竿を使用します。渓流用としては、長さ5.3m~7.1m程度のものが一般的です。初心者には、扱いやすい6m前後の「小継ぎ竿」(仕舞寸法が短いもの)がおすすめです 。竿の硬さは、適合するハリス(糸の太さ)の表示を参考に選びましょう。
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- 道糸(水中糸): 竿の穂先からハリまで通しで使うか、天井糸と水中糸に分けます。ナイロンラインやフロロカーボンラインの0.15号~0.3号程度が標準です 。
- 天井糸: 竿の穂先側に付ける糸で、水中糸よりやや太めのものを使います。視認性の良い色のものがおすすめです 。
- 目印: 道糸に取り付け、アタリを見やすくするためのものです。蛍光色の小さなものが使われます 。
- オモリ(ガン玉): 餌を自然に沈め、流れに乗せるために使います。流れの速さや水深によって、G4~2Bといった様々なサイズを使い分けます 。オモリの選択は釣果を左右する重要な要素です。仕掛けが流れの底層を、水面の流れよりやや遅く、かつ根掛かりしない程度に流れるのが理想です 。
- ハリス: オモリとハリを結ぶ糸です。道糸より細いものを使うことで、根掛かりした際にハリスだけが切れるようにし、仕掛け全体の損失を防ぎます。
- ハリ: ヤマメ専用のものが多数市販されています。餌のサイズに合わせて、1号~7号程度のものを選びます 。
- 餌箱: 採取した川虫や購入した餌を入れておく容器です。
- ビク・クーラーボックス: 釣った魚を持ち帰る場合に鮮度を保つために使用します 。
代表的な餌の種類と選び方
ヤマメの餌は、その時期や川の状況によって効果的なものが異なります。
- 川虫: ヤマメが普段食べている水生昆虫の幼虫で、最も効果的な餌の一つです 。キンパク(カワゲラの幼虫)、ヒラタ(ヒラタカゲロウの幼虫)、クロカワムシ(トビケラの幼虫)などが代表的です 。現地で採取することも可能ですが、慣れが必要です。
- 採取方法: 川の浅瀬で石をひっくり返したり、下流に網を構えて足で川底をかき回したりして採取します 。採取した川虫は、湿らせた水苔などと一緒に入れておくと長持ちします 。
- イクラ: 解禁初期や水温が低い時期に特に有効な餌です 。釣具店で販売されているもののほか、食用の生イクラも使われます。
- ミミズ(ドバミミズ、キジ): 雨後で川が濁っている時などに効果を発揮します 。
- ブドウムシ: 蛾の幼虫で、釣具店で購入できます。夏場など川虫が少ない時期の代替餌として有効です 。
- 陸生昆虫: 夏場には、バッタやチョウなども良い餌になります 。
初心者の方は、まずは釣具店で購入できるイクラやブドウムシから始めてみるのが良いでしょう。慣れてきたら川虫の採取にも挑戦してみてください。複数の種類の餌を用意しておくと、状況に合わせて対応できます 。
基本的な釣り方
- ポイント選び: ヤマメは流れの変化がある場所や、身を隠せる障害物の周りに潜んでいます。具体的には、岩の陰、流れ込み、淵、瀬の中の少し深くなった場所、反転流(流れが渦巻いている場所)などが狙い目です 。
- 仕掛けの投入: 釣り上がる(下流から上流へ向かって釣る)のが基本です 。ポイントの少し上流に仕掛けを振り込み、餌が自然にポイントへ流れていくようにします。
- アタリの取り方: 目印の動きに集中します。目印が止まったり、沈んだり、横に不自然に動いたりしたら、それがアタリです 。
- アワセ: アタリがあったら、竿先をスッと立ててハリを魚の口に掛けます(アワセ) 。アワセが強すぎると糸が切れたり、魚の口が切れたりするので注意が必要です。
- 取り込み: 魚が掛かったら、竿の弾力を活かして慎重に寄せ、ランディングネットで取り込みます。
餌釣りでは、オモリの重さやハリスの長さをこまめに調整し、餌が自然に流れるようにすることが釣果を伸ばすコツです 。
ルアーフィッシング:ゲーム性の高い攻めの釣り
ルアーフィッシングは、小魚や昆虫を模した疑似餌(ルアー)を使ってヤマメを狙う、アクティブでゲーム性の高い釣り方です。
ルアーフィッシングの特徴
様々な種類のルアーを使い分け、キャスト(投げること)とリトリーブ(巻き取ること)を繰り返してヤマメを誘います。ルアーのアクションやカラー、通すコースなどを工夫し、ヤマメの捕食本能を刺激する戦略的な面白さがあります。広範囲を探ることができ、手返しが良いのも特徴です。
ルアーフィッシングに必要な道具
- 竿(ルアーロッド): 渓流用のスピニングロッドで、長さは5フィート(約1.5m)~6フィート(約1.8m)程度が一般的です 。硬さはUL(ウルトラライト)~L(ライト)クラスが扱いやすいでしょう。私は一般的な7ft前後のシーバス用に近いロッドを使用したりもしますが、持ち運びやすさを考えると、数本に分割できるパックロッドも便利です 。
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楽天で購入- ライン(釣り糸): ナイロンラインの3ポンド~5ポンド、またはPEラインの0.3号~0.6号に、ショックリーダーとしてフロロカーボンラインの3ポンド~5ポンドを結束して使用します 。
- ルアー: ミノー、スプーン、スピナーなどが主に使われます。
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楽天で購入- スナップ: ルアー交換を容易にするために、ラインの先端に取り付けます。
- ルアーケース: ルアーを整理して収納します。
代表的なルアーの種類と選び方
- ミノー: 小魚を模したルアーで、渓流ルアーフィッシングの主力です 。
- シンキングミノー: 沈むタイプ。特に「ヘビーシンキングミノー」は自重があるため遠投しやすく、速い流れの中でも安定して泳ぎ、深場も攻略できます。渓流では主流となっています 。
- フローティングミノー: 浮くタイプ。水深の浅い場所や、ゆっくりと誘いたい場合に有効です。着水音が静かで、警戒心の高いヤマメにプレッシャーを与えにくいという利点があります 。
- サスペンドミノー: 水中で漂うタイプ。特定の水深でルアーを止め、食わせの間を作りたい場合に有効です 。 初心者の方は、まず5cm前後、重さ4g~5g程度のシンキングミノーから揃えると良いでしょう 。カラーは、シルバー系やゴールド系のナチュラルカラー、アユカラー、そして視認性の高いチャート系やピンク系などを状況に合わせて使い分けます 24。
- スプーン: 金属製の湾曲した板状のルアー。投げて巻くだけでヒラヒラと泳ぎ、アピールします。ミノーに反応しない魚や、より深いレンジを探りたい場合に有効です 。
- スピナー: 本体に付いたブレード(金属板)が回転することで波動と光を発生させ、魚を誘います。投げて巻くだけで簡単に扱えるため、初心者にもおすすめです 。
基本的な釣り方
- キャスト: ポイントのやや上流、または対岸に向けてキャストします。基本はアップストリーム(上流に向かって投げる)またはアップクロス(斜め上流に投げる)です 。これにより、ルアーが自然に下流へ流れながらヤマメの目の前を通過するように演出できます。
- ルアーアクション:
- ミノー: ただ巻き(一定速度で巻く)でも釣れますが、「トゥイッチング」(竿先をチョンチョンと小さく動かしながら巻く)で不規則な動きを与え、ヒラを打たせてアピールするのが効果的です 。ヤマメは細かいピッチでスピード感のある動きを好む傾向があります 。
- スプーン: ただ巻きが基本ですが、時折トゥイッチを入れたり、フォール(沈下)させたりするのも有効です 。
- スピナー: ブレードが回転するギリギリの遅い速度で巻くのが基本です 。
- アタリとアワセ: 「コンッ」という明確なアタリや、ラインが急に張る、ルアーの動きが止まるなどの変化があったら、素早く竿を立ててアワセを入れます 。
- ファイト: ヤマメは掛かるとローリング(回転)して抵抗することが多く、バレやすい魚です。竿の弾力を活かし、強引すぎないやり取りを心がけましょう 。
ルアーフィッシングでは、流れの速さや水深、ヤマメの活性に合わせてルアーの種類やカラー、アクションを細かく変えていくことが釣果に繋がります。
テンカラ釣り:シンプルな日本の伝統釣法
テンカラ釣りは、竿、ライン、毛バリ(けばり)という非常にシンプルな道具立てで楽しむ、日本古来の伝統的な渓流釣りです。
テンカラ釣りの特徴
リールを使わず、竿のしなりとラインの重みを利用して毛バリをポイントへ振り込みます 。道具がシンプルなため手軽に始められ、持ち運びも容易です。魚のアタリがダイレクトに手元に伝わるため、ヤマメとの駆け引きを存分に楽しめます。近年では海外でもその魅力が注目されています 。
テンカラ釣りに必要な道具
- 竿(テンカラ竿): 専用のテンカラ竿を使用します。長さは3.3m~3.9m程度が一般的で、初心者には扱いやすい3.6m前後のものがおすすめです 。
- ライン(テンカラライン): 竿先に直接結びつける専用のラインです。レベルライン(均一な太さのフロロカーボンライン)やテーパーライン(先端に向かって細くなる撚り糸)などがあります。長さは竿と同じか、少し短め(竿の長さマイナス0.5m~1m程度)が扱いやすいでしょう。
- ハリス: テンカララインの先に結ぶ細い糸で、フロロカーボンラインの0.8号~1号程度を50cm~1mほど接続します 。
- 毛バリ: 水生昆虫や陸生昆虫を模した、羽毛などで作られた疑似餌です。様々な種類がありますが、最初は数種類の基本的なパターンがあれば十分です 。
- その他: ランディングネット、ハサミ、毛バリケースなど。
シマノの「テンカラBBキット」のような、必要なものがセットになった製品も初心者には便利です 。
代表的な毛バリの種類と選び方
テンカラで使われる毛バリは、大きく分けて水面に浮く「ドライフライタイプ」と、水中に沈む「ウェットフライタイプ(沈み毛バリ)」があります。
- 伝統的なテンカラ毛バリ: 特定の虫に似せるというよりは、魚にアピールするような形状や色合いのものが多いです。逆さ毛バリ(ハックルがフックのアイ側に向かって巻かれているもの)などが代表的です。
- フライフィッシング用のフライ: エルクヘアカディスやパラシュートアダムスといった、フライフィッシングで実績の高いドライフライもテンカラで有効です。
初心者の方は、まずは数種類のオーソドックスなパターンの毛バリを揃え、実際に使ってみて反応の良いものを見つけていくと良いでしょう。自分で毛バリを巻く(タイイングする)のもテンカラの楽しみの一つです 。
基本的な釣り方
- キャスト(振り込み): 竿のしなりを利用して、ラインと毛バリをポイントへ運びます。
- グリップ: 人差し指をグリップの上に添え、残りの指で軽く握ります 。
- スタンス: 足を肩幅程度に開き、片足を少し前に出すと安定します 。
- 動作: 竿を後方に振り上げ(時計の12時の位置まで)、ラインが後ろに伸びきるのを感じたら、一瞬止め(ポーズ)、そのまま前方に振り下ろして(時計の2時の位置まで)毛バリを狙った場所に着水させます 。力まず、リズミカルに行うのがコツです。「イーッチ(後ろ)、ニ(前)」という変則的な2拍子のイメージです 。 最初は広い場所でキャスティングの練習をすると良いでしょう 。
- 毛バリの流し方: キャスト後、毛バリを自然に流れに乗せて誘います。ラインが毛バリより先に流れて不自然な動きにならないように、竿先でラインを操作(メンディング)することもあります。数秒流したら、一度ピックアップして再度キャストします 。あまり長く流しすぎると不自然な動きになりやすいです 。
- アタリの取り方: 水面に浮かせた毛バリの場合は、ヤマメが毛バリに飛びつくのが見えたり、毛バリが水中に引き込まれたりします。沈める毛バリの場合は、ラインの先端の動き(止まったり、不自然に動いたりする)や、手元に伝わる微かな感触でアタリを取ります 。
- アワセ: アタリを感じたら、手首を返すように小さく素早く竿を立ててアワセを入れます 。大振りなアワセは禁物です。
- 取り込み: 魚が掛かったら、竿を立てて魚の引きをいなしながら寄せ、ランディングネットで取り込みます。
テンカラ釣りは「テンポが大切」と言われます 。一つのポイントで粘りすぎず、反応がなければ積極的に移動して新しいポイントを探るのが釣果を伸ばすコツです。
フライフィッシング:奥深き戦略的な釣り
フライフィッシングは、鳥の羽や獣毛などで作られた「フライ」と呼ばれる疑似餌を、専用の竿と重りのついたライン(フライライン)を使ってキャストし、魚を釣る方法です。
フライフィッシングの特徴
極めて軽いフライを遠くまで飛ばすための独特なキャスティング技術や、水生昆虫や陸生昆虫の生態に関する知識(マッチ・ザ・ハッチ:その時に魚が捕食している虫にフライを合わせること)など、奥深い要素が多く、戦略性の高い釣りです 。自然との一体感を感じながら、知的なゲームを楽しめるのが魅力です。
フライフィッシングに必要な道具
- 竿(フライロッド): 専用のフライロッドを使用します。ヤマメなどの渓流魚には、長さ7フィート(約2.1m)~8フィート(約2.4m)、ライン番手#3~#4程度のものが一般的です 。初心者には、扱いやすい#4番、7フィート6インチ(約2.3m)程度のものがおすすめです 。
- リール(フライリール): フライラインを収納し、大型魚とのやり取りでドラグ(ブレーキ)機能も果たすリールです。渓流のヤマメ釣りでは、シンプルなクリックドラグタイプのもので十分です 。
- ライン:
- フライライン: フライをキャストするための重りとなるラインです。渓流では、水面に浮くWF(ウェイトフォワード)タイプのフローティングライン(例:WF4F)が多用されます 。
- バッキングライン: フライラインの下巻きとしてリールに巻いておく細い糸です。大物が掛かってフライラインが全て引き出された場合の備えとなります 26。
- リーダー: フライラインの先端に結ぶ、徐々に細くなるテーパー状の透明なナイロンまたはフロロカーボンラインです。長さは7.5フィート~9フィート(約2.3m~2.7m)程度で、先端の太さは5X~6Xなどが使われます 。
- ティペット: リーダーの先端に結ぶ、さらに細い透明なラインです。これにフライを結びます。長さは50cm~1m程度で、リーダーの先端と同じか、より細いもの(例:6X)を使用します 。
- フライ: 様々な種類のフライがあります。
- フライボックス: フライを種類別などに整理して収納します。
- フロータント: ドライフライ(水面に浮くフライ)に塗布し、浮力を保つためのものです。
- ストライクインジケーター: ニンフフィッシング(水中にフライを沈める釣り)の際に、アタリを分かりやすくするためにリーダーに取り付ける小さな浮きのようなものです。
代表的なフライの種類と選び方
フライは大きく分けて、水面に浮く「ドライフライ」、水面直下を漂う「ウェットフライ」、水生昆虫の幼虫を模して水中に沈める「ニンフ」、小魚などを模した「ストリーマー」などがあります。
- ドライフライ: ヤマメが水面で虫を捕食している時に有効です。魚がフライに飛びつく瞬間が見えるため、エキサイティングな釣りが楽しめます 。
- 代表的なパターン:
- エルクヘアカディス: トビケラを模したフライで、浮力が高く視認性も良いため、初心者にも扱いやすく非常によく釣れるフライの代表格です 。
- パラシュートアダムス: カゲロウなどを模した万能フライで、様々な状況で使えます。
- その他、CDCカディス、ソラックスダンなど。 サイズは#12~#16程度を基本に、数種類揃えておくと良いでしょう。
- 代表的なパターン:
- ウェットフライ/ソフトハックル: 水面直下や水中を流下する昆虫を模したフライです。羽化途中の虫や、力尽きて流される虫を演出します 。
- ニンフ: 水生昆虫の幼虫や蛹を模したフライで、魚が水面を意識していない時や、水深のあるポイントで有効です 。フェザントテールニンフ、ヘアズイヤーニンフなどが代表的です。
初心者の方は、まずエルクヘアカディスやパラシュートアダムスといった定番のドライフライ数種類と、汎用性の高いニンフをいくつか用意することから始めると良いでしょう 。
基本的な釣り方
- キャスティング: フライフィッシングの最も特徴的で、習得に練習を要する技術です 。竿のしなりとフライラインの重さを利用して、ループを作りながらフライをポイントまで運びます。最初は広い場所で練習したり、経験者に教えてもらったりするのが上達への近道です 。
- プレゼンテーション(フライの流し方):
- ドライフライ: ポイントのやや上流にフライを静かに着水させ、ラインがフライを不自然に引っ張らないように(ドラッグフリードリフト)、自然に流します 。ラインメンディング(竿先でラインを操作して流れの抵抗を調整する技術)が重要です 。
- ウェットフライ/ニンフ: キャスト後、フライを沈ませて自然に流したり、スイングさせたりして誘います。
- アタリの取り方:
- ドライフライ: ヤマメが水面に出てフライを捕食するのを目で確認します 。
- ウェットフライ/ニンフ: ラインの先端やリーダーの動き、ストライクインジケーターの動き、または手元に伝わる感触でアタリを取ります。
- アワセ: アタリがあったら、竿先をスッと持ち上げるようにしてアワセを入れます 。
- ファイトと取り込み: 竿の弾力を活かして魚を寄せ、ランディングネットで取り込みます。
フライフィッシングは、その場にいる虫を観察し、それに合ったフライを選ぶ「マッチ・ザ・ハッチ」の考え方が重要になることがあります 。これにより、より深く自然と関わりながら釣りを楽しむことができます。
釣果アップの秘訣:ヤマメの探し方とアプローチ

ヤマメは警戒心が強く、巧妙に身を隠しています。釣果を上げるためには、ヤマメがどこに潜んでいるかを見極め、そして気づかれずに近づく技術が重要になります。
ヤマメが潜むポイントの見極め方
ヤマメは、餌が豊富で、かつ外敵から身を守りやすく、流れの抵抗を受けにくい場所に定位する傾向があります。
- 岩や石の周り: 大きな岩や沈み石の直後や脇は、流れが緩やかになり、ヤマメが身を隠しやすく、流れてくる餌を待ち伏せするのに絶好のポイントです 。
- 淵(ふち): 川が深くなっている場所で、流れが比較的緩やかなため、ヤマメが休息したり、餌を待ったりする場所です。水面が黒っぽく見えることが多いです 。
- 瀬(せ): 浅くて流れが速い場所ですが、水中に酸素が豊富で、餌となる水生昆虫も多く流れてきます。瀬の中にも石周りなど流れが少し緩やかになっている場所があり、そういった場所にヤマメが付いています 。
- 落ち込み: 段差があって水が流れ落ちている場所の直下は、水が掘れて深くなっていたり、白泡が立っていたりします。このような場所もヤマメが好むポイントです。特に、流れが落ち込んでできる反転流や、その脇の緩やかな流れに潜んでいることがあります 。
- ヨレ・反転流: 流れが障害物に当たって複雑に変化したり、渦を巻いたりしている場所です。このような場所には餌が溜まりやすく、ヤマメも定位しやすいです 。「モミアワセ」と呼ばれる、複数の流れが合流して揉み合っているような場所も有望です 。
- 岸際の植物の下(オーバーハング): 岸から張り出した木や草の下は日陰になり、ヤマメにとって格好の隠れ家です。また、陸生昆虫が落下してくる場所でもあるため、餌場としても期待できます 。
初心者のうちは、まず「周囲よりも少し深くなっている場所」や「目に見える大きな岩のそば」などを意識して探してみましょう 。水深が膝くらいまであれば、十分に魚がいる可能性があります 。ヤマメの付き場は季節や水温によっても変化します。例えば、春先は日当たりの良い流れの緩い場所、夏場は水温の低い瀬や日陰などを好みます 。
これらのポイントを見極める「川を読む力」は、経験と共に養われていきます。最初は分からなくても、意識して観察し続けることが大切です。
魚に警戒されにくいアプローチ方法
ヤマメは非常に警戒心が強いため、ポイントを見つけても、不用意に近づくと逃げられてしまいます。
- 下流から上流へ釣り上がる(釣り上がり): ヤマメは基本的に上流に頭を向けて定位しているため、下流側(背後)から近づくことで、気づかれにくくなります 。また、自分が立てた波や音、濁りが下流の魚に影響を与えるのを防ぐ意味もあります。
- 静かに、ゆっくりと: 足音や物音を極力立てないように、静かにゆっくりとポイントに近づきましょう 。特に水際を歩く際は、バシャバシャと音を立てないように注意が必要です 。
- 姿勢を低く: 立ったまま近づくと、魚から見つかりやすくなります。できるだけ姿勢を低くし、物陰に隠れながら近づくのが理想的です 。
- 自分の影に注意: 自分の影が水面に落ちると、ヤマメを驚かせてしまうことがあります。太陽の位置を確認し、影がポイントに入らないように注意しましょう。
- 服装の色: 派手な色の服装は魚に警戒されやすいと言われています。自然に溶け込むような、アースカラーの服装がおすすめです。
- ポイントとの距離: できるだけポイントから離れた位置からキャストするように心がけましょう。ただし、正確にキャストできる範囲内であることも重要です。
- 一つのポイントに固執しすぎない: ヤマメは、気づかれていなければ最初の数投で反応することが多いです。何度か流してもアタリがなければ、そのポイントは見切り、次のポイントへ移動する方が効率的です 。
ヤマメ釣りでは、魚に気づかれる前にこちらが魚を見つけることが重要です。偏光グラスを着用し、水中の様子をよく観察しながら、慎重にアプローチすることを常に心がけましょう。
まとめ:安全に楽しくヤマメ釣りを満喫しよう

「渓流の女王」ヤマメ釣りは、美しい自然の中で、知恵と技術を駆使して一匹の魚と出会う、奥深く魅力的な釣りです。初心者の方にとっては、覚えることも多く、最初は難しく感じるかもしれません。しかし、基本的な知識と技術を身につけ、安全管理を徹底すれば、誰でもヤマメ釣りの素晴らしい世界を体験することができます。
この記事で紹介したヤマメの生態、必要な装備、様々な釣り方、そして釣果を上げるためのヒントが、皆様のヤマメ釣り入門の一助となれば幸いです。大切なのは、焦らず、一つ一つのステップを楽しみながら経験を積んでいくことです。
そして何よりも、釣り場のルールとマナーを守り、美しい自然と貴重な魚資源への感謝の気持ちを忘れないでください 。安全に注意し、周囲への配慮を忘れずに、素晴らしいヤマメとの出会い、そして渓流釣りの醍醐味を存分に味わってください。皆様の釣行が、忘れられない思い出となることを心より願っています。