真夏の太陽が照りつける8月、都会の喧騒を忘れさせてくれる身近な楽園が、すぐそこにあります。それが、私たちの暮らしのそばを流れる多摩川です。特に河口に近い下流域は、海水と真水が混じりあう「汽水域」と呼ばれる豊かな生態系を育んでおり、釣り人にとってはまさに宝の山。夏には、初心者の方でも気軽に楽しめ、しかも食べても美味しい魅力的な魚たちが待っています。
「釣りって何から始めたらいいかわからない」「道具も難しそう」と感じている方もご安心ください。この記事では、2024年の夏、多摩川下流で最高の釣りデビューを飾るための全てを、ステップバイステップで徹底的に解説します。釣れる魚の紹介から、具体的な釣り場のポイント、簡単な釣り方、そして釣った後のお楽しみである絶品レシピまで、この一本で完璧にガイドします。さあ、この夏は多摩川で、忘れられない思い出を作りましょう!
まずはコレから!8月の多摩川下流、初心者におすすめの二大ターゲット

多摩川下流の8月は、多種多様な魚が狙えるシーズンですが、特に初心者の方に心からおすすめしたいのが「テナガエビ」と「ハゼ」です。この二つのターゲットがなぜ入門に最適なのか、それには明確な理由があります。高価で複雑な道具は必要なく、比較的簡単に釣果に恵まれやすいため、「釣れた!」という成功体験を味わいやすいのです。この最初の感動が、きっとあなたを釣りの世界の虜にするはずです。
手軽で奥深い!テナガエビ釣りの魅力と攻略法
テナガエビ釣りは、その名の通り長いハサミを持つエビを狙う、非常に風情のある釣りです。物陰に潜むエビを探し出し、そっとエサを落とす。ウキが微かに動くのを捉え、じっくりと待ってから竿を上げた瞬間に伝わる「クンクンッ」という独特の引きは「エビバック」と呼ばれ、一度味わうと病みつきになるスリリングな魅力があります。そして何より、釣り上げたテナガエビを素揚げにした時の美味しさは格別です。
釣れる時期と時間帯
テナガエビのシーズンは5月から9月頃まで続きますが、最盛期は梅雨の6月~7月です。しかし、8月もまだまだシーズン真っ只中で、十分に楽しむことができます。卵を抱えたメスも多く見られるようになり、生命の営みを感じられる時期でもあります。
テナガエビは夜行性のため、日中に狙う場合は橋の下や岩の隙間など「日陰」になっている場所が絶対的なポイントになります。特に活性が高まるのは、朝夕の薄暗い時間帯(マヅメ)や、曇りや小雨の日です。また、多摩川下流は潮の満ち引きの影響を強く受けるため、潮が動いている時間帯を狙うことが釣果アップの鍵となります。
おすすめポイント
テナガエビは障害物の隙間を「住処(マンション)」にしています。そのため、テトラポッドやゴロタ石が沈んでいる場所が絶好のポイントです。
- 六郷橋周辺: 多摩川のテナガエビ釣りのメッカとして知られる超一級ポイントです。特にテトラポッド帯や護岸の敷石周りには、たくさんのテナガエビが潜んでいます。
- 多摩川大橋周辺: 橋脚やスロープ状の護岸、消波ブロックなど、テナガエビが隠れる場所が豊富にあります。
- ポイント探しのコツ: 初めての場所なら、干潮時に訪れて川底の地形や障害物の位置を確認しておくのがおすすめです。潮が満ちてきた時に、どこを狙えば良いかが一目瞭然になります。
釣り方と仕掛け
テナガエビ釣りは非常にシンプルな道具で楽しめます。
- 竿: 1.2m~2.1m程度の短い「のべ竿(リールのない竿)」が使いやすいです。ポイントによって長さを変えられるズーム機能付きの竿も便利です。
- 仕掛け: 釣具店で市販されている「テナガエビ用仕掛け」で十分です。ウキが一つ付いた「玉ウキ仕掛け」や、複数の目印が付いた「シモリ仕掛け」が一般的です。
爆釣のコツ:”我慢”が釣果を生む
テナガエビ釣りで最も重要かつ、面白いのが「アワセ(針を掛ける動作)のタイミング」です。これは単なる技術ではなく、テナガエビの習性を理解した上での駆け引きと言えます。
テナガエビは臆病な生き物で、エサを見つけるとすぐに食べず、まずハサミで掴んで安全な自分の巣穴まで持ち帰る習性があります。そのため、ウキが「ピクピクッ」と動いても、それはまだエサを運んでいる最中の合図。ここで慌てて竿を上げてしまうと、エサだけ取られたり、ハサミの先に針が引っかかっただけでバレてしまいます。
本当の勝負はここからです。ウキの動きが止まるのをじっと待ちます。これがエビが巣穴に到着し、安心してエサを食べ始めたサイン。そこから心の中で10秒から20秒ほど数え、そっと竿を持ち上げるように聞くと、竿先に「クンクン」という生命感が伝わってきます。この「待つ」という行為こそが、テナガエビ釣りの醍醐味であり、釣果を大きく左右する最大のコツなのです。
エサ
最も効果的なエサは「赤虫(アカムシ)」です。釣具店で手軽に購入できます。ミミズやカニカマでも釣れますが、食いの良さとエサ持ちのバランスから、初心者の方には赤虫を強くおすすめします。針には1~2匹をちょこんと付けるだけで十分です。
江戸前の夏の風物詩!ハゼ釣りの楽しみ方
ハゼ釣りは、古くから日本の夏を彩る代表的な釣りの一つです。特に家族連れや初心者の方に人気で、一度群れを見つければ次々とアタリがあり、退屈する暇がありません。そして、釣った後の楽しみはなんといっても天ぷら。揚げたてのハゼのサクサク、ふわふわとした食感は、まさに絶品です。
釣れる時期と時間帯
多摩川のハゼ釣りシーズンは7月から10月頃まで。8月はその中でも特に楽しめるベストシーズンです。
ハゼ釣りで最も重要なのは「潮」の動きです。ハゼは潮が満ちてくる「上げ潮」の時間帯に、エサを求めて浅瀬にやってきます。特に、満潮時刻の2時間前から満潮までの時間が「ゴールデンタイム」と呼ばれ、岸からでも簡単に釣れるチャンスタイムです。釣行前には必ずタイドグラフ(潮汐表)をチェックしましょう。
おすすめポイント
ハゼは砂や泥の底を好みます。多摩川大橋よりも下流の、より海水の影響が強いエリアがメインフィールドとなります。
- 六郷橋下流(川崎側): 国道15号線の六郷橋から500mほど下流にある護岸は、足場も良く釣りやすいポイントです。ただし、橋のすぐ下流にあるきれいな護岸は、底に網が沈められており釣りにくいので注意が必要です。
- 殿町第2公園前: 大師橋の下流にあるこのエリアは、足場が良く、トイレや駐車場も完備されているため、ファミリーにも最適なポイントです。砂泥底にゴロタ石が点在しており、ハゼの絶好の隠れ家になっています。
- 大師橋周辺(東京側): 橋のたもとにある船着き場周辺は護岸が整備されており、人気のハゼ釣りスポットです。足場が広く、子供連れでも安心して楽しめます。
釣り方と仕掛け
ハゼ釣りもシンプルな道具で楽しめます。
- のべ竿での釣り: 2.1m~3.6mほどののべ竿を使い、ウキの動きを見てアタリを取る「ウキ釣り」や、竿先に伝わる感触でアタリを取る「ミャク釣り」が主流です。どちらの釣り方でも、エサが必ず底に着くように調整するのが基本です。
- ちょい投げ釣り: リール付きの短い竿で、仕掛けを軽く投げて少し広い範囲を探る釣り方です。岸から少し離れた場所にハゼがいる場合に有効です。
数釣りのテクニック:潮との競争に勝つ
ハゼ釣りの面白さは、そのゲーム性にあります。これは「潮」という限られた時間の中で、「ハゼの群れはどこにいるか?」というパズルを解く競争です。
ハゼは単独でいることは少なく、条件の良い場所に群れで固まっています。そのため、じっと同じ場所で待つのではなく、積極的にポイントを探し歩く「機動力」が釣果を分ける最大の鍵となります。仕掛けを投入し、5~10秒待ってアタリがなければ、少し仕掛けをずらしてまた待つ。これを繰り返して、アタリが連続する「当たりポイント」を見つけ出しましょう。
当たりポイントを見つけたら、次なる鍵は「手返し」の速さです。魚を掛けてから、針を外し、エサを付け、再び仕掛けを投入するまでの一連の動作をいかにスムーズに行うか。この効率が、ゴールデンタイム中に釣れる数を大きく左右します。数釣りを極めたい方は、針を外しやすい軸の短い「袖針(そでばり)」を使うのも有効なテクニックです。
エサ
定番は「アオイソメ」や「イシゴカイ」といった虫エサです。しかし、虫が苦手な方には「ボイルホタテ」という強力な味方があります。小さく切って針に付けるだけで、虫エサに劣らない釣果が期待でき、手も汚れにくいので非常におすすめです。
ステップアップ!挑戦したい多摩川の人気ターゲット

テナガエビやハゼ釣りで釣りの楽しさに目覚めたら、次はいよいよ大物に挑戦してみましょう。多摩川下流には、アングラーを熱くさせる二大スターが存在します。それが「シーバス」と「チヌ(クロダイ)」です。これらの魚を狙うことは、単に魚を釣るだけでなく、川の状況を読み、魚の習性を考え、戦略を立てる「狩り」の面白さを教えてくれます。
多摩川の王様!シーバス(スズキ)のルアーフィッシング
シーバスは、その美しい銀色の魚体と力強い引きで、多くの釣り人を魅了する多摩川の王様です。本来は海の魚ですが、エサとなる小魚を追って川を遡上してきます。
生態と狙い目:シーバスというパズルを解く
シーバス釣りは、運任せの釣りではありません。潮の動き、ベイト(エサとなる小魚)の存在、川の地形、そして光と影。これらの要素を読み解き、「今、シーバスはどこで、何を待っているのか?」を推理する知的なゲームです。
- 待ち伏せの達人: シーバスは優れたハンターであり、橋脚や水中の岩などの障害物(ストラクチャー)に身を潜め、流されてくる小魚を待ち伏せして襲います。
- 光と影の境界線: 夜間、橋の明かりが水面を照らす場所では、シーバスは明るい場所から流れてくる小魚を、暗い影の部分(明暗部)で待ち構えています。この「明暗の境目」は、夜のシーバス釣りにおける超一級ポイントです。
- 夏のベイトパターン: 8月頃は、ボラの子供である「イナッコ」がシーバスの主なエサになります。水面でイナッコの群れがざわついていたら、その下にはシーバスがいる可能性大です。
ポイント
多摩川下流域に架かる橋は、すべてがシーバスの一級ポイントと言えます。
- 六郷橋: 最も有名で人気のあるポイントですが、その分釣り人も多くプレッシャーが高いです。橋脚が生み出す明暗部を丁寧に狙うのが定石です。
- ガス橋: 六郷橋に比べると知名度がやや低いため、比較的釣りやすいかもしれません。特に水深のある川崎側がおすすめです。明暗部に加え、岸際に潜む大物を狙うのも面白いでしょう。
- 丸子橋・六郷水門: これらのエリアもベイトフィッシュが豊富で、シーバスが付きやすいストラクチャーが点在しています。
ルアーとタックル
- ルアー: まずは汎用性の高い以下の3種類を揃えるのがおすすめです。
- フローティングミノー (9cm~12cm): 水面直下を泳ぐ小魚を模したルアー。シーバス釣りの基本です。
- バイブレーション: ブルブルと強く震えてアピール力が高く、少し深い場所を探るのに適しています。
- トップウォーター: 水面でアクションさせ、派手な水しぶきでシーバスを誘い出すルアー。水面が炸裂するバイトシーンは興奮度MAXです。
- タックル: シーバス専用のタックルがおすすめです。長さ8.6フィート~9.6フィート(約2.6m~2.9m)の竿に、2500番~4000番のスピニングリール、PEラインという伸びの少ない糸の1.0号~1.5号を巻くのが標準的な組み合わせです。
シーバス釣りについてより詳しく知りたい方は以下記事も参考にしてください。
【2025年版】シーバス釣りの完全ガイド!初心者向け釣り方(ルアー・餌)の種類とコツを徹底解説
パワフルな引きが魅力!チヌ(クロダイ・キビレ)ゲーム
チヌ(クロダイ)とキビレは、夏に活性がピークに達するパワフルなファイターです。海底の岩やカキ殻に付いたカニや貝を主食としており、その引きの強さは一度味わうと忘れられません。
生態と狙い目:ハードボトムを攻略せよ
チヌを釣るための最大のヒントは、彼らの「食事場所」を知ることにあります。彼らの大好物であるカニや貝類は、川底が硬い場所、特にゴロタ石が転がるエリアや、カキの殻がびっしりと付着した「カキ瀬」に豊富に生息しています。これらのハードボトムこそが、チヌのレストランなのです。
ポイント
シーバスが橋脚などのピンポイントに付くことが多いのに対し、チヌは河口から調布取水堰までの広範囲に点在するハードボトムに広く分布しています。スニーカーで気軽にエントリーできる岸辺からでも十分に狙うことができます。潮が動いている時間帯、特に川の流れと潮の流れが同調する下げ潮がチャンスタイムとされています。
釣り方とルアー:秘密兵器「フリーリグ」
チヌ釣りの最大の障壁は「根掛かり(ルアーが障害物に引っかかって失うこと)」でした。しかし、その悩みを劇的に解決してくれる画期的な仕掛けが「フリーリグ」です。これは初心者にとってまさに”秘密兵器”であり、チヌ釣りを誰にでも身近なものにしてくれました。
- フリーリグとは?: 糸にオモリを通し、その先に針を結ぶだけのシンプルな仕掛けです。オモリが固定されていないため、根掛かりが非常に少なく、ワーム(柔らかい素材のルアー)が自然に漂うことで魚に違和感を与えにくいのが特徴です。
- ルアー: エビやカニを模した、2~3インチ(約5cm~7.5cm)の「ホッグ系」と呼ばれるワームが効果的です。
- 釣り方: 釣り方は驚くほど簡単。「投げて、ゆっくり巻くだけ」です。オモリが川底を「コツコツ」と叩くのを感じながら、一定のスピードでリールを巻いてくるだけで、チヌが勝手に食いついてきます。この手軽さこそが、フリーリグがチニング(チヌのルアー釣り)の主流となった理由です。
黒鯛釣りについてより詳しく知りたい方は以下記事も参考にしてください。
クロダイ(チヌ)のルアー仕掛けの紹介!チニングのコツも伝授します。
釣りを始める前に!初心者が知っておくべき基本知識

楽しい一日を過ごすためには、事前の準備が何よりも大切です。ここでは、釣り場へ向かう前に必ずチェックしておきたい持ち物やルール、そして釣果を左右する重要な知識をまとめました。少しの準備が、あなたの釣りをより安全で快適なものにしてくれます。
揃えておきたい基本の持ち物リスト
夏の多摩川を快適に楽しむための持ち物リストです。釣具店でセット品を購入するのも賢い選択です。
必須の釣り道具
ターゲットによって異なります。下の表を参考に、自分のやりたい釣りの道具を揃えましょう。
安全装備
- ライフジャケット: 万が一の落水に備え、必ず着用しましょう。
- 帽子: 熱中症対策と、万が一の飛来物から頭を守るために必須。あご紐付きがおすすめです。
- 偏光サングラス: 目の保護はもちろん、水面のギラつきを抑えて水中が見やすくなる釣りの必須アイテムです。
- 滑りにくい靴: 濡れた場所でも安全なスニーカーや長靴を選びましょう。
快適グッズ(夏向け)
- クーラーボックス: 飲み物や釣った魚を保冷するために必要です。
- 飲み物: 熱中症予防のため、多めに用意しましょう。
- 日焼け止め・虫除けスプレー: 川辺は日差しと虫が多いため、忘れずに。
- タオル・ウェットティッシュ: 手を拭いたり、魚のぬめりを取ったりと、何かと役立ちます。
- 服装: 日焼けを防ぐため、速乾性のある長袖・長ズボンがおすすめです。
あると便利な道具
- プライヤー: 魚の口から安全に針を外すための道具です。
- ハサミ: 釣り糸を切るのに使います。
- フィッシュグリップ: 魚を安全に掴むための道具です。
- ヘッドライト: 夕方以降も釣りをする場合に必要です。
表1:初心者向けタックルセット購入ガイド
釣り方 | ターゲット | 竿 | リール | 仕掛け・ルアー | 予算目安 |
テナガエビ釣り | テナガエビ | 1.5m-2.1m のべ竿 | 不要 | 完成テナガエビ仕掛け | 2,000円 – 4,000円 |
ハゼ釣り(のべ竿) | ハゼ | 2.1m-3.6m のべ竿 | 不要 | 玉ウキ/ミャク釣り仕掛け | 3,000円 – 5,000円 |
ハゼ釣り(ちょい投げ) | ハゼ、キスなど | 1.8m-2.4m ちょい投げセット | 小型スピニングリール | ちょい投げ天秤仕掛け | 3,000円 – 7,000円 |
シーバス釣り(ルアー) | シーバス | 8’6″-9’6″ シーバスロッド | 2500-4000番スピニングリール | PEライン1.0号+リーダー, ルアー | 15,000円 – 25,000円 |
チヌ釣り(フリーリグ) | クロダイ、キビレ | 7′-8′ チニング/バスロッド | 2500番スピニングリール | PEライン0.8号+リーダー, フリーリグ用品 | 15,000円 – 25,000円 |
多摩川のルールとマナー:遊漁券は必要?
多摩川での釣りには、漁業協同組合が定めたルールがあります。少し複雑に感じるかもしれませんが、基本を押さえれば大丈夫です。
- ガス橋が目印: ルールを理解する上で最も重要なランドマークは「ガス橋」です。
- ガス橋より下流: 本記事で紹介しているハゼ、テナガエビ、シーバス、チヌなどがメインターゲットとなるこのエリアでは、法律上「遊漁券」の購入義務はありません。
- ガス橋より上流: アユやコイなどを狙う場合は「遊漁券」が必要になります。
- 「協力」のお願い: ただし、法律上の義務がなくても、地元の漁協は釣り人に遊漁券の購入協力をお願いしています。その収益は、魚の放流や川の環境整備に使われ、結果的に私たちが楽しむ釣りの環境を守ることにつながります。安心して釣りを楽しむため、そして豊かな多摩川を未来に残すためにも、日釣券の購入を検討してみてはいかがでしょうか。
- 夜釣りについて: ガス橋までの区間は、原則として夜釣りが禁止されています。また、照明のない川辺での夜間の釣りは危険も伴うため、安全第一で楽しみましょう。
守りたい共通マナー
- ゴミは必ず持ち帰る。
- 近隣住民の迷惑にならないよう、早朝や夜間の騒音に配慮する。
- ルアーなどを投げる際は、必ず周囲の安全を確認する。
- 他の釣り人との距離を保ち、挨拶を交わして気持ちよく釣りをする。
潮を制する者は釣りを制す!タイドグラフの読み方
多摩川下流のような汽水域では、「潮」の動きが釣果を大きく左右します。潮は川の生態系のエンジンであり、エサを運び、魚たちの食事のスイッチを入れる重要な役割を担っています。
基本用語
- 満潮(まんちょう): 一日で最も潮位(水位)が高くなる時間。
- 干潮(かんちょう): 一日で最も潮位が低くなる時間。
- 上げ潮(あげしお): 干潮から満潮に向かって潮が満ちてくる時間帯。
- 下げ潮(さげしお): 満潮から干潮に向かって潮が引いていく時間帯。
- 潮止まり(しおどまり): 満潮・干潮のピーク時で、潮の動きが一時的に止まる時間帯。
- 大潮(おおしお): 満潮と干潮の差が最も大きく、潮の流れが速い日。魚の活性も高まりやすい。
- 小潮(こしお): 満潮と干潮の差が最も小さく、潮の流れが緩やかな日。
釣りのゴールデンルール
釣りの最も基本的な鉄則は「潮が動いている時がチャンス」ということです。潮の動きが止まる「潮止まり」の前後約1時間は、魚の食いが落ちる傾向があります。逆に、潮が活発に動き始める「上げ始め」や「下げ始め」が絶好の狙い目です。昔から釣り人の間で言われる「上げ3分・下げ7分」という言葉は、まさにこの潮が動き出すタイミングを指しています。
タイドグラフを活用した実践プラン
スマートフォンのアプリやウェブサイトで「タイドグラフ」と検索すれば、その日の潮の動きを簡単に確認できます。この情報を元に、具体的な一日の計画を立ててみましょう。
【8月のある日の計画例】
- 潮汐情報: 満潮 14:00
- プラン:
- 11:30: 殿町第2公園に到着。準備を始める。
- 12:00~14:00: 満潮に向かう「上げ潮」のゴールデンタイム。岸際に寄ってくるハゼを狙って数釣りを楽しむ。
- 14:00~16:00: 満潮の潮止まりを過ぎ、潮が引き始める「下げ潮」に。このタイミングで活性が上がるとされるチヌを、フリーリグで狙ってみる。
このように、タイドグラフを読み解くことで、ただ闇雲に竿を出すのではなく、時間帯ごとに最も釣れる可能性の高い魚を戦略的に狙うことができるのです。
よくある悩みを解決!初心者のためのトラブルシューティング

釣りを始めたばかりの人が直面する二大トラブルが「根掛かり」と「アタリはあるのに釣れない」こと。これらは誰しもが通る道です。しかし、原因と対策を知っていれば、もう怖くありません。ここでしっかりと解決策を学び、ステップアップしましょう。
根掛かりしてしまった!ルアーを失くさないための外し方と回避法
ルアーや仕掛けが水中の障害物に引っかかってしまう「根掛かり」。焦って力任せに引っ張るのは、最もやってはいけないことです。かえって深く刺さってしまい、回収不能になってしまいます。
根掛かりを外すためのステップ
- 緩めて揺する: まずはリールから糸を出し(ベールを起こす)、糸を緩めます。そして、竿先を優しくチョンチョンと揺すってみましょう。軽い根掛かりなら、これだけで外れることがよくあります。
- 角度を変える: それでも外れない場合は、立ち位置を左右に移動し、引っ張る角度を変えてみましょう。驚くほどあっさり外れることがあります。
- ラインを弾く: 竿とルアーの間の糸を指でつまみ、弓を引くように軽くテンションをかけ、パッと指を離します。この反動でルアーが逆方向に飛び、フックが外れることがあります。
- 最終手段: どうしても外れない場合は、竿やリールを傷めないよう、糸をタオルやグローブを巻いた手に数回巻き付け、竿と一直線になるようにして、ゆっくりと真後ろに引っ張ります。これで糸が切れるか、フックが伸びて回収できる場合があります。
アタリはあるのに釣れない!針掛かりしない時の原因と対策
「コンコンッ」とアタリはあるのに、一向に針に掛からない。これは悔しいですが、同時に大きなチャンスでもあります。なぜなら、「魚はそこにいて、あなたのエサやルアーに興味を持っている」という証拠だからです。いくつかの原因をチェックして、確実な一匹に繋げましょう。
フッキングミス診断チェックリスト
- 針先は鋭いか?: 針は岩などに当たるとすぐに鈍ります。爪の上で針先を滑らせてみてください。カリッと引っかかればOK、滑るようであれば鈍っています。針を交換するか、シャープナーで研ぎましょう。これは最も見落としがちで、最も重要なポイントです。
- 針のサイズは合っているか?: 魚の口に対して針が大きすぎると吸い込めず、小さすぎると口の中で掛からずにすっぽ抜けてしまいます。釣れている魚の大きさに合わせて、針のサイズを調整してみましょう。
- エサやルアーが大きすぎないか?: 小さな魚がエサの端をつついているだけかもしれません。エサを小さく付けたり、一回り小さいルアーに交換してみましょう。
- アワセが早すぎないか?: 特にテナガエビや食い渋る魚は、最初のアタリで早合わせをすると掛かりません。一呼吸待って、魚がしっかりとエサを咥える「間」を作ってあげましょう。
- 竿が硬すぎないか?: 硬すぎる竿は、魚がエサを咥えた瞬間に違和感を与え、すぐに吐き出させてしまうことがあります。特にアタリが小さい場合は、竿先が柔らかい竿の方が、魚に違和感なく食い込ませることができます。
釣りの後のお楽しみ!絶品・釣魚料理レシピ

釣りの最大の魅力は、自然の中で過ごす時間だけでなく、その恵みを美味しくいただくことにもあります。自分で釣った魚の味は、どんな高級魚にも負けない格別なものです。ここでは、多摩川で釣れる魚を使った、簡単で美味しい料理レシピをご紹介します。
サクサクふわふわ!ハゼの天ぷら
夏のハゼ料理の王道。揚げたての味は、釣り人の特権です。
- 下処理: ハゼのウロコと内臓を取り除き、よく洗います。包丁で背中から開く「背開き」にすると、骨も気にならず食べやすくなります。
- 作り方:
- 開いたハゼに軽く小麦粉をまぶします。
- 市販の天ぷら粉を冷水で溶き、衣を作ります(混ぜすぎないのがコツ)。
- ハゼを衣にくぐらせ、180℃に熱した油で短時間でカラッと揚げます。ハゼは身が薄いので、揚げすぎに注意しましょう。
おつまみに最高!テナガエビの素揚げ
香ばしい香りとエビの旨味が凝縮された、ビールにぴったりの一品。
- 下処理(最重要!): テナガエビは泥の中に住んでいるため、必ず「泥抜き」が必要です。釣った後、きれいな水を入れたバケツなどで2~3時間生かしておくと、体内の泥を吐き出します。その後、ボウルに入れて塩や酒でよく揉み洗いし、ぬめりや汚れを落とします。最後にキッチンペーパーで水気をしっかり拭き取ってください。水気が残っていると油が激しく跳ねるので注意が必要です。
- 作り方: 170℃~180℃の油で、エビから出る泡が少なくなるまで1分半~3分ほど揚げます。カラッと揚がったら油を切り、塩を振って完成です。
おしゃれな一皿!シーバスのムニエル
上品な白身のシーバスは、洋風料理にぴったり。バターの香りが食欲をそそります。
- 下処理: シーバスを三枚におろし、皮付きのまま切り身にします。川の魚特有の臭みが気になる場合があるため、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取り、塩コショウで下味を付けるのがポイントです。
- 作り方:
- 切り身の両面に小麦粉を薄くまぶします。
- フライパンにバターを熱し、皮目からじっくりと焼きます。
- 皮がパリッとしたら裏返し、身の側にも火を通します。
- お皿に盛り付け、フライパンに残ったバターにレモン汁を加えて作ったソースをかければ完成です。
シンプルが一番!クロダイの塩焼き
新鮮なクロダイが手に入ったら、まずは素材の味を活かした塩焼きがおすすめです。
- 下処理: ウロコと内臓を取り、きれいに洗います。火が通りやすいように、皮に数本切り込みを入れます。焼く前に両面に塩を振り、10分ほど置くと、余分な水分が抜けて身が締まります。
- 作り方: 魚焼きグリルで、両面をこんがりと焼き上げます。皮を上にして10分ほど、裏返して5分ほどが目安です。大根おろしやレモンを添えてどうぞ。
おわりに
都会を流れる一本の川、多摩川。そこには、私たちが思う以上に豊かでエキサイティングな自然の世界が広がっています。この夏、ほんの少しの準備と知識を持って川辺に立てば、きっと素晴らしい出会いが待っているはずです。釣れた魚の大きさや数だけが釣りの楽しさではありません。風を感じ、水の流れを読み、生き物の気配に耳を澄ます。そのすべてが、日常を忘れさせてくれる貴重な体験となるでしょう。
この素晴らしい釣り場を未来に残していくために、私たち釣り人一人ひとりの心掛けが大切です。持ち込んだゴミは必ず持ち帰る、小さな魚は優しくリリースする。そんな当たり前のマナーを守り、多摩川への感謝の気持ちを忘れずに、最高の夏の思い出を作ってください。