富士山を望む絶景の湖、山中湖。初夏の日差しが心地よい6月は、実は釣りを始めるのに最高の季節です。なぜなら、この時期の山中湖は二つの異なる釣りの楽しみ方を一度に味わえる、まさに「釣りの楽園」だからです。一つは、シーズン終盤を迎える、手軽で美味しい「ワカサギ釣り」。そしてもう一つは、産卵後のデリケートなバスを狙う、頭脳戦が楽しい「ブラックバス釣り」。この記事では、釣り初心者の方でも安心して山中湖の6月を満喫できるよう、それぞれの釣りの魅力と具体的な攻略法を、準備からポイント選び、釣り方まで、余すところなく徹底的に解説します。このガイドを読めば、あなたの山中湖での釣りが、忘れられない素晴らしい体験になること間違いありません。
6月の山中湖は釣りの楽園!気候とターゲットを徹底解説

6月の山中湖がなぜこれほどまでに釣り人にとって魅力的なのか、その秘密は気候と、それに伴う魚たちの行動に隠されています。まずは、釣りの計画を立てる上で最も重要な基本情報から見ていきましょう。
6月の気候と水温が釣りに与える影響
気象庁の平年値データによると、山中湖の6月は平均気温が約16.5℃、日中の最高気温は21.5℃前後と、非常に過ごしやすい気候です。しかし、朝晩は12.1℃前後まで冷え込むこともあるため、一枚羽織るものがあると安心です。
この時期、水の中では大きな変化が起きています。春の間に温められた湖の表層水温は上昇を続けますが、深い場所の水はまだ冷たいまま。これにより、温かい水の層と冷たい水の層がはっきりと分かれる「水温躍層(すいおんやくそう)」が形成され始めます。魚たちは自分たちが最も快適だと感じる水温の層(レンジ)を探して移動するため、この「水温躍層」がどこにあるかを意識することが、釣果を上げるための重要な鍵となります。また、6月は梅雨の時期でもあり、雨によって水が濁ったり、酸素量が増えたりすることで、魚の活性が上がることも少なくありません。
6月の二大ターゲット:ワカサギとブラックバス
このダイナミックな環境の変化の中で、6月の山中湖では主に二種類の魚をターゲットにすることができます。
- ワカサギ: 9月から始まった長いシーズンが、6月末で一度終わりを迎えます。小さくて繊細なアタリを楽しむ釣りで、数釣りが魅力。そして何より、釣った後の天ぷらは絶品です。
- ブラックバス: 周年釣ることができますが、6月は春の産卵(スポーニング)を終えた「アフタースポーン」と呼ばれる特別な時期にあたります。体力を消耗したバスをどうやって釣るか、戦略的な面白さがあり、その力強い引きは多くの釣り人を魅了します。
のんびり家族と楽しみたいならワカサギ、ゲーム性の高い釣りに挑戦したいならブラックバス。あなたのスタイルに合わせて、最高のターゲットを選んでみましょう。
【初心者・家族連れに最適】手ぶらで満喫!山中湖ワカサギ釣り体験

「釣りはやってみたいけど、道具もないし難しそう…」そんな風に思っている方にこそ、山中湖のワカサギ釣りは心からおすすめです。その理由は、初心者が抱える不安をすべて解消してくれる、至れり尽くせりの環境が整っているからです。
なぜワカサギ釣りは初心者に最高なのか?
山中湖のワカサギ釣りの最大の魅力は、その手軽さと快適性にあります。多くのボートハウスが提供する体験プランは、竿やリール、仕掛け、エサなど、必要な道具一式をレンタルできる「手ぶらOK」のスタイル。さらに、釣りの舞台となるのは「ドーム船」と呼ばれる、屋根と壁に覆われた特殊な船です。
このドーム船は、まるで水上のコテージのよう。内部には暖房や清潔なトイレが完備されており、雨や風、寒さを全く気にすることなく、快適な室内で釣りを楽しむことができます。船の揺れもほとんどないため、船酔いが心配な方でも安心です。釣り方が分からなくても、経験豊富なスタッフがエサの付け方から竿の操作まで丁寧にレクチャーしてくれるので、お子様や女性、まったくの初心者でも、すぐに釣りの醍醐味を味わうことができます。
ワカサギ釣りの基本ステップとコツ
ワカサギ釣りは非常にシンプルです。以下のステップを覚えれば、誰でも簡単に釣ることができます。
- エサを付ける: スタッフに教わった通りに、「サシ」と呼ばれる小さなエサを、複数付いている針の一つひとつに付けます。
- 仕掛けを落とす: リールのボタンを押しながら、オモリ(重り)が付いた仕掛けを湖の底までゆっくりと落とします。
- 「誘い」を入れる: 仕掛けが底に着いたら、竿先をゆっくりと上下に動かして、ワカサギにエサの存在をアピールします。これを「誘い」と呼びます。
- 「アタリ」を待つ: 竿先に集中していると、「ピクピクッ」という小刻みな振動が伝わってきます。これがワカサギが食いついた合図、「アタリ」です。
- リールを巻く: アタリがあったら、慌てずにゆっくりとリールを巻き上げます。一度に2匹、3匹と連なって釣れてくることも珍しくありません。
6月はシーズンの終盤なので、魚のいる水深(棚)を見つけることが特に重要になります。ドーム船には魚群探知機が設置されていることも多く、船長が最も釣れるポイントへ案内してくれるので、釣果も期待できます。
ワカサギ釣りについて詳細を知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
ワカサギ釣り完全ガイド:初心者向け釣り方・道具・人気釣り場を徹底解説!
釣った後のお楽しみ
ワカサギ釣りのもう一つの喜びは、釣った魚を食べられることです。釣れたワカサギは持ち帰ることが可能で、近くの飲食店で天ぷらなどに調理してくれるサービスがある場合もあります。自分で釣った新鮮なワカサギの味は格別です。持ち帰り用に、ジップロックなどの密閉できる袋を持参すると便利でしょう。
おすすめワカサギドーム船プラン
山中湖には多くのドーム船業者があります。ここでは代表的なプランをいくつかご紹介します。ご自身のプランに合わせて選んでみてください。
ボート店 | プラン例 | 料金目安(大人1名) | 特徴 |
旭日丘観光 | わかさぎ釣り体験 | ¥5,000 | 「山中湖ドーム船」の商標を持つ老舗。道具一式込みで手ぶらOK。 |
つちやボート | 半日パック2時間コース | ¥4,300 | 短時間で気軽に体験できる。魚群探知機を駆使したポイント案内が魅力。 |
SHUSUIYA | わかさぎ釣り体験プラン 3時間 | ¥5,300 | 名人スタッフによる丁寧なレクチャーが好評。初心者でも安心。 |
ハクタカマリン | わかさぎ釣り3時間体験 | プランによる | 完全貸切プランがあり、ペット同伴も可能。プライベートな時間を楽しめる。 |
注意: 上記料金の他に、別途「遊漁券」の購入が必要です。料金やプラン内容は変更される可能性があるため、事前に各ボート店へご確認ください。
ゲーム性が熱い!6月の山中湖ブラックバス攻略

のんびり楽しむワカサギ釣りとは対照的に、スリリングで戦略的な面白さを求めるならブラックバス釣りがおすすめです。特に6月のバス釣りは、魚の生態を理解することが釣果に直結する、非常に奥深いゲームとなります。
6月のバスは夏バテ気味?「アフタースポーン」を理解する
春に産卵という大仕事を終えたブラックバスは、6月になると体力を大きく消耗した「アフタースポーン」という状態に入ります。人間で言えば、マラソンを走り終えた直後のようなもの。活発にエサを追いかける元気はなく、葦などの植物の陰や、桟橋の柱といったストラクチャー(障害物)のそばで、じっと体を休めていることが多いのです。
この時期のバスを釣るための最大の秘訣は、「優しさ」と「忍耐」です。初心者がやりがちな、ルアーを速く大きく動かす派手なアクションは、体力の無いバスにとってはただの脅威でしかなく、全く効果がありません。むしろ、目の前にゆっくりと、食べやすそうなエサが落ちてくるような、静かでスローな釣りが求められます。この「アフタースポーン」のバスの気持ちを理解することが、攻略への第一歩です。
オカッパリ(岸釣り)おすすめポイントと攻め方
山中湖は岸から釣りができる「オカッパリ」ポイントが豊富にあります。ここでは初心者にもおすすめの代表的な3つのポイントと、その攻め方をご紹介します。
ポイント1: 平野ワンド
湖の東側に位置する広大な遠浅の入り江(ワンド)です。全体的に浅いですが、沖に向かって急に深くなる「馬の背」と呼ばれる地形変化があり、そこにバスが付きやすいのが特徴です。
- 攻め方: 遠浅のため、遠投できるルアーが有利です。岸際に生えている葦の周りや、目に見える変化を丁寧に探りましょう。特にワンドの入り口付近にある「馬の背」は、湖流が当たる一級ポイントなので、重点的に狙ってみる価値があります。
ポイント2: ママの森
湖の南岸に広がる、比較的浅いエリアです。水がクリアな日には、水中のバスの姿が見えることもあり、「サイトフィッシング(見えバス釣り)」の有名ポイントとして知られています。
- 攻め方: ここでの鍵は「気配を消すこと」。バスにこちらの存在を気づかれないよう、静かにポイントに近づき、物音を立てないようにします。偏光サングラスをかけると水の中が格段に見やすくなります。見つけたバスの進行方向の少し先に、小さなワームなどをそっと落として、バスから気づいてくれるのを待ちましょう。
ポイント3: 長池親水公園
富士山の絶景が楽しめる、湖の北岸にある公園エリアです。駐車場やトイレも完備されており、アクセスも良好。
- 攻め方: 公園内にある桟橋の周りや、流れ込み、ウィード(水草)の塊など、バスが隠れそうな場所を狙います。観光客も多いため、キャスト(ルアーを投げること)する際は、必ず周囲の安全を確認してください。
6月のバスに効く!初心者向けルアーと釣り方
アフタースポーンのバスに口を使わせるには、ルアーの選択と動かし方が重要です。初心者でも扱いやすい、実績の高い釣り方を3つ紹介します。
釣り方1: 「放置」で誘う(ノーシンカーリグ/フリーリグ)
ワーム(ミミズや小魚の形をしたソフトルアー)にオモリを付けない、または遊動式のオモリを付けただけのシンプルな仕掛けです。
- なぜ効くのか: オモリの抵抗が少ないため、ワームが水中で「フワフワ」と非常にゆっくり自然に沈んでいきます。これが、弱って底に落ちていく小魚や虫を完璧に演出し、体力の無いバスでも思わず口を使ってしまうのです。
- 使い方: 葦の際や桟橋の横にキャストし、あとはラインを張りすぎず、ルアーが自然に沈んでいくのを待つだけ。「ココンッ」という小さなアタリや、ラインが横に走る動きでアワセを入れます。
釣り方2: 「I字」で魅せる(I字系ルアー/シャッド)
小魚の形をしたハードルアーの一種。リールを巻いてもルアー自体がブルブルと振動せず、まるで無警戒に泳ぐ小魚のように、まっすぐ(I字に)進むのが特徴です。
- なぜ効くのか: 派手な動きがないため、警戒心の強いバスや、やる気のないバスにプレッシャーを与えません。ゆっくりとした一定速度の動きが、逆にバスの捕食本能を刺激します。
- 使い方: キャストしたら、とにかく「ゆっくり」と、ルアーが泳いでいるかいないかぐらいのスピードでリールを巻くだけです。
釣り方3: 「ポーズ」で食わす(小型ポッパー)
水面で使うトップウォータールアーの一種。竿を軽くあおると、「ポコッ」という音と水しぶきを出します。
- なぜ効くのか: アフタースポーンから少し回復し、水面を意識し始めたバスに有効です。音でバスの注意を引きつけ、その後の「ポーズ(静止)」の間に食わせます。動いているものより、止まっているものの方がバスにとっては食べやすいのです。
- 使い方: キャストして、一回「ポコッ」。その後、5秒から10秒ほど待ちます。この繰り返しです。水面が爆発するようなエキサイティングなバイトが楽しめます。
ブラックバス釣りについて詳細を知りたい方はこちらの記事も参考にしてください
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釣りを10倍楽しむための準備と必須ルール

最高の釣り体験にするためには、事前の準備とルールの確認が不可欠です。これさえ押さえておけば、初心者でも安心して楽しめます。
初心者のための一本!バス釣りタックル選び
バス釣りの道具(タックル)は無数にありますが、初心者が最初に揃えるなら、様々なルアーや状況に対応できる「万能な一本」がおすすめです。
- ロッド(竿): 長さ6フィート~7フィート(約1.8m~2.1m)で、硬さが「ML(ミディアムライト)」のスピニングロッド。しなやかで扱いやすく、軽いルアーも投げやすいのが特徴です。
- リール: 「2000番」または「2500番」サイズのスピニングリール。ロッドとのバランスが良い標準的なサイズです。
- ライン(糸): 「ナイロン」または「フロロカーボン」素材の6ポンド(lb)前後のもの。ナイロンラインはしなやかでトラブルが少ないため、特に初心者におすすめです。
あると便利な持ち物リスト
タックル以外にも、持っていくと釣りが快適になるアイテムがあります。
- 必須: 釣りタックル、遊漁券
- 便利:
- ランディングネット(玉網): 大きな魚を安全に取り込むために必須。
- プライヤー: 魚の口から安全に針を外すための道具。
- 偏光サングラス: 水面のギラつきを抑え、水中を見やすくします。
- レインウェア(雨具): 天候の急変に備えて。
- 帽子、日焼け止め: 紫外線対策。
- 飲み物、軽食
- クーラーボックス、ジップロック: 釣った魚を持ち帰る場合に。
最重要!遊漁券の購入とローカルルール
山中湖で釣りをするには、年齢や性別を問わず、必ず「遊漁券」を購入しなければなりません。これは、湖の環境整備や魚の放流など、釣り場を維持するために使われる大切な料金です。購入方法はいくつかあり、非常に便利になっています。
山中湖 遊漁券 購入方法まとめ
購入方法 | 料金(大人1日) | 購入のポイント |
コンビニ | ¥600 | 全国の主要コンビニの端末で購入可能。JTB商品番号「0239093」を入力するとスムーズ。 |
スマホアプリ | ¥600 | 「FISHPASS」というアプリをダウンロードして購入。キャッシュレスで手軽。 |
現地の販売所 | ¥600 | 湖畔のボート店や釣具店など。「遊漁券販売所」の緑色ののぼりが目印。 |
監視員から直接 | ¥1,200 | 現場を巡回している監視員からも購入できますが、割高になるため事前購入が断然おすすめ。 |
注意: 女性・中学生・70歳以上の方は割引料金(¥300)が適用されます。小学生以下は無料です。遊漁券は見える位置に必ず携帯してください。
その他、釣りは「日の出から日没まで」という時間ルールや、ブラックバスは「特定外来生物」に指定されているため生きたまま持ち出すことが法律で禁止されていること、他のボート店の桟橋付近では釣りをしないことなど、基本的なマナーとルールを守って、安全に釣りを楽しみましょう。
まとめ
6月の山中湖は、穏やかな初夏の日差しの中で、二つの全く異なる釣りの魅力を体験できる、またとないチャンスの季節です。手ぶらで気軽に挑戦でき、釣った後の美味しさも格別な「ワカサギ釣り」は、ご家族やカップル、そして釣りが初めての方に最高の思い出を約束してくれるでしょう。一方、魚の生態を読み解き、静かなアプローチで大物を狙う「ブラックバス釣り」は、アングラーを夢中にさせるゲーム性に満ちています。
どちらの釣りを選ぶにしても、大切なのは自然への敬意とルールを守る心です。このガイドで紹介したポイントや釣り方、準備を参考に、雄大な富士山に見守られながら、あなただけの素晴らしい一匹との出会いを、ぜひ山中湖で体験してみてください。きっと、釣りの世界の奥深さと楽しさに、心を奪われるはずです。