はじめに:夏の夜の冒険へ!天然うなぎを釣るという最高の贅沢

夏の夜、涼しい川辺に立ち、静寂の中で竿先を見つめる。聞こえるのは川のせせらぎと虫の音だけ。その静寂を破り、竿先の鈴がけたたましく鳴り響く瞬間――。これこそが、うなぎ釣りの醍醐味です。
うなぎ釣りは、ただ魚を釣るという行為以上の、一つの冒険と言えるでしょう。日中の喧騒から離れ、夜の自然と一体になる特別な時間。そして、その先には、自分で釣り上げた「天然うなぎ」を味わうという、この上ない贅沢が待っています。スーパーで手に入る養殖うなぎとは一線を画す、身の締まりと風味豊かな味わいは、一度体験すれば忘れられない感動を与えてくれます。
高級魚として知られるうなぎですが、実は私たちの身近な川にも生息しており、東京の河川でさえ、初心者でも十分に釣ることが可能です。この記事では、これからうなぎ釣りを始めてみたいという初心者の方に向けて、必要な知識と技術のすべてを、順を追って丁寧に解説していきます。時期や場所の選び方から、具体的な釣り方、そして釣った後の捌き方まで、この記事一本でうなぎ釣りの全てがわかる「完全ガイド」です。さあ、一緒に夏の夜の冒険へと出かけましょう。
うなぎ釣りはいつがベスト?釣果を左右する時期とタイミング

うなぎ釣りの成功は、「いつ、どんな状況で釣るか」に大きく左右されます。うなぎの生態を理解し、最も活動的になるタイミングを狙うことが、釣果への一番の近道です。
うなぎ釣りのベストシーズン:春から秋まで楽しめる
一般的に「うなぎは夏」というイメージが強いですが、実は釣りが楽しめる期間は意外と長く、水温が上がり始める4月頃から、水温が下がりきる11月頃まで狙うことができます。特に、活発にエサを探し回るようになる6月から8月の梅雨時期から夏にかけてが最盛期と言えるでしょう。水温の上昇とともに、うなぎの活性も高まっていくと覚えておきましょう。
狙うべき時間帯:日没後がゴールデンタイム
うなぎは夜行性の魚で、日中は岩の隙間や泥の中に身を潜めています。そして、日が沈んであたりが暗くなると、隠れ家から出てきて活発にエサを探し始めます。そのため、釣りにおける最大のチャンスタイム、いわゆる「ゴールデンタイム」は、日没から約2〜3時間です。多くの釣り人の経験則でも、この時間帯にアタリが集中することが知られています。釣りを始める際は、暗くなる前に釣り場に到着し、仕掛けの準備をすべて終えておくのが理想的です。
釣果アップの鍵を握る天気と川のコンディション
うなぎの釣果を劇的に向上させる魔法のような条件、それが「雨」とそれに伴う「川の濁り」です。なぜなら、これらはうなぎの習性に深く関わっているからです。
まず、うなぎは警戒心が非常に強い魚です。夜行性であるのも、明るい場所を嫌い、外敵から身を守るためです。しかし、雨が降った後で川の水が濁ると、日中でも水中は薄暗くなります。この濁りがうなぎにとって格好の隠れ蓑となり、警戒心が薄れ、大胆にエサを探し回るようになるのです。実際に、大雨の後には日中でも釣れたという報告が数多くあります。
さらに、雨は川に栄養をもたらします。陸地からミミズなどのエサが川へと流れ込み、うなぎの食欲を大いに刺激します。つまり、「雨後の濁り」は、うなぎにとって「安全」かつ「食事が豊富」という、この上ない好条件が揃った状態なのです。天気予報をチェックして、雨が降った後を狙って釣行計画を立てることが、初心者にとって最も確実な釣果アップの秘訣と言えるでしょう。
これさえあれば始められる!初心者向けうなぎ釣り道具一式

うなぎ釣りは、専用の高級な道具を揃えなくても始められる手軽さが魅力です。まずは基本的な装備を理解し、手持ちの道具で代用できるものと、専用品を揃えるべきものを見極めましょう。
竿とリール:意外と何でもOK?選び方の基本
驚くかもしれませんが、うなぎ釣りの竿は、本格的な専用竿でなくても問題ありません。ご家庭にあるファミリーフィッシング用の万能竿や、シーバスロッド、バスロッドなどで十分代用可能です。
ただし、一つだけ意識したいのは「竿の強度」です。うなぎはヒットすると、岩の隙間などの障害物(根)に潜り込もうとする習性があります。その際に、ある程度のパワーで強引に引きずり出せるよう、少し張りのある竿が有利になります。長さは2〜4m程度の投げ竿が扱いやすいでしょう。
リールは、糸を巻くための道具です。これまた専用品は不要で、3000番から5000番クラスのスピニングリールがあれば十分対応できます。このクラスのリールは、うなぎ釣りに適した太さの糸を十分に巻くことができ、不意の大物にも対応できるパワーがあります。
仕掛けの核心部:道糸、オモリ、そして専用の針
仕掛けとは、リールから伸びる糸(道糸)の先に取り付ける、オモリや針などの部分を指します。ここのセッティングが釣果を直接左右します。
- 道糸(ライン): リールに巻くメインの糸です。根ズレ(障害物に擦れて糸が切れること)に強いナイロンラインの3号〜6号、もしくは感度に優れるPEラインの1号〜2号がおすすめです。初心者のうちは、扱いやすく値段も手頃なナイロンラインから始めると良いでしょう。
- オモリ(シンカー): 仕掛けを川底に沈め、流れに負けないようにするための重りです。川の流れの速さに応じて6号(約23g)から20号(約75g)を使い分けます。形状は「ナス型」や、糸が中を通る「中通しオモリ」が一般的です。
- 針(フック): ここが最も重要なポイントです。必ず「うなぎ針」と呼ばれる専用の針を使いましょう。サイズは13号前後が標準です。うなぎ針は、うなぎの小さな口でも吸い込みやすいように、軸が細長く設計されています。この針を使うか否かで、釣果に天と地ほどの差が出ます。
夜釣りの必需品:アタリを知らせる鈴とケミホタル
うなぎ釣りは、仕掛けを投げ込んだら竿を置いてアタリを待つ「置き竿」が基本です。暗闇の中で、いつ来るかわからない繊細なアタリを見逃さないために、アタリを知らせる道具が必須となります。
最も一般的なのが、竿の先端に取り付ける小さな「鈴」と、化学発光体の「ケミホタル」です。うなぎがエサに食いつくと、竿先が揺れて鈴が「チリンチリン」と鳴り、同時にケミホタルの光が揺れることで、視覚と聴覚の両方でアタリを知らせてくれます。これらは釣具店で安価に手に入りますので、必ず用意してください。
うなぎ釣り基本装備チェックリスト
これから道具を揃える方のために、必要なものを一覧表にまとめました。釣具店に行く際の参考にしてください。
項目 (Item) | 推奨スペック (Recommended Spec) | 理由・初心者へのアドバイス (Reason / Tip for Beginners) |
竿 (Rod) | 2〜4mの投げ竿、シーバスロッド等 | 専用竿は不要。ある程度の強度があれば、根掛かり時も安心です。 |
リール (Reel) | 3000〜5000番のスピニングリール | 丈夫で太い糸を巻けるサイズがおすすめ。 |
道糸 (Main Line) | ナイロン3〜6号 or PE1〜2号 | 初心者は根ズレに強いナイロンが扱いやすいです。 |
オモリ (Sinker) | ナス型 or 中通し 6〜20号 | 川の流れの速さに合わせて重さを変えます。複数種類あると便利。 |
ハリ (Hook) | うなぎ針 13号前後 | うなぎの口に合わせた専用針が釣果への近道です。 |
餌 (Bait) | ドバミミズ(最優先)、アケミ貝など | 現地調達も可能。詳しくは餌のセクションで解説します。 |
アタリ感知 (Bite Indicator) | 竿先用の鈴、ケミホタル | 暗闇でのアタリを見逃さないための必須アイテム。 |
照明 (Light) | ヘッドライト | 両手が自由になるヘッドライトが夜釣りでは絶対に必要です。 |
その他 (Other) | プライヤー、ハサミ、クーラーボックス、三脚(竿立て)、タオル | 針外しや仕掛けの準備、釣ったうなぎの保管に。 |
最高の餌はこれだ!うなぎを魅了する特効薬「ドバミミズ」

うなぎ釣りの世界には「餌を制する者は釣りを制す」という言葉があるほど、餌選びは重要です。数ある餌の中でも、川のうなぎ釣りにおいて最強と断言できるのが「ドバミミズ」です。
なぜドバミミズが最強なのか?
ドバミミズが最強と言われるのには、明確な理由があります。第一に、うなぎが自然界で普段から食べている「大好物」であること。その匂いや動きは、うなぎの本能を強く刺激します。
第二に、他の生き物(外道)に食べられにくいという点です。例えば、サバやアジの切り身を使うと、匂いに誘われてカメやニゴイといった、うなぎ以外の生物が先に食いついてしまうことが多々あります。その点、ドバミミズはうなぎの好物である一方、他の外道からの反応は比較的少ないため、効率的に本命のうなぎを狙うことができるのです。
ドバミミズの採取方法と付け方のコツ
ドバミミズは釣具店でも購入できますが、より太く活きの良いものを使うなら、自分で採取するのが一番です。公園や林の落ち葉が積もった湿った土の中、側溝の泥の中などを掘り返してみると、見つけることができます。採取したミミズは、土や落ち葉と一緒に入れておくと鮮度を保てます。
針への付け方にもコツがあります。太いドバミミズなら、1匹を針に通し刺しにします。一方、少し細めのミミズしかいない場合は、3〜4匹を束にして針に付ける「房掛け(ふさがけ)」が効果的です。ボリュームが出てうなぎへのアピール力が高まり、アタリの確率が格段に上がります。
その他の有効な餌(アケミ貝、アユの切り身など)
ドバミミズが手に入らない場合や、釣り場が海に近い河口域(汽水域)である場合には、他の餌も有効です。
- アケミ貝: 汽水域で特に効果が高いとされる餌です。殻を割って中の身を使います。
- アユの切り身: アユもまた、うなぎの好物の一つです。遡上アユがいる川では特効餌となることがあります。
- 活きハゼ: 釣った小さなハゼを活き餌として使う方法もあります。大物狙いの釣り師が好んで使う手法です。
しかし、初心者がまず最初に試すべきは、やはりドバミミズです。まずはこの最強の餌で、うなぎからのアタリを得る感覚を掴むことをお勧めします。
釣果は場所で決まる!うなぎが潜む一級ポイントの見つけ方

どんなに良い道具と餌を揃えても、うなぎのいない場所に仕掛けを投げ入れては釣れるはずがありません。うなぎが「どこに隠れ」「どこでエサを食べるのか」を理解することが、ポイント選びの鍵となります。
基本は河川の中流~河口域
うなぎは日本の多くの河川に生息していますが、特に数が多く、釣りやすいのは川の中流から下流、そして海と川の水が混じり合う河口域です。上流部にも生息しますが、堰(えんてい)などの魚の遡上を妨げる構造物があると、それより上では数が少なくなる傾向があります。
テトラポッドや橋脚などの「障害物」周りを狙え
うなぎのポイント選びで最も重要なキーワードは「障害物」です。日中、うなぎは敵から身を守るために、テトラポッド(消波ブロック)、水中に沈んだ岩(ゴロタ)、橋脚、護岸のえぐれといった物陰に隠れています。これらがうなぎの「家(隠れ家)」です。
そして夜になると、うなぎはこの「家」の近くに出てきてエサを探します。ここで初心者が陥りがちな間違いが、障害物のど真ん中に仕掛けを投げてしまうことです。これでは根掛かり(仕掛けが障害物に引っかかること)が多発してしまい、釣りになりません。
釣りの達人が狙うのは、障害物の「際(きわ)」です。つまり、うなぎの「家」のすぐ隣にある、砂地や泥地といった「食卓」に、そっと餌を届けてあげるイメージです。障害物から少しだけ離れた、根掛かりのしにくい場所にキャストすることで、隠れ家から出てきたうなぎに効率よくアピールできるのです。
流れの変化がある場所は見逃せない
川の流れが変化する場所も、一級ポイントとなり得ます。例えば、以下のような場所です。
- 川のカーブの外側: 流れが強く当たり、川底が深くえぐれていることが多いです。このような場所にはエサが溜まりやすく、うなぎも集まってきます。
- 流れ込み: 小さな支流が本流に合流する場所です。水流の変化がエサを運び込み、うなぎの絶好の待ち伏せポイントになります。
- 橋脚の周り: 橋脚が流れをさえぎることで、その下流側には流れの緩やかな場所(ヨレ)ができます。そこはうなぎにとって格好の休憩所兼エサ場となります。
安全第一!夜釣りのポイント選びで注意すべきこと
夜釣りは何よりも安全が最優先です。ポイントを選ぶ際は、必ず以下の点を確認してください。
- 足場の安定: ぬかるんでいたり、傾斜が急だったりする場所は避け、平坦で安定した足場を確保できる場所を選びましょう。
- 日中の下見: 初めての場所は、必ず明るい日中のうちに行き、地形や危険な箇所(深い溝やぬかるみなど)がないかを確認しておきましょう。
- 増水時の注意: 雨の後は絶好のチャンスですが、川の増水には細心の注意が必要です。危険を感じたら、絶対に川に近づかないでください。
うなぎ釣りの王道「ぶっこみ釣り」をマスターしよう
うなぎ釣りの最もポピュラーで、初心者にも簡単な釣り方が「ぶっこみ釣り」です。その名の通り、餌とオモリを付けた仕掛けをポイントに「ぶっこんで」、アタリを待つだけのシンプルな釣り方です。
初心者でも簡単!ぶっこみ釣りの仕掛け作り
ぶっこみ釣りの仕掛けは非常にシンプルで、自分で簡単に作ることができます。最も基本的な「中通し式仕掛け」の作り方は以下の通りです。
- 道糸(リールから出ている糸)を、中通しオモリの穴に通します。
- 次に、小さなプラスチック製のビーズ玉を道糸に通します。これは、オモリが結び目を傷つけるのを防ぐクッションの役割を果たします。
- 道糸の先端に「サルカン(ヨリモドシ)」という金具を結びつけます。
- サルカンのもう一方の端に、ハリス(針が結ばれている短い糸)を結びつければ完成です。
釣具店には、これらのパーツがすべてセットになった「うなぎ釣り仕掛けセット」も売られています。最初は市販のセットを使うのが、最も手軽で確実でしょう。
仕掛けの投入とアタリの待ち方
仕掛けが完成したら、いよいよポイントに投入します。
- 狙ったポイントめがけて、仕掛けを投げ込みます。
- オモリが川底に着底するのを待ちます。
- オモリが着いたら、リールをゆっくり巻いて、糸のたるみ(糸フケ)を取ります。竿先が少しだけ曲がるくらいに糸を張るのが目安です。
- 竿を竿立て(三脚など)に置き、竿先に鈴とケミホタルを取り付けます。
これで準備は完了です。あとは、うなぎがエサを見つけてくれるのを静かに待ちます。釣り場のスペースが許せば、複数の竿を出すことで、より広範囲を探ることができ、ヒット率を高めることができます。
アワセのタイミング:焦りは禁物!
鈴が鳴ると心臓が跳ねますが、ここで慌ててはいけません。うなぎのアタリには特徴的なパターンがあります。
- 前アタリ(まえあたり): 最初に「チリ…チリン…」と、小さく断続的なアタリが出ることが多いです。これは、うなぎがエサの端を咥えたり、様子を見たりしている段階です。
- 本アタリ(ほんあたり): その後、うなぎがエサを完全に飲み込み、移動しようとすると、「ジリリリリーン!」と鈴が激しく鳴り続け、竿先がググーッとお辞儀するように引き込まれます。これが本アタリです。
アワセ(竿を立てて針を魚の口に掛ける動作)を入れるのは、この本アタリが出てからです。前アタリで焦ってアワセてしまうと、エサだけ取られてしまう「すっぽ抜け」になることがほとんどです。じっくりと待ち、竿が大きく引き込まれるのを確認してから、力強く竿を立てて合わせましょう。
根掛かり対策:これでロストが激減する裏ワザ
うなぎ釣りの最大の敵、それが「根掛かり」です。根掛かりとは、仕掛けが水中の岩や障害物に引っかかって取れなくなってしまうこと。これを減らすことが、快適な釣りへの第一歩です。
- オモリの工夫: 回収時に浮き上がりやすい「ジェット天秤」や「海藻天秤」といった形状のオモリを使うと、手前の障害物をかわしやすくなり、根掛かりを大幅に減らすことができます。
- 仕掛けの工夫: 根掛かりが避けられない場所では、「捨て糸式」という仕掛けが有効です。これは、オモリを道糸よりも細い糸(捨て糸)で結ぶ方法です。もしオモリが根掛かりしても、捨て糸だけが切れて、針などの仕掛け本体は回収できる確率が高まります。
- 回収のコツ: うなぎが掛かった時も、根掛かりした仕掛けを回収する時も、とにかくリールを素早く巻くことが重要です。仕掛けが底をズルズルと引きずられる時間を短くし、オモリを浮き上がらせることで、障害物に引っかかるリスクを減らせます。
これらの対策を講じることで、仕掛けのロストを減らし、ストレスなく釣りに集中することができます。
釣った後が本番!天然うなぎを最高の味でいただくために

苦労して釣り上げた天然うなぎ。その価値を最大限に引き出し、最高の味でいただくためには、釣った後の処理が非常に重要になります。ここからは、持ち帰りから捌き方、そして最も重要なルールについて解説します。
ぬるぬる暴れるうなぎの安全な扱い方
釣り上げたうなぎは、体表の粘液で非常によく滑り、生命力も強いため、暴れてなかなか掴むことができません。このぬめりを制するには、乾いたタオルを使うのが最も効果的です。タオルでうなぎの胴体をしっかりと掴むことで、滑らずに保持できます。
針を外す際は、うなぎの歯に注意してください。素手で口の中に指を入れるのは危険です。必ずプライヤーなどの道具を使い、安全に針を外しましょう。釣れたうなぎは、蓋がしっかりと閉まるクーラーボックスやバケツに入れて持ち帰ります。
臭みを消して旨味を引き出す「泥抜き」の方法
天然うなぎを食べる際に気になるのが「泥臭さ」です。この臭みを取り除き、本来の旨味を引き出すために行うのが「泥抜き」という作業です。
- 泥抜きとは?: 釣ったうなぎを生きたまま、綺麗な水を入れた容器で数日間(平均3日〜7日)飼育し、絶食させることです。
- なぜ行うのか?: この作業の主な目的は、うなぎの消化管内に残っているフンや未消化のエサを完全に排出させることです。これにより、調理の際に内臓の臭みが身に移るのを防ぎます。ただし、うなぎの身に染み付いた「泥臭さ」そのものは、生息していた川の水質に由来するため、数日間の泥抜きで完全に消えるわけではない、という意見もあります。しかし、消化管内をクリーンにすることは、衛生的にも味の面でも非常に重要です。
- 具体的な方法: 大きめのクーラーボックスや衣装ケースなど、蓋ができる容器を用意します。水道水を使う場合は、カルキ(塩素)を抜くために、バケツに汲んで一晩外に置いておきましょう。そこにうなぎを入れ、観賞魚用のエアーポンプ(ぶくぶく)で酸素を送り続けます。水は毎日交換し、うなぎが排出した汚れを取り除いてください。
難関チャレンジ!うなぎの捌き方(開き方)入門
うなぎの捌きは、専門の職人がいるほど難しい技術ですが、ポイントを押さえれば家庭でも挑戦できます。ここでは初心者向けの簡略化した手順を紹介します。
- 仮死状態にする: 捌く前に、氷をたくさん入れた氷水にうなぎを30分ほど浸けます。これにより、うなぎは仮死状態(冬眠状態)になり、暴れなくなるため、安全かつ格段に捌きやすくなります。
- 固定する: まな板にうなぎの頭を固定します。専用の「目打ち」という千枚通しのような道具があればベストですが、なければ釘などを目の下の顎あたりに刺し、まな板に打ち付けて固定します。
- 開く(背開き): 関東風の「背開き」で挑戦してみましょう。頭の後ろから包丁を入れ、中骨に沿って尾の先端まで一気に切り開きます。切れ味の良い出刃包丁が理想ですが、意外にもよく切れるカッターナイフが初心者には扱いやすいという声も多くあります。
- 内臓と骨を取る: 開いたら、内臓を丁寧に取り除きます。その後、包丁を中骨の下に入れ、身を削がないように骨を剥がし取ります。腹部に残っている血合い(赤い筋)も、臭みの原因になるので綺麗にこすり落としましょう。
- ぬめりを取る: 最後に、皮目を上にしてまな板に置き、熱湯をさっとかけます。すると皮の表面のぬめりが白く固まるので、それを包丁の背などで優しくこそげ落とします。
これで下処理は完了です。あとは蒲焼きや白焼きなど、お好みの調理法で最高の天然うなぎを味わってください。
忘れてはいけない「遊漁券」のこと
最後に、うなぎ釣りを始める上で、絶対に知っておかなければならない最も重要なルールがあります。それが「遊漁券(ゆうぎょけん)」です。
日本の多くの河川では、その川を管理する「漁業協同組合(漁協)」が漁業権を持っており、アユやコイ、そしてうなぎなどの特定の魚種を釣るためには、漁協が発行する許可証、すなわち遊漁券の購入が法律で義務付けられています。
これを購入せずに釣りをすると、「密漁」という違法行為になり、罰金の対象となる可能性があります。遊漁券の収益は、稚魚の放流や河川環境の保全など、私たちが釣りを楽しむための資源を守る活動に使われています。
注意すべきは、ルールは全国一律ではないということです。遊漁券が必要な魚種や料金、販売場所は、川を管轄する漁協によって全く異なります。霞ヶ浦のように遊漁券が不要な水域もあれば、非常に厳しいルールが定められている川もあります。
したがって、釣りに行く前には、必ず釣りをしたい川の漁業協同組合のウェブサイトを確認するか、直接電話で問い合わせて、うなぎ釣りに遊漁券が必要かどうか、どこで購入できるかを確認してください。 これが、現代の釣り人としての最低限のマナーであり、責任です。
まとめ:ルールを守って、最高の天然うなぎを味わおう
本記事では、うなぎ釣りの魅力から、具体的な準備、釣り方、そして釣った後の処理に至るまで、初心者が知っておくべき全てを解説しました。
要点を振り返りましょう。
- タイミング: ベストシーズンは夏、特に雨が降って川が濁った後の夜が絶好のチャンス。
- 場所: 川の中流〜河口域にある、橋脚やテトラポッドなどの障害物の「際」を狙う。
- 道具と餌: 竿やリールは手持ちのものでOK。ただし、針は「うなぎ針」、餌は「ドバミミズ」が釣果への最短ルート。
- 釣り方: ぶっこみ釣りで、本アタリをじっくり待ってからアワセる。根掛かり対策も忘れずに。
- 釣った後: 泥抜きで臭みを取り、丁寧に捌いて最高の味を引き出す。
- 最も重要なこと: 安全を第一に考え、必ず釣行前に現地の「遊漁券」のルールを確認し、購入する。
うなぎ釣りは、手軽に始められる一方で、知れば知るほど奥が深い、魅力的な釣りです。ルールとマナーを守り、自然への感謝を忘れずに、あなた自身の力で最高の天然うなぎを釣り上げるという、忘れられない体験にぜひ挑戦してみてください。このガイドが、あなたの素晴らしい冒険の第一歩となることを願っています。