ようこそ、カサゴのルアー釣りの世界へ!手軽さと奥深さが魅力のターゲット

「ルアーで魚を釣ってみたいけど、何から始めればいいかわからない…」そんな風に感じている釣り入門者の方に、心からおすすめしたいのが「カサゴ釣り」です。カサゴは、関西では「ガシラ」、九州では「アラカブ」など、地域によって様々な愛称で親しまれている、日本全国の沿岸に生息する非常に身近な魚です。
この釣りの最大の魅力は、なんといってもその手軽さと、釣れる確率の高さにあります。カサゴは非常に食欲旺盛で、縄張り意識が強い魚です。目の前を通り過ぎるものには果敢にアタックしてくるため、初心者の方が多少ぎこちないルアー操作をしても、しっかりと応えてくれることが多いのです。初めてルアーを投げたその日に、竿先に伝わる明確な「ゴツン!」というアタリを体験できる可能性が非常に高い、それがカサゴ釣りです。
この「ゴツン!」というアタリは、一度味わうと病みつきになるほどの感動があります。この最初の一匹がもたらす成功体験は、釣りという趣味を長く楽しむための最高のモチベーションになるでしょう。カサゴ釣りは、釣りの楽しさの原点を教えてくれる、まさにルアーフィッシング入門に最適なターゲットなのです。
この記事では、そんなカサゴのルアー釣りを始めたいと考えているあなたのために、必要な知識をゼロから徹底的に解説します。カサゴの生態から、必要な道具(タックル)、釣れるポイントの見つけ方、そして具体的な釣り方まで、この記事を読めば、自信を持って最初のカサゴ釣りに挑戦できるようになるはずです。さあ、一緒にカサゴ釣りの奥深い世界への扉を開きましょう。
まずは敵を知る!カサゴの生態と習性

釣りにおいて「魚を知る」ことは、釣果への一番の近道です。なぜその場所にいるのか、何を食べているのか、どうやって獲物を捕らえるのか。カサゴの生態と習性を理解すれば、ルアーの選び方や動かし方の「なぜ」が分かり、釣りがもっと面白くなります。
棲み処:カサゴは「根魚」、隠れ家を見つけよう
カサゴは「根魚(ねざかな)」や「ロックフィッシュ」と呼ばれる魚の代表格です。その名の通り、海底にある「根」、つまり岩や障害物の周りを生活の拠点としています。具体的には、以下のような場所が彼らの大好きな棲み処です。
- 岩礁帯: 海底に岩がゴツゴツしているエリア。
- テトラポッド: 港を守るために積まれた消波ブロックの隙間。
- 堤防や岸壁の基礎: コンクリートの壁際や、その下に沈められた捨石(すていし)の間。
- ゴロタ浜: 大きめの丸い石が転がっている浜。
彼らはこれらの障害物を隠れ家として利用し、天敵から身を守りながら、獲物を待ち伏せしています。つまり、カサゴ釣りは「魚の群れを探す」というよりは、「カサゴが隠れていそうな障害物(ストラクチャー)を探す」ゲームと言えます。良い隠れ家を見つけることができれば、そこにカサゴがいる確率は非常に高いのです。
食性と習性:待ち伏せ型のハンター
カサゴは肉食性で、自分の隠れ家の近くを通りかかる獲物を大きな口で一気に丸呑みにします。主なエサは、エビやカニなどの甲殻類、そしてハゼやイワシの稚魚といった小魚です。
彼らの狩りのスタイルは、積極的に泳ぎ回って獲物を追いかけるのではなく、物陰にじっと潜んで待ち伏せる「アンブッシュ・プレデター」です。行動範囲は非常に狭く、強い縄張り意識を持っています。この習性が、カサゴ釣りの戦略の根幹を成します。つまり、広範囲をただやみくもに探るのではなく、一つの有望な隠れ家の前に、いかに的確に、そして美味しそうにルアーを送り込めるかが釣果を分ける鍵となるのです。
活動時間:昼も夜も狙える!
一般的に「カサゴは夜行性」と言われることが多く、実際に夜になると隠れ家から出てきて活発にエサを探し回ります。そのため、夜釣りはカサゴを狙う絶好のチャンスです。
しかし、だからといって昼間は釣れないわけではありません。むしろ、昼間のカサゴは天敵を避けるために、岩陰やテトラの隙間といった特定の隠れ家に密集している傾向があります。そのため、彼らの巣穴を直撃できれば、昼間でも「入れ食い」状態になることも珍しくありません。
初心者の方にとっては、足元がよく見えて安全な昼間の時間帯に、カサゴがいそうな場所をじっくり探る釣りから始めるのがおすすめです。昼と夜、それぞれの時間帯で少し戦略を変えることで、一日中カサゴ釣りを楽しむことが可能です。
これで完璧!カサゴルアー釣りの基本タックル(道具)

カサゴ釣りは、専用の高級な道具がなくても始められるのが魅力の一つです。しかし、基本的な道具の役割と選び方を知っておくことで、釣りが格段に快適になり、釣果もアップします。ここでは、初心者の方が最初に揃えるべき基本的なタックルを分かりやすく解説します。
ロッド(竿)とリール:ロックフィッシュゲームの相棒選び
ロッド(竿)
カサゴ釣りには、長さ6.5フィート~8フィート(約2m~2.4m)のルアーロッドがおすすめです。選ぶ際のポイントは二つあります。
- 繊細なティップ(穂先): カサゴの「コツコツ」という小さなアタリを感じ取れる、感度の良い穂先が重要です。
- 強いバット(根本部分): 魚を掛けた後、根(障害物)に潜り込もうとするカサゴを強引に引き剥がせる、根本部分のパワー(バットパワー)が必要です。
「ロックフィッシュ専用ロッド」が最適ですが、最初は「アジングロッド」や「メバリングロッド」といったライトゲーム用の竿や、「バスロッド」でも十分に代用可能です。
リール
リールは、スピニングリールの2000番~3000番サイズがロッドとのバランスも良く、扱いやすいでしょう。高価なモデルである必要はありませんが、糸の放出や巻き取りがスムーズに行えるものを選びましょう。
初心者向けのセット
釣具店では、竿とリールがセットになった入門者向けのセットも数多く販売されています。まずは予算を抑えて始めたいという方には、こうしたセット商品から選ぶのも良い選択です。
ラインシステム:根ズレに負けない糸の選び方と結び方
カサゴ釣りは岩やテトラなどの障害物周りを狙うため、ライン(釣り糸)が擦れて切れてしまう「根ズレ」が頻繁に起こります。そのため、根ズレに強いラインシステムを組むことが非常に重要です。
メインライン(リールに巻く糸)
初心者の方に最もおすすめなのがフロロカーボンラインです。
- フロロカーボンライン: 根ズレに非常に強く、しなやかで扱いやすいのが特徴です。太さは1.5号~3号(6lb~12lb)程度が標準です。何より、このラインをメインラインとして使えば、後述する「リーダー」を結ぶ必要がなく、リールからルアーまでを一本の糸で結ぶだけで済むため、準備が非常に簡単です。初心者が最初に直面する「糸と糸を結ぶ」というハードルを下げ、釣りに集中できるという大きなメリットがあります。
もう一つの選択肢としてPEラインがあります。
- PEライン: 伸縮性がなく感度が非常に高いのが特徴ですが、根ズレには弱いという欠点があります。そのため、PEラインを使用する場合は、必ず先端に根ズレに強いフロロカーボンの「ショックリーダー」を結ぶ必要があります。
ショックリーダー
PEラインを使用する場合に、その弱点である根ズレへの耐性を補うために先端に結ぶフロロカーボンラインのことです。太さは1.5号~2号(6lb~8lb)を1mほど結びます。PEラインとリーダーの結束には様々な方法がありますが、初心者の方は比較的簡単に覚えられる「トリプルエイトノット」などから試してみると良いでしょう。
リグとルアー:カサゴを誘う最終兵器
「リグ」とは、オモリやハリ、ルアーを組み合わせた仕掛け全体のことを指します。カサゴ釣りでは、根掛かりをいかに防ぐかが重要になるため、リグの選択が釣果を大きく左右します。
基本リグは2つ!根掛かりに強い「テキサスリグ」と手軽な「ジグヘッドリグ」
- テキサスリグ: 初心者の方に最もおすすめしたいリグです。バレット(弾丸)型のシンカー(オモリ)、ビーズ、オフセットフック、ワームを組み合わせて作ります。このリグの最大の特徴は、その圧倒的な根掛かり回避性能です。弾丸型のシンカーが障害物をすり抜けやすく、フックの針先をワームのボディに隠すことで、複雑な場所でも根掛かりを気にせず攻めることができます。カサゴ釣りの主流であり、これをマスターすれば一気に釣りの幅が広がります。
- ジグヘッドリグ: オモリとハリが一体化した「ジグヘッド」にワームを刺すだけの、最もシンプルなリグです。手軽に準備できるのが魅力ですが、ハリ先が剥き出しのため、テキサスリグに比べて根掛かりしやすいという弱点があります。堤防の壁際など、障害物が比較的少ない場所で、ルアーを真下に落として探るような釣りに向いています。根掛かりを減らすコツは、底が取れるギリギリの軽い重さのジグヘッドを選ぶことです。
ワーム選びが釣果を左右する!形状・サイズ・カラーの使い分け
ワームは、カサゴが普段食べているエサを模したソフトプラスチック製のルアーです。状況に合わせて使い分けることで、釣果に大きな差が出ます。
- 形状: 主に3つのタイプを揃えておくと、様々な状況に対応できます。
- クロー系・ホッグ系: エビやカニなどの甲殻類を模した形状。手足などのパーツが水中で複雑な波動を生み出し、ボトム(海底)をチョンチョンと跳ねさせるアクションで効果を発揮します。
- シャッドテール系: 小魚を模した形状で、お尻についた尾びれ(テール)がブルブルと震えてアピールします。ただリールを巻くだけでも魚を誘えるため、広範囲を探るのに適しています。
- グラブ系・カーリーテール系: 体はシンプルですが、くるんとカールしたテールが特徴。ゆっくりとした動きでもテールがヒラヒラとアピールし、食い渋るカサゴにも効果的です。
- サイズ: 2インチ~3インチ(約5cm~7.5cm)が基本となります。カサゴは口が大きい魚ですが、このサイズであれば小型から大型まで、幅広いサイズのカサゴにアピールできます。
- カラー: 状況によって反応の良い色が異なります。最低でも以下の3系統を揃えておくと良いでしょう。
- ナチュラルカラー(クリア、ウォーターメロンなど): 水が澄んでいる時や、日中の釣りで効果的です。
- アピールカラー(オレンジ、チャート、レッドなど): 水が濁っている時や、朝夕のマズメ時、曇りの日など、光量が少ない状況で目立たせたい時に使います。
- グロー(夜光)カラー: 夜釣りの必須カラー。光を吸収して暗闇で発光し、カサゴにルアーの存在を知らせます。
カサゴ狙いのおすすめワーム
タイプ | 代表的なワーム | 推奨サイズ | 特徴と有効な状況 |
甲殻類(クロー・ホッグ系) | エコギア バグアンツ | 2~3インチ | カニやエビを模した定番形状。パーツが複雑な波動を生み、フォール(落下)中やボトムでのステイ(静止)でもアピール。テキサスリグとの相性が抜群で、あらゆる状況で使える万能選手。 |
小魚(シャッドテール系) | バークレイ パルスワーム | 3インチ前後 | 小魚の動きをリアルに再現するテールが特徴。ただ巻き(スローリトリーブ)だけで広範囲を効率よく探れる。特に夜間や活性の高いカサゴを探すのに有効。独特の匂いで集魚効果も高い。 |
カニ特化型 | マルキュー パワークラブ | Mサイズ | 見た目も匂いもカニそのもの。カサゴの大好物であり、特にテトラの穴釣りや堤防のヘチ(際)に落とし込む釣りで絶大な効果を発揮する。エサに近い感覚で使えるワーム。 |
その他(グラブ系) | エコギア ロックマックス | 2~3インチ | 大きなカーリーテールが特徴。スローなリトリーブでもしっかりとテールが動き、波動でアピール。食いが渋い状況でもカサゴの捕食本能を刺激しやすい。 |
メタルジグ:デイゲームの秘密兵器
ワームの釣りに慣れてきたら、3g~7g程度の小さな金属製のルアー「マイクロメタルジグ」を試してみるのも面白いでしょう。キラキラとしたフラッシング効果と、ヒラヒラと落ちていくフォールアクションで、日中のリアクションバイト(反射的な食いつき)を誘うことができます。
どこにいる?カサゴが潜む一級ポイントの見つけ方
カサゴ釣りの成否は、ポイント選びで8割が決まると言っても過言ではありません。彼らが好む「隠れ家」を見つけ出すことができれば、釣れたも同然です。ここでは、初心者でも見つけやすい代表的な3つのポイントと、その攻め方を解説します。

テトラ帯:カサゴのマンションを攻略する「穴釣り」
堤防や海岸線に積まれたテトラポッドは、無数の隙間や穴があり、カサゴにとってはまさに一等地が並ぶ高級マンションのようなものです。ここでの釣り方は大きく分けて二つあります。
- 穴釣り: テトラポッドとテトラポッドの間の隙間に、ルアーを真下に落とし込んでいく釣り方です。暗くて深い穴ほど、良型のカサゴが潜んでいる可能性が高くなります。アタリがなければ次の穴へ、とテンポよく探っていくのがコツです。もし一匹釣れたら、同じ穴にもう一度ルアーを落としてみましょう。同じ穴に複数のカサゴが潜んでいることもよくあります。
- 外側を狙う: テトラポッド帯の外側の際に沿ってルアーをキャストし、テトラの上を探ってくる方法です。沖にいる活性の高い個体を狙うことができます。
【最重要】安全第一!テトラ帯での注意点
テトラポッドの上は非常に滑りやすく、海藻などが付着しているとさらに危険です。転倒や落水は重大な事故につながります。必ず、滑りにくい靴(スパイクシューズやフェルトスパイクブーツ)と、万が一の落水に備えてライフジャケットを着用してください。単独での釣行は避け、複数人で行動することを強く推奨します。
堤防・岸壁:足元に潜む大物を狙う
一見すると何の変化もないように見える堤防や岸壁も、カサゴにとっては絶好の隠れ家です。特に注目すべきは、単調な壁の中にある「変化」です。
- 壁際(キワ): 堤防の真下は、カサゴが身を寄せる定番ポイントです。足元にルアーを落とし、底まで沈めて探るだけで釣れることも少なくありません。
- 基礎石・捨石: 堤防の基礎部分には、波による浸食を防ぐために大きな石(捨石)が沈められています。この石と石の隙間は、カサゴの絶好の隠れ家です。
- ケーソンの継ぎ目: 堤防は、ケーソンと呼ばれる巨大なコンクリートの箱を繋げて作られています。その継ぎ目にはわずかな隙間があり、カサゴが好んで潜んでいます。
これらのポイントは、まさに足元に存在します。遠くに投げる必要はありません。堤防の上を歩きながら、数メートルおきに足元を探っていく「ラン&ガン」スタイルが非常に有効です。
ゴロタ浜・磯:広範囲を探ってアクティブな個体を見つける
「ゴロタ浜」とは、こぶし大から頭大の石がゴロゴロと転がっている海岸のことです。これらの石が水中にも続いており、カサゴにとってはテトラポッド同様、無数の隠れ家を提供してくれます。
ゴロタ浜や起伏の少ない磯では、広範囲を探る釣りが基本となります。ここでも「ラン&ガン」が有効な戦略です。数回キャストしてアタリがなければ、少し横に移動してまたキャストする、という動作を繰り返します。カサゴは縄張り意識が強く、あまり移動しないため、こちらから積極的に移動して、活性の高い個体を探し出すのです。この釣り方は、ポイントを自分の足で見つけ出す楽しみがあり、カサゴ釣りの醍醐味の一つと言えるでしょう。
これら3つのポイントは、それぞれ攻め方が異なります。テトラ帯では「縦の精度」、堤防では「線(エッジ)の攻略」、ゴロタ浜では「面の探索」が求められます。それぞれの地形の特性を理解し、それに合った攻め方を意識することで、釣果は格段に向上するはずです。
これで釣れる!カサゴルアー釣りの基本アクションと釣り方
ポイントを見つけ、タックルの準備ができたら、いよいよ実釣です。カサゴを誘い出すためのルアーアクションは、決して難しいものではありません。いくつかの基本パターンを覚えるだけで、すぐに釣果に結びつきます。ここでは、カサゴ釣りの基本となるアクションと、釣り方のコツを詳しく解説します。

カサゴ釣りの黄金律:基本は「ボトム(底)を丁寧に」
まず最初にマスターすべき最も重要なスキルは、ルアーが海底に着いた感覚「着底」を理解することです。カサゴはほとんどの時間を海底付近で過ごしているため、ルアーをしっかりとボトムまで送り届けることが釣りの第一歩となります。
ルアーをキャストした後、リールのベール(糸を放出する部分)を開けたままにしていると、ラインがスルスルと出ていきます。やがてラインの放出が止まり、ピンと張っていたラインがフワッと緩んだら、それが着底の合図です。この感覚を覚えることが、カサゴ釣りの上達に不可欠です。
マスターしたい3大アクション
カサゴの主なエサである小魚や甲殻類の動きをルアーで再現することが、カサゴの捕食スイッチを入れる鍵です。以下の3つのアクションは、それらの動きを模したもので、非常に効果的です。
リフト&フォール:誘いの王道
これは、ルアーを海底から持ち上げて(リフト)、再び落とす(フォール)動作を繰り返す、ロックフィッシュゲームで最も基本的なアクションです。
- ルアーをキャストし、着底させます。
- 竿先をゆっくりと、水平の位置から真上近くまで持ち上げ、ルアーを1mほどフワッと浮き上がらせます。
- 持ち上げた竿先を、今度はゆっくりと元の水平の位置まで戻します。この時、たるんだラインをリールで巻き取りながら、ラインを張りすぎず緩めすぎずの状態に保ち、ルアーを自然にカーブフォールさせます。
- 再び着底したら、数秒間ポーズ(停止)を入れ、アタリを待ちます。
- この動作を繰り返します。
カサゴのアタリは、このフォールの最中に集中します。ルアーがヒラヒラと落ちてくる様子は、弱ったエサに見え、カサゴにとって絶好の捕食チャンスとなるのです。
ボトムバンプ:エビやカニを演出
リフト&フォールよりも小さく、小刻みにルアーを跳ねさせるアクションです。海底でエビやカニがピョンピョンと逃げ惑う様子を演出します。
やり方は、着底後、竿先を「チョン、チョン」と軽く素早くあおるだけ。ルアーが底から10cm~30cmほど跳ね上がり、また着底するイメージです。この素早い動きが、カサゴのリアクションバイト(反射食い)を誘発します。特に、活性が低い時や、同じ場所で粘って釣りたい時に有効なテクニックです。
ただ巻き(スローリトリーブ):夜の必勝パターン
その名の通り、ルアーが着底した後、ただひたすらゆっくりとリールを巻くだけのアクションです。コツは、ルアーが底スレスレを泳いでくるような、非常に遅いスピードを保つこと。5秒でハンドル1回転くらいのイメージです。
この釣り方は、特に夜間に効果を発揮します。夜、活発になったカサゴが、自分の隠れ家から少し離れた場所を泳ぐ小魚を捕食するシーンを再現するのです。シャッドテール系のワームとの相性が抜群です。
根掛かりは怖くない!回避のコツと外れた時の対処法
カサゴ釣りにおいて、根掛かりは避けて通れないものです。しかし、根掛かりを恐れていては、カサゴの棲み処である障害物の奥を攻めることはできません。むしろ、「根掛かりする場所=良いポイント」と前向きに捉え、上手に対処する方法を覚えましょう。
- 回避のコツ:
- 根掛かりに強いテキサスリグを多用する。
- 底が取れる範囲で、できるだけ軽いシンカー(オモリ)を使う。
- 常に竿先を少し高めに保ち、ラインに角度をつけることで、障害物を乗り越えやすくする。
- 外し方のコツ:
- 根掛かりしたら、絶対に強く引っぱらないこと。強く引くと、さらに深く食い込んでしまいます。
- まずは、ラインを軽く張ったり緩めたりして、優しく揺さぶってみます。
- それでも外れない場合は、一度ラインを緩めてみましょう。潮の流れなどでルアーの向きが変わり、ポロっと外れることがあります。
- 魚が根に潜って動かなくなった場合も同様です。無理に引っ張らず、ラインを緩めてしばらく待つと、安心したカサゴが自分から出てくることがあります。
「ゴツン!」アタリからフッキング、そして根に潜らせないコツ
カサゴのアタリは非常に明確で、「ゴツン!」という衝撃や、急に重みが乗るような感覚で伝わってきます。アタリがあったら、慌てずに次の動作に移りましょう。
- アワセ(フッキング): アタリを感じたら、リールを巻いてラインのたるみを取り、竿を力強く、しかしスムーズに立てて、魚の口にハリを貫通させます。
- ゴリ巻き: フッキングが決まったら、一瞬の油断も禁物です。カサゴは掛かった瞬間に、全力で自分の隠れ家である根に潜り込もうとします。一度潜られてしまうと、引きずり出すのは非常に困難です。そのため、リールを力強く、素早く巻き続けて(通称:ゴリ巻き)、カサゴを根から一気に引き離すことが最も重要です。
この一連の動作がスムーズにできるようになれば、あなたも立派なロックフィッシュハンターです。
釣った後のお楽しみ!安全な持ち帰り方と注意点
念願のカサゴを釣り上げたら、次はその命を美味しくいただくための準備です。しかし、その前に知っておくべき重要な注意点があります。安全な取り扱い方法と、鮮度を保って持ち帰るためのコツを学びましょう。

要注意!カサゴの毒ヒレと安全なハンドリング
カサゴは美味しい魚ですが、取り扱いには注意が必要です。背ビレ、エラブタ(エラのフタ)、尻ビレには鋭いトゲがあり、これらには弱い毒が含まれています。刺されるとズキズキと痛み、腫れることがあるため、素手で直接触るのは非常に危険です。
釣れたカサゴを安全に取り扱うために、必ず「フィッシュグリップ」を使用してください。フィッシュグリップは、魚の下アゴを挟んで安全に持ち上げることができる道具で、カサゴ釣りの必須アイテムと言えます。
持ち帰って食べる予定のカサゴは、釣れたその場で危険なトゲをキッチンバサミなどで切り落としておくと、後の処理が非常に安全になります。切り落としたトゲにも毒は残っているので、釣り場に放置せず、きちんと持ち帰って処分しましょう。
鮮度を保つ「締め方」と持ち帰り方
魚の鮮度は、釣れた直後の処理で大きく変わります。難しい技術は必要ありません。初心者の方でも簡単にできて、効果が絶大な「氷締め」という方法を覚えましょう。
最も簡単で効果的な「氷締め」
氷締めとは、氷でキンキンに冷やした海水に魚を入れ、急激に体温を奪うことで鮮度を保つ方法です。
- 準備:
- 釣りに行く前に、クーラーボックスに板氷やロックアイスを多めに入れておきます。
- 釣り場に着いたら、水汲みバケツで海水を汲み、クーラーボックスに注ぎ入れ、「潮氷(しおごおり)」を作ります。海水は真水と違って0℃以下でも凍らないため、非常に効率よく魚を冷やすことができます。
- 手順:
- カサゴが釣れたら、すぐにフィッシュグリップで掴み、ハリを外します。
- そのままクーラーボックスの潮氷の中に投入します。
たったこれだけです。魚は冷たい潮氷の中で暴れることなく自然に絶命し、同時に体温が奪われるため、最高の鮮度を保つことができます。
持ち帰る時のポイント
釣りが終わって帰る際には、少しだけ工夫をしましょう。
- クーラーボックスの水抜き栓を開け、中の海水を全て抜きます。
- 魚が直接氷に触れていると、「氷焼け」といって身が変色したり水分が抜けすぎたりする原因になります。魚をビニール袋やジップロックに入れ、氷と直接触れないようにして持ち帰りましょう。
この一手間を加えるだけで、家に帰ってからも新鮮で美味しいカサゴ料理を楽しむことができます。
まとめ:カサゴ釣りで、最高の休日を
ここまで、カサゴのルアー釣りについて、その生態から道具、ポイント、釣り方、そして持ち帰り方まで、一通りの知識を解説してきました。
要点をまとめると、
- 魚を知る: カサゴは障害物に潜む、待ち伏せ型のハンター。
- 道具を揃える: 基本はロックフィッシュロッドとスピニングリール。初心者は根掛かりに強い「テキサスリグ」と、扱いやすい「フロロカーボンライン」から始めよう。
- 場所を探す: 「テトラ帯」「堤防・岸壁」「ゴロタ浜」が三大ポイント。障害物の周りを丁寧に探ろう。
- アクションを覚える: 基本は「ボトム(底)」。リフト&フォールやボトムバンプで、エサの動きを演出しよう。
- 安全に楽しむ: 毒ビレには要注意。フィッシュグリップは必須。釣った魚は「氷締め」で美味しく持ち帰ろう。
カサゴ釣りは、手軽に始められる一方で、ポイントの読みやルアーの選択、アクションの工夫など、知れば知るほど奥が深い、非常に魅力的な釣りです。何よりも、身近な場所で生命の駆け引きをダイレクトに感じられる興奮は、他では味わえないものがあります。
最後に一つだけ。カサゴは成長が比較的遅い魚と言われています。もし、あまりに小さなカサゴが釣れた時には、未来の楽しみのために優しくリリースしてあげることも、素敵なアングラーとしての心構えです。
さあ、これで準備は万端です。この記事で得た知識を手に、安全に気をつけて、最高の休日を過ごしに出かけてみてください。きっと、忘れられない一匹があなたを待っています。