解説
6月の秩父路は、新緑が目に鮮やかで、心地よい風が吹き抜ける最高の季節です。荒川上流の清らかな流れは、まさに渓流釣りのパラダイス。この記事では、釣りの経験がない初心者の方でも安心して楽しめるように、荒川上流(秩父漁業協同組合管内)でのイワナ・ヤマメ釣りの魅力、おすすめの釣り場、釣り方の基本から、必要な装備、ルールやマナー、そして安全対策に至るまで、余すところなく徹底解説します。さあ、美しい自然の中で、渓流の宝石たちとの出会いを求めて、忘れられない釣りの冒険に出かけましょう!
6月の荒川上流で出会える渓流の宝石たち

6月の荒川上流域は、雪代も落ち着き、水温も上昇し始めるため、渓流魚たちの活性が一気に高まる季節です。この時期に狙える主なターゲットは、イワナとヤマメ。どちらもその美しさと力強い引きで、多くの釣り人を魅了しています。
イワナ:源流の力強いファイター
イワナは、漢字で「岩魚」と書かれるように、岩陰に潜む習性があります。冷涼な水を好み、主に渓流の最上流部から源流域にかけて生息しています。6月になると、雪解け水の影響も少なくなり、水生昆虫や陸生昆虫を盛んに捕食するため、非常に活発になります 。特に秩父のイワナは、体表に鮮やかなオレンジ色の斑点をまとい、その野性味あふれる姿は圧巻です 。力強い引きも魅力で、一度その手応えを味わうと病みつきになることでしょう。
ヤマメ:清流の美しい女王
ヤマメは、パーマークと呼ばれる楕円形の斑紋が体側に並ぶ、非常に美しい魚です 。イワナよりもやや下流の渓流域から中流域にかけて多く生息し、流れの速い瀬や淵、トロ場など、様々な場所に潜んでいます 。6月はヤマメにとっても活動期。水生昆虫や落下昆虫を積極的に追いかけ、時には水面を割って餌に飛びつく姿も見られます 。その流麗な姿とシャープな引きは、まさに「清流の女王」の名にふさわしい風格です 。
厳選!荒川上流(秩父漁協管内)6月のおすすめ釣り場

荒川上流域には、初心者からベテランまで楽しめる魅力的な釣り場が数多く点在します。ここでは、特に6月におすすめの代表的な釣り場を、アクセスや駐車場の情報と合わせてご紹介します。ご自身のレベルや狙いたい魚種、当日の状況などを考慮して、最適なポイントを選んでみましょう。
大洞川(おおぼらがわ):野性味あふれるイワナの宝庫
秩父の源流部に位置する大洞川は、手つかずの自然が残る美しい渓谷相の河川です 。透明度の高い淵が多く、川底まで見通せるほど水が澄んでいます 。6月になると雪解けも落ち着き、水量が安定してくるため、釣りがしやすくなります。主なターゲットは、野性味あふれるイワナで、時には25cmを超える良型も期待できます 。林道を長く歩く必要があるためアクセスはやや大変ですが、その分、魚のコンディションは抜群です 。
- アクセス・駐車場: 関越自動車道花園ICから国道140号で荒川方面へ。浦山ダムを過ぎ、大峰トンネルを抜けると入川と滝川の合流点に至ります 7。大洞林道には駐車スペースがありますが、落石などに注意が必要です 。
中津川(なかつがわ):里川と渓谷の魅力
中津川は、里川の穏やかな雰囲気と、奥秩父の険しい渓谷相の両方を楽しめる変化に富んだ川です 。ヤマメやイワナが主なターゲットとなります。上流部には「奥秩父源流中津川渓流釣場」という管理釣り場もあり、初心者や家族連れでも気軽に釣りや川遊び、バーベキューなどが楽しめます 。自然渓流区間も魚影が濃く、じっくりと攻める価値があります。
- アクセス・駐車場: 関越自動車道花園ICから国道140号を秩父・大滝方面へ。県道210号線に入ると中津川エリアです 。管理釣り場には50台程度の駐車場があります 。自然渓流区間では、駐車スペースが限られるため、交通の妨げにならないよう配慮しましょう。
入川(いりかわ):源流の秘境ムード
荒川の最源流部に位置する入川は、まさに秘境といった趣のある美しい渓流です 。苔むした岩や原生林に囲まれた流れは、釣り人を日常の喧騒から解き放ってくれます。ここでは、濃いオレンジ色の斑点が特徴的な「秩父イワナ」との出会いが期待できます 。入川渓流観光釣場の駐車場を利用し、そこから上流へ釣り上がるのが一般的です 。整備された登山道もありますが、熊の目撃情報もあるため、熊鈴などの対策は必須です 。
- アクセス・駐車場: 関越自動車道花園ICから国道140号で秩父方面へ。大峰トンネルを抜けてすぐ入川林道へ左折し、約2km進むと入川渓流観光釣場があります 。駐車料金は500円程度です 。
その他の有望河川
上記以外にも、秩父漁協管内には魅力的な支流が数多くあります。
- 小森川(こもりがわ): 両神山を源流とし、比較的開けた流れでヤマメが狙えます。川塩集落から上流域が実績の高いエリアです。
- 薄川(すすきがわ)/横瀬川(よこぜがわ): 小森川よりやや水量が少なく、道路沿いで入渓しやすいため初心者にもおすすめです。ヤマメが主体です 。
- 浦山川(うらやまがわ): 秩父漁協管内でもメジャーな河川で、放流量も多いです。浦山ダムのバックウォーターから釣りが可能で、ヤマメやイワナが狙えます 7。
これらの河川も、それぞれに特徴があり、訪れるたびに新しい発見があるでしょう。
初心者でも安心!荒川上流の渓流釣りスタイル徹底解説

渓流釣りにはいくつかのスタイルがあります。それぞれに魅力があり、使う道具やテクニックも異なります。ここでは、初心者の方にも分かりやすく、代表的な釣り方をご紹介します。
餌釣り入門: 自然の恵みで誘う
渓流釣りの最も基本的なスタイルが餌釣りです。川に生息する川虫や、ミミズ、イクラなどを使って魚を誘います。自然の餌を使うため、魚の食いが良いことが多いのが特徴です。
- 基本的なタックル(道具):
- 竿(さお): 5.3m~7m程度の渓流竿。初心者は扱いやすい6m前後の小継ぎ竿がおすすめです 。
- 仕掛け: 竿の先端からハリまでを1本の道糸で通し、目印とオモリを付けたシンプルな「ミャク釣り」仕掛けが基本です 4。道糸は0.2号~0.4号程度、ハリスは道糸よりやや細めが良いでしょう 。
- 目印: 流れの中でアタリ(魚が餌に食いついた反応)を見やすくするためのもの。オレンジやピンクなど視認性の良いものを選びます 。
- オモリ: ガン玉の3B~5B程度を流れの速さに応じて使い分けます。餌を自然に川底近くへ沈めるのがコツです 。
- ハリ: ヤマメバリやイワナバリの4号~7号程度。餌の大きさに合わせます 。
- おすすめの餌:
- 川虫(かわむし): キンパク、ヒラタカゲロウ、クロカワムシなど、釣り場の川底の石をめくると採集できます 。魚が普段食べている餌なので非常に効果的です。6月頃はピンチョロ(大型のカワゲラの幼虫)も良い餌になります 。
- 市販の餌: ブドウ虫、ミミズ、イクラなども手軽で効果的です 。特に放流直後の魚にはイクラやブドウ虫が効きやすいです 。
- 基本的な釣り方:
- 下流から上流へ、ポイントのやや上流に仕掛けを振り込み、餌が自然に流れるように竿を操作します 。
- 目印の動きに集中し、止まったり、沈んだり、不自然な動きをしたらアワセ(魚の口にハリを掛ける動作)を入れます 。
- アワセは竿をゆっくりと立てるように行い、魚が掛かったら竿の弾力を活かして慎重に取り込みます 。
餌釣りは、自然の中で餌を探す楽しみもあり、奥深い釣りです。川虫を採集する際は、石を元に戻すなど、環境への配慮も忘れずに。
ルアーフィッシング入門: 自在な攻めが魅力
ルアーフィッシングは、金属やプラスチックでできた疑似餌(ルアー)を使って魚を釣る方法です。様々な種類のルアーを使い分け、魚のいるポイントを積極的に攻めるのが特徴です。
- 基本的なタックル(道具):
- 竿(ロッド): 4フィート後半~5フィート前半程度の渓流用ルアーロッド(UL~Lクラス)が扱いやすいでしょう 。
- リール: 1000番~2000番クラスのスピニングリール 。
- ライン: ナイロンラインなら3lb~5lb、PEラインなら0.3号~0.6号程度に、リーダーとしてフロロカーボンラインの4lb~6lbを結びます 。
- 6月におすすめのルアー:
- ミノー: 小魚を模したルアー。4cm~5cm程度のシンキングミノーやヘビーシンキングミノーが主流です 27。カラーは、アユやヤマメなどのナチュラル系、視認性の良いチャート系やピンクバック、濁り時に強いキンクロなどを用意しておくと良いでしょう 。
- スプーン: 金属製のシンプルなルアー。2g~5g程度。流れの中でヒラヒラと泳ぎ、光を反射して魚にアピールします 。
- スピナー: 回転するブレードが付いたルアー。ブレードの回転と波動で魚を誘います。
- 基本的な釣り方:
- ポイントのやや上流や対岸に向けてキャストし、ルアーをリールで巻きながら泳がせます。
- ミノーの場合は、竿先を小さくチョンチョンと動かす「トゥイッチング」というアクションで、弱った小魚の動きを演出すると効果的です 。
- 岩陰や流れのヨレ、深みなど、魚が潜んでいそうな場所を丁寧に探ります。
ルアーフィッシングは、タックルが比較的コンパクトで手返しが良いのがメリットです。美しい渓魚がルアーに果敢にアタックしてくる瞬間は、エキサイティングそのものです。
テンカラ入門: シンプルイズベストな日本の伝統釣法
テンカラは、竿、ライン、毛鉤(けばり)だけの非常にシンプルな仕掛けで楽しむ日本の伝統的な毛鉤釣りです。そのシンプルさゆえに奥深く、近年再び注目を集めています。
- 基本的なタックル(道具):
- 竿(さお): 3m~3.6m程度のテンカラ竿。初心者は扱いやすい長さから始めると良いでしょう 。
- ライン: レベルライン(フロロカーボンの単糸、3号~4号程度)か、テーパーライン(ナイロン製で先端が細くなっている)を使います。ラインの長さは竿と同じか、少し長めが一般的です 。
- ハリス: フロロカーボンかナイロンの0.6号~1.2号程度を1mほど接続します 。
- 毛鉤(けばり): 鳥の羽などで作られた伝統的な和式毛鉤。
- 6月におすすめの毛鉤パターン:
- シンプルな逆さ毛鉤(さかさけばり)は定番です。
- 色は黒、茶、黄、灰色などが基本 。
- 6月に活発になるカゲロウやトビケラ、小型の陸生昆虫を模したパターンも有効です。「早掛け逆さ毛ばりコック/グリズリー」や「クイル胴毛ばりマーチブラウン」のようなものが市販されています 。
- 基本的な釣り方:
- 竿のしなりを利用して、リズミカルにラインと毛鉤をポイントへ振り込みます。毛鉤を水面にソフトに着水させるのがコツです 。
- 毛鉤を流れに乗せて自然に漂わせたり、竿先で微妙な誘いをかけたりして魚を誘います。流す距離は30cmから長くても80cm程度と、比較的短い距離でアタリを待ちます 。
- アタリは、ラインの先端の動きや、水面の毛鉤が引き込まれるのを見て取ります。
- 毛鉤釣りに関する注意点: 過去には、アユの稚魚保護のために4月1日から6月30日まで毛鉤釣りが制限され、フライフィッシングのみ許可されるという規則があった時期もありました 。しかし、秩父漁業協同組合の最新の遊漁規則(令和6年1月1日施行)では、イワナ・ヤマメを対象とした一般的な渓流釣りにおいて、テンカラを含む毛鉤釣りを名指しで禁止する記述は見当たりません 。特定のC&R区間ではテンカラが明確に許可されています 。したがって、上流域でイワナ・ヤマメを狙う場合、テンカラは基本的に「釣り」の一種として認められると考えられます。ただし、釣り場によってはアユ保護などのためのローカルルールが別途設定されている可能性もゼロではないため、現地の看板や漁協からの最新情報には常に注意を払いましょう。
テンカラはその手軽さと、魚とのダイレクトなやり取りが魅力です。
フライフィッシング入門: 優雅に毛鉤を操る(紹介程度)
フライフィッシングは、専用の竿、リール、ラインシステムを使い、自重のほとんどないフライ(西洋式の毛鉤)を遠くへ飛ばして魚を釣る方法です。テンカラと似ていますが、より遠くのポイントを狙えたり、多彩なフライを使えたりする点が異なります。
- 基本的なタックル(道具):
- 竿(ロッド): 7.5フィート~8.5フィート、#3~#4番程度のフライロッドが日本の渓流では一般的です 。
- リール: フライラインを収納し、魚とのやり取りでドラグ(ブレーキ)を効かせるためのフライリール。
- ライン: ロッドの番手に合わせたフライライン(WFラインやDTラインなど) 。
- リーダー&ティペット: フライラインの先に接続するテーパー状のリーダー(例:9フィート 4X~5X)と、さらにその先に結ぶ細いティペット 。
- 6月におすすめのフライパターン:
- ドライフライ(水面): エルクヘアカディス(トビケラ模倣)、パラシュートアダムス(カゲロウ模倣)、アント(アリ模倣)、ビートル(甲虫模倣)など。6月は陸生昆虫も活発になります 。
- ニンフ(水中): フェザントテールニンフ、ヘアズイヤーニンフなど、水生昆虫の幼虫を模したフライ 。
- 基本的な釣り方(概要):
- 独特のキャスティング技術でフライをポイントへ運び、自然に流して魚を誘います。水面に浮かせたドライフライに魚が飛びつく瞬間は格別です。
フライフィッシングは奥が深く、キャスティングの習得など、やや敷居が高い面もありますが、その優雅さと戦略性の高さから多くの釣り人を虜にしています。都心から1時間半程度で行ける場所にフライショップが併設された管理釣り場などもあるので、最初はそういった場所で教えてもらうのも良いでしょう 。
表1: 初心者向け釣り方別タックル早見表
釣り方
竿(おすすめ)
リール(該当する場合)
道糸/ライン
ハリス/リーダー/ティペット
おすすめ仕掛け/ルアー/毛鉤/フライ (6月)
餌釣り
5.3m~6m渓流竿 (小継ぎ)
なし
ナイロン/フロロ 0.2~0.4号
ハリス: 道糸よりやや細め (例: 0.15~0.3号)
ミャク釣り仕掛け。餌: 川虫 (キンパク、ヒラタ、ピンチョロ)、ブドウ虫、イクラ
ルアー
4.5ft~5.5ft UL~Lクラス 渓流ロッド
1000~2000番スピニングリール
ナイロン 3~5lb または PE 0.3~0.6号
リーダー: フロロカーボン 4~6lb
ミノー (4-5cm シンキング/ヘビーシンキング、アユ・ヤマメカラー、チャート、ピンクバック、キンクロ)、スプーン (2-5g)
テンカラ
3m~3.6m テンカラ竿
なし
レベルライン (フロロ 3~4号) またはテーパーライン (ナイロン)
ハリス: フロロ/ナイロン 0.6~1.2号 約1m
逆さ毛鉤、普通毛鉤。色: 黒、茶、黄、灰色。カゲロウ、トビケラ、陸生昆虫模倣パターン
フライ (入門)
7.5ft~8.5ft #3~#4 フライロッド
フライリール (ロッド番手に適合)
WFまたはDT フライライン (ロッド番手に適合)
リーダー: 9ft 4X~5X テーパーリーダー。ティペット: リーダーに適合する太さ
ドライ: エルクヘアカディス、パラシュートアダムス、アント。ニンフ: フェザントテール、ヘアズイヤー
準備万端!渓流釣りの基本装備と服装

快適で安全な渓流釣りを楽しむためには、適切な装備と服装が欠かせません。
必須の釣り道具
- 選んだ釣り方のタックル一式: 上記「釣り方別タックル早見表」を参考に、竿、リール(必要な場合)、ライン、仕掛け、ルアーや毛鉤などを準備しましょう。
- ランディングネット(タモ): 釣れた魚を安全に取り込むために必須です。特に魚をリリースする場合は、魚へのダメージが少ないラバーネットなどがおすすめです 。
- フィッシングベストまたはバッグ: 細かい道具(仕掛け巻き、ハリス、オモリ、ルアーケース、毛鉤ケース、ラインカッター、フォーセップなど)を機能的に収納し、すぐに取り出せるようにするために便利です 。
- クーラーボックス: 釣った魚を持ち帰る場合(サイズや尾数制限は必ず守りましょう)や、飲み物、軽食を保冷するために役立ちます。
服装とウェーディングギア
- ウェーダー: 川の中を歩くために必要です。胸まで覆うチェストハイタイプが汎用性が高くおすすめです 。素材は、動きやすく蒸れにくい透湿防水素材のものか、水温が低い時期には保温性の高いネオプレーン製が良いでしょう。6月であれば透湿素材が快適です。
- ウェーディングブーツ: ウェーダーの足先(ソックスタイプの場合)の上から履く専用の靴です。靴底は、滑りやすい川底でグリップ力を発揮するフェルト底か、ラバー底にスパイクが付いたものなどがあります。
- 服装(レイヤリング): 山の天気は変わりやすいため、重ね着(レイヤリング)で体温調節ができるようにしましょう 。速乾性のあるベースレイヤー(肌着)、保温性のあるミドルレイヤー(フリースなど)、そして防水透湿性のあるアウタージャケット(レインウェア)が基本です。
- 帽子: 日差しを避け、頭部を保護するために必ず着用しましょう。広いつばのものがおすすめです。
- 偏光サングラス: 水面のギラつきを抑え、水中を見やすくするだけでなく、飛んでくるルアーや木の枝から目を守るためにも非常に重要です。
その他役立つアイテム
- 虫除けスプレー: ブヨや蚊などの虫が多いので必須です。
- 日焼け止め: 標高が高い場所や水辺は紫外線が強いです。
- 救急セット: 万が一の怪我に備えて、絆創膏や消毒液などを用意しておくと安心です 。
- 飲み物と軽食: 水分補給はこまめに行いましょう。
- ヘッドランプまたは小型ライト: 朝夕まずめ時や、万が一暗くなってしまった場合に備えて。
- タオル: 手を拭いたり、濡れたものを拭いたりするのに便利です。
- 熊鈴・熊スプレー: (安全対策の項で後述)。
これらの装備をしっかりと準備することで、より安全で快適な釣りを楽しむことができます。特に偏光サングラスは、水中の魚や地形を見やすくするだけでなく、目の保護にも繋がるため、初心者の方にもぜひ用意していただきたいアイテムです。
荒川水系のルールとマナー: 気持ちよく釣りを楽しむために

美しい荒川の自然を守り、誰もが気持ちよく釣りを楽しむためには、ルールとマナーを守ることが非常に大切です。
必ず購入!遊漁券について
荒川水系で釣りをするには、管轄する秩父漁業協同組合が発行する**遊漁券(入漁券)**の購入が義務付けられています 。遊漁券の収益は、魚の放流事業や河川環境の整備などに充てられ、豊かな釣り場を維持するために役立っています 。無券での釣りは密漁となり、罰則の対象となるため、必ず事前に購入しましょう 。
- 購入場所:
- 秩父漁業協同組合の事務所
- 管轄エリア内の釣具店
- 一部のコンビニエンスストア(セブンイレブンなど)
- オンライン遊漁券販売サービス「つりチケ」などで取り扱いがある場合もあります 。
- 漁場監視員から現場で購入することも可能ですが、割高な「現場売り料金」となる場合がほとんどです 。事前に購入するのが断然お得です 。
- 種類と料金(2024年情報) 52:
- 日釣券(店売り): 2,500円
- 日釣券(現場売り): 5,000円
- 渓流年鑑札(要写真): 9,000円(アユ・ワカサギを除く魚種)
- 甲種年鑑札(要写真): 14,000円(全魚種)
- 料金や券種は変更される可能性があるため、釣行前に必ず秩父漁業協同組合の公式情報をご確認ください(問い合わせ先: 0494-22-0460 )。
- 遊漁券の携帯・提示: 購入した遊漁券は、釣りをしている間、必ず見える場所(帽子やベストなど)に装着し、漁場監視員から提示を求められた際にはすぐに見せられるようにしておきましょう 。
秩父漁業協同組合の規則を守ろう
秩父漁業協同組合では、水産資源の保護と釣り場の秩序維持のため、様々な遊漁規則を定めています 。
- 遊漁期間:
- イワナ・ヤマメなどの渓流魚の遊漁期間は、例年3月1日から9月30日までとされています 。2024年も3月1日に解禁されました 。
- ただし、特定の魚種やエリア(C&R区間など)によっては、冬季にもニジマス釣りなどが楽しめる場合があります 。
- 必ず釣行前に、秩父漁業協同組合の公式ウェブサイトやブログ、現地の掲示などで最新の情報を確認してください 。漁協によっては遊漁期間が変更されることもあります 。
- 禁漁区域:
- 魚類の産卵場保護などのため、河川の一部区間が禁漁区として設定されている場合があります。これには、源流域の一部や特定の支流、ダムの上下流、魚道周辺などが含まれます 。禁漁区には通常、標識が設置されていますので、注意深く確認し、絶対に釣りをしないようにしましょう。
- キャッチ&リリース(C&R)区間:
- 一部の河川や区間では、釣った魚の持ち帰りを禁止または制限し、再放流(リリース)を義務付けるキャッチ&リリース(C&R)制度が導入されています 。
- C&R区間では、魚へのダメージを最小限に抑えるため、バーブレスフック(カエシのないハリ)の使用が義務付けられていることがほとんどです 。バーブレスフックは魚からハリを外しやすく、魚の生存率を高めます。C&R区間以外でも、魚を優しくリリースしたい場合には積極的に使用しましょう。
- サイズ制限と持ち帰り尾数制限:
- 持ち帰りが許可されている魚種や区域であっても、一定のサイズに満たない小さな魚(例えば、マス類15cm以下など )の持ち帰りは禁止されています。
- また、1日に持ち帰れる魚の数にも制限が設けられています(例えば、マス類は1人1日30尾以内など )。
- これらの制限は、魚種や区域によって異なる場合があるため、必ず最新の遊漁規則で確認し、厳守してください 。貴重な資源を守るために、必要以上の持ち帰りは控えましょう。
- 釣り方の制限:
- 秩父漁業協同組合の遊漁規則(令和6年1月1日施行)第5条第5項には、「釣りについては、組合が定めて公表した漁具・漁法以外の漁具・漁法を使用して遊漁をしてはならない」と定められています 。しかし、この規則本文中には、具体的に許可または禁止される漁具・漁法の詳細なリストは明記されていません。
- 一般的に、6月の荒川上流域でイワナ・ヤマメを狙う場合、餌釣り、ルアーフィッシング、テンカラ、フライフィッシングは「釣り」の範疇として認められています。
- 過去には、アユの稚魚保護を目的として、4月1日から6月30日まで「毛針釣り(テンカラを含む可能性あり)」が制限され、「フライ釣りのみ可」とされた時期もありました 。この情報は古い規則に基づくものであり、現在のイワナ・ヤマメ釣りとは状況が異なる可能性があります。
- 最新の一般渓流魚向けの遊漁規則 には、このような6月末までの毛針釣り禁止の記載はなく、むしろ特定のC&R区間ではテンカラやフライフィッシングが明確に許可されています 。
- したがって、6月に上流域でイワナ・ヤマメをテンカラで狙う場合、基本的には問題ないと考えられますが、アユの保護に関する特別な規制が局所的に設けられている可能性も考慮し、釣り場の看板や漁協からの最新の告知には常に注意を払うようにしましょう。不明な点は、秩父漁業協同組合に確認するのが最も確実です。
釣り人としての基本マナー
- 先行者優先: すでに他の釣り人がいるポイントに割り込んだり、すぐ上流や下流に入ったりするのはマナー違反です。特に渓流では下流から上流へ釣り上がるのが基本なので、先行者がいる場合は声をかけるか、十分な距離をとってから釣りを始めましょう 。
- 静かに釣りをする: 大声で騒いだり、むやみに物音を立てたりすると、魚が警戒して釣れなくなるだけでなく、他の釣り人や自然環境にも迷惑がかかります 。
- ゴミは必ず持ち帰る: 釣り糸の切れ端、空き缶、弁当の容器など、自分が出したゴミは全て持ち帰りましょう。美しい釣り場を未来に残すために、最も基本的なマナーです 。
- 駐車: 指定された駐車スペースを利用するか、交通の妨げにならない、地域住民の迷惑にならない場所に駐車しましょう 。
- 魚の扱い: 釣れた魚、特にリリースする魚は優しく扱いましょう。濡らした手で触る、水から出す時間を最小限にするなど、魚へのダメージを極力減らすように心がけます 。
- 私有地の尊重: 釣り場周辺には私有地がある場合もあります。無断で立ち入ったり、作物を荒らしたりしないように注意しましょう。
表2: 秩父漁業協同組合 主な遊漁ルール早わかり(2024年情報参考)
項目
内容(主なもの)
注意点(初心者向け)
遊漁券
・日釣券(店売): 2,500円・日釣券(現場売): 5,000円・渓流年鑑札: 9,000円・甲種年鑑札: 14,000円(上記は2024年料金 )・購入場所: 漁協、釣具店、コンビニ、オンライン等
必ず事前に購入しましょう。現場売りは割高です。見える場所に装着してください。
禁漁期間・区域
・渓流魚: 通常3月1日~9月30日 ・禁漁区: 源流域、産卵場、ダム上下流、魚道付近等 。標識で表示。
最新の期間・区域情報を漁協HP等で確認。禁漁区には絶対に入らないこと。
C&Rルール
・指定区間では再放流義務あり。・バーブレスフック使用が推奨または義務 。
C&R区間ではルールを厳守。魚は優しくリリースしましょう。
サイズ・持ち帰り制限
・マス類: 全長15cm以下はリリース 。・1日の持ち帰り尾数制限あり (例: マス類30尾以内 )。
釣った魚のサイズを測り、規定以下のものはリリース。持ち帰り尾数も守りましょう。C&R区間では持ち帰り不可の場合が多いです。
主な許可釣法
・イワナ・ヤマメ対象: 餌釣り、ルアー、テンカラ、フライフィッシングは一般的に「釣り」として許可 。・組合が別途公表する漁具・漁法制限に従う必要あり。
特定の場所や時期(アユ保護等)で制限がある場合も。現地の看板や漁協の最新情報を確認。
これらのルールとマナーを守り、自然への感謝の気持ちを忘れずに釣りを楽しみましょう。
安全第一!荒川上流釣行の注意点

渓流釣りは自然の中で行うアクティビティであり、常に危険が伴います。安全に楽しむために、以下の点に十分注意してください。
天候と川の状況
- 天候の急変: 山の天気は非常に変わりやすいです。釣行前には必ず天気予報を確認し、釣行中も空模様に注意しましょう 。雨具は必携です。
- 増水: 短時間の雨でも川の水位が急激に上昇することがあります 。水が濁り始めたり、水位が上がってきたと感じたら、すぐに川から上がり、安全な場所に避難してください。
- 雨天時のリスク: 雨や沢の音は人の気配を消しやすく、熊が人に気づきにくい状況になるため、遭遇リスクが高まる可能性があります 。
足元と渡渉(としょう)
- 滑りやすい川底: 川底の石は苔で滑りやすくなっています。一歩一歩慎重に、足元を確認しながら移動しましょう 。ウェーディングスタッフ(杖)があると安定感が増します。
- 安全な渡渉: 川を渡る際は、流れの緩やかな浅瀬を選び、必ず上流側に体を向けてください 。万が一流された場合に備え、ウェーダーのベルトは外しておくか、緩めておくと良いでしょう。無理な渡渉は絶対に避けましょう。
熊との遭遇対策
秩父の山中にはツキノワグマが生息しています。特に6月~7月はクマの活動が活発になる時期でもあり、釣り人も注意が必要です 。
- 音を出す: 熊鈴を携帯したり、時折声を出したり、手を叩いたりして、自分の存在を熊に知らせましょう 。
- 食べ物の管理: 食べ物の匂いは熊を引き寄せます。食べ物は密閉容器に入れ、食べ残しやゴミは必ず持ち帰りましょう 。釣り場での食事も、匂いが広がらないように注意が必要です。
- 周囲への警戒: 熊のフンや足跡など、痕跡がないか注意しましょう。
- 遭遇してしまったら:
- 落ち着いて行動する: 大声を出したり、背中を見せて走って逃げたりしてはいけません。熊を刺激します。
- ゆっくり後退する: 熊から目を離さず、ゆっくりと後ずさりして距離を取りましょう 。
- 大きく見せる: 可能であれば、荷物を高く掲げるなどして自分を大きく見せます。
- 熊スプレー: 携帯している場合は、最終手段として使用方法を事前に確認しておきましょう。
- 熊は6月~7月が繁殖期で活発に行動するため、この時期に山に入る際は特に注意が必要です 。
ダム放流の警報
荒川水系にはダムが設置されている箇所があります。ダムからの放流が行われる際には、サイレンで警告が出されます。サイレンが聞こえたら、直ちに川から上がり、高台へ避難してください 。放流による水位上昇は非常に急激で危険です。
ライフジャケット/フローティングベスト
万が一の落水に備え、ライフジャケットやフローティングベストを着用することを強く推奨します。特に初心者の方や、流れの速い場所、水深のある場所に入る場合は必須です 。
単独釣行は慎重に
できる限り複数人で釣行し、万が一の際に助け合えるようにしましょう 。やむを得ず単独で釣行する場合は、必ず家族や友人に、釣行場所、帰宅予定時刻などを詳しく伝えておきましょう 。
道に迷わないために
慣れない場所では道に迷う危険もあります。入渓点や退渓点をしっかり確認し、目印となるものを覚えておきましょう。不安な場合は、目印としてテープなどを木に結び付け(帰りに必ず回収する)、道に迷わないようにする工夫も有効です 。
安全対策を怠らず、無理のない計画で釣りを楽しみましょう。
釣った魚を美味しくいただくには?

ルールを守って釣った魚を持ち帰る場合、その新鮮な恵みを美味しくいただくのも渓流釣りの醍醐味の一つです。ただし、荒川上流ではキャッチ&リリースが推奨される区間や魚種もあるため、まずは現地のルール確認が最優先です。
持ち帰りが可能な場合、イワナやヤマメの最もポピュラーで美味しい食べ方は塩焼きでしょう。
- 下処理が肝心: 釣った魚は、新鮮なうちに内臓、エラ、血合いを丁寧に取り除きます 。冷水で手早く洗い、水気をよく拭き取ります。身に余分な水分を吸わせないのがポイントです 。
- 化粧塩で美しく: ヒレには多めに塩をすり込む「化粧塩」をすると、焦げ付きにくく、見た目も美しく仕上がります 。全体にもまんべんなく塩を振ります。
- じっくり焼き上げる: 串に刺し(川魚は踊り串が一般的)、炭火やグリルでじっくりと焼き上げます。皮はパリッと、身はふっくらと仕上がれば最高です。管理釣り場によっては、釣った魚をその場で塩焼きにしてくれるサービスがある場所もあります 。
自然の恵みに感謝し、美味しくいただきましょう。もちろん、持ち帰りサイズや尾数制限は厳守です。
塩焼きについて詳細は以下の記事も参考にして下さい。
まとめ: 6月の荒川上流で最高の釣りを体験しよう!
6月の荒川上流域(秩父)は、美しい新緑と清らかな流れの中で、イワナやヤマメといった魅力的な渓流魚との出会いが待っています。初心者の方でも、しっかりと準備をし、ルールとマナーを守り、安全に注意すれば、きっと素晴らしい釣りの思い出を作ることができるでしょう。
この記事で紹介したポイントや釣り方、注意点を参考に、ぜひ荒川上流での渓流釣りにチャレンジしてみてください。釣りの技術だけでなく、自然の美しさ、生命の尊さを感じることができるはずです。
釣行前には、必ず秩父漁業協同組合(電話: 0494-22-0460 、公式ブログ等で最新情報をご確認ください)で、最新の遊漁規則や釣り場の状況を確認することをお忘れなく。
さあ、道具を揃え、遊漁券を手に、初夏の秩父の渓へ、最高の釣りを体験しに出かけましょう!