第1章 1991年の革命:新たな基準の誕生

1991年、ダイワ(現グローブライド)がTDバイブレーションを世に送り出す以前、日本のバスフィッシングにおけるバイブレーションプラグの市場は、比較的少数の定番ルアーによって占められていました。特にビル・ルイス社のラトルトラップに代表されるルアーが広く使われており、その多くは大きなラトルサウンドと比較的シンプルなリトリーブ性能を特徴としていました。アングラーたちはこれらのルアーを手に、ただ巻き、時にリフト&フォールを駆使してバスを追い求めていましたが、市場にはまだ革新の余地が残されていました。
その状況を一変させたのが、トーナメントシーンで勝つための性能を一般アングラーにも届けるという「チームダイワ」のコンセプトのもと、1991年に登場したTDバイブレーションでした。このルアーは単なる後発品ではありませんでした。それは、既存のバイブレーションプラグが抱えていた課題を克服し、新たな基準を打ち立てるという明確な意志を持って設計されていました。誰が投げても安定した飛行姿勢で驚異的な飛距離を叩き出し、高速リトリーブでもバランスを崩すことなく、タイトでハイピッチな振動(バイブレーション)を維持する能力は、当時のアングラーに衝撃を与えました。さらに、その安定した泳ぎは、シャローからディープまで、あらゆるレンジを効率的に攻略することを可能にしました。
この卓越した基本性能により、TDバイブレーションは発売と同時に市場を席巻し、瞬く間に「バイブレーションの定番」としての地位を確立しました。特筆すべきは、その性能がプロアングラーの厳しい要求に応える一方で、「ただ投げて巻くだけ」というシンプルな使い方でも圧倒的な釣果をもたらした点です。このアクセシビリティと専門性の両立が、TDバイブレーションを単なる一つのルアーから、他のすべてのバイブレーションプラグが比較されるべき「新たな基準器」へと昇華させたのです。その登場は、日本のバスフィッシングにおけるハードルアー戦略の新たな時代の幕開けを告げる出来事でした。
勿論、当時小学生だった私も小遣いを貯めて、購入したのを今でも覚えています。そして、自分自身でもブラックバスとを釣り上げた思い出が鮮明に残っているので、今でもタックルボックスに詰めて釣行には出かけてしまいます(>_<)
因みに、今回画像で使用しているTDヴァイブレーションはこれまで購入している私の手持ちのTDバイブレーションです。サムネに全部映っているかはわかりませんが(;^ω^)
第2章 初期の秘密:マテリアル、サウンド、そして「コトコト」伝説

TDバイブレーションが単なる高性能ルアーに留まらず、伝説的な存在となった背景には、初期モデルだけが持つ特有の要素がありました。それはマテリアル(材質)の選択と、そこから偶発的に生まれた唯一無二のサウンドに集約されます。
タックルベリーなどで見つけたら是非購入して使ってほしい一品です。
渇望された「ボーン」マテリアル
初期のTDバイブレーション、特に目がシールで表現されていた「シール目」モデルには、後にアングラーから「ボーン素材」と呼ばれることになる、不透明な白色のABS樹脂が採用されていました。これは単なるカラーリングの違いではありませんでした。このボーン素材は、後年のクリア系ABS樹脂とは異なる密度と硬度を持ち、それがルアーのアクションやサウンドに微妙かつ決定的な影響を与えていました。ボーン素材のボディは、水中でより独特な振動周波数を生み出し、内蔵されたラトルと共鳴して特有の音質を響かせたのです。日米で活躍するトッププロの大森貴洋氏をはじめとする多くの上級アングラーたちは、この初期モデルの持つ再現不可能な釣獲能力をいち早く見抜き、中古市場で積極的に探し求めるようになりました。この専門家たちによる評価が、TDバイブレーションに「カルト的クラシック」としての地位を与え、その伝説の序章を飾りました。
ボーン素材は後に「ビッグバド」で今江克隆さんがその素材のブラックバス釣りにおける有用性をかなり広めていましたし、実際にトーナメントでもチャンピオンに導いたルアーでした!!ちょっと脱線して申し訳ありません。
「コトコトチューン」の創生:偶然が生んだ伝説
TDバイブレーションの神話を決定づけたのが、通称「コトコトチューン」と呼ばれる現象です。これは、初期のサイレントモデル(ラトル非搭載モデル)から生まれました。当時、サイレントモデルは赤い目によって識別されていましたが、その一部の個体には製造上の「不完全さ」が存在しました。本来、完全に固定されているはずの内部ウェイトの接着が甘く、使用中の衝撃や岩へのヒットなどによってウェイトが外れてしまうことがあったのです。この外れたウェイトが、ボディ内部で揺れるたびに壁に当たり、「コトコト」という控えめで低音質なクリックサウンドを発生させました。
この製造上の「欠陥」は、やがて一部の鋭敏なアングラーによって「秘密兵器」へと昇華されます。特に、プロアングラーの吉田幸二氏がシークレットとして多用したことで、その効果は広く知られるようになりました。通常のラトルサウンドを嫌うようなプレッシャーの高い状況下で、この生命感あふれる微かなサウンドが驚異的な威力を発揮したのです。この発見はアングラーの間に瞬く間に広まり、人々は意図的にサイレントモデルのウェイトを外そうと試みるなど、「コトコトチューン」は一つの確立されたテクニックとなりました。
伝説の製品化:「ウーファー」モデルの登場
アングラーコミュニティから自然発生的に生まれた「コトコトチューン」の熱狂を、開発元であるダイワが見過ごすはずはありませんでした。偶然の産物であったこのユニークなサウンドを、誰もが安定して享受できるようにするため、ダイワは新たなモデルの開発に着手します。こうして誕生したのが、伝説のサウンドを意図的に再現した「ウーファー」モデルです。このモデルは、内部に可動式の大型ウェイトを搭載し、ルアーがアクションするたびにそのウェイトがボディ内壁を叩くことで、あの「コトコト」という低周波サウンドを確実に発生させるよう設計されました。
この一連の出来事は、ルアー開発における非常に興味深いプロセスを示しています。それは、メーカーの設計思想から始まるトップダウンの開発だけでなく、製造上の偶発的な個体差という「欠陥」を、エンドユーザーであるアングラーがその価値を発見し、「秘密兵器」へと昇華させ、その熱狂が最終的にメーカーを動かして新たな製品(ウーファーモデル)を生み出すという、ダイナミックなフィードバックループの存在です。TDバイブレーションの歴史は、単なる設計の歴史ではなく、メーカーと最も熱心なユーザーとの対話、そして時には偶然性さえも取り込みながら進化してきた、生きた物語なのです。
第3章 革新の系譜:TDバイブレーション・ファミリーの進化

TDバイブレーションは、一つの完成されたルアーとして登場しましたが、その成功に安住することなく、時代の変化とアングラーの要求の深化に応える形で、多様なモデルへと派生していきました。その進化の軌跡は、単一のルアーが、あらゆる状況に対応するための包括的な「システム」へと変貌を遂げる過程そのものです。
初期の多様化(1990年代)
黎明期において、ダイワは早くもTDバイブレーションの基本性能を軸とした戦略的なラインナップ拡充に着手しました。
- TDバイブレーションSP(サスペンド): オリジナルのシンキングモデルでは攻めきれなかった領域を攻略するために開発されたのが、SP(サスペンド)モデルです。軽量化されたこのモデルは、水中で静止させることが可能で、シャローエリアやウィード(水中植物)の上をスローに引くといった、シンキングモデルでは不可能なアプローチを実現しました。さらに、リアフックを外すことでフローティング(浮く)仕様にも変更できるという設計上の柔軟性も備えており、初期の段階から高い汎用性を示していました。
- TDブラスバイブレーション: 1991年のカタログには、オリジナルモデルの発売後間もなく「ブラスバイブレーション」が発売予定として記載されていました。これは、標準のスチールラトルとは異なる、より甲高く、大きなサウンドを生み出す真鍮(ブラス)製ラトルを採用したモデルです。この事実は、ダイワが開発当初からサウンドのバリエーションを重要な戦略的要素として捉えていたことを示唆しています。
プロスペック時代とマテリアルの進歩
- TDプロズバイブレーションとアウトメタルシステム: 次なる進化は、プロアングラーの要求をより高いレベルで満たすためのものでした。TDプロズバイブレーションでは、ボディの外側にウェイトを配置する「アウトメタルシステム」が採用されました。ウェイトには高比重なタングステンが用いられることもあり、この設計は複数の利点をもたらしました。重心を極限まで下げることで、アクションの安定性をさらに高め、ボトム(水底)との接触感を増幅させ、フォール後のリトリーブにおける泳ぎ出しを格段に速くしたのです。ただし、このアウトメタルというコンセプトにおいては、ジャッカル社のTNシリーズなど競合製品が非常に高い完成度を示したため、一部のアングラーからは特定の状況下での選択肢と見なされることもありました。
タイプR(2010年):設計思想のパラダイムシフト
- 「シミーフォール」という至上命題: 2010年に登場した「タイプR」は、マイナーチェンジではありませんでした。それは、リフト&フォール時、ラインテンションが抜けた瞬間にルアーが自発的にヒラヒラと震えながら沈む「シミーフォール」アクションを完璧にこなすという、明確な目的のためにゼロから再設計されたモデルです。
- チューンナップから新金型へ: 開発当初、宮崎友輔氏を中心とする開発チームは、オリジナルモデルのボディを改造することで理想のアクションを追求しましたが、求めるレベルには到達しませんでした。その結果、260個以上ものプロトタイプをテストした末に、全く新しい金型を起こして内外の構造を一新するという決断が下されました。ボディは引き抵抗を明確にするためにわずかに厚く、一方でヘッド部分はウィードを拾いにくくするために逆に細く削られるなど、細部にわたる徹底した作り込みがなされました。
- アングラーへのフィードバック強化: タイプRのもう一つの重要な設計目標は、アングラーの手元に伝わる振動と情報を増幅させることでした。これにより、アングラーはウィードへのタッチ感やボトムの質感をより明確に感じ取ることができ、ルアーの状態を正確に把握しながら操作することが可能になりました。
琵琶湖のスペシャリスト:TDバイブレーション 82S(2020年)
- 独自のコンセプト: 2020年に登場した82S(82mm)モデルは、TDバイブレーションシリーズの進化の系譜の中でも、特に異彩を放つ存在です。このルアーは、広大なウィードフラットが広がる琵琶湖という特定のフィールドで、特定のテクニックを完遂するためだけに開発されました。
- ディープ・スローローリング: そのコンセプトは「水深3m~5mをスローロールできるバイブレーション」という、極めて専門的なものです。このテクニックは、ルアーが浮き上がることなく、かつスローなリトリーブスピードでも明確な振動を維持し続ける必要があります。82Sは、そのための最適なウェイトとバランスを備え、大遠投した先でも手元に確かな「プルプル感」を伝え、ビッグバスにアピールするサイズ感とアクションを両立させています。
この進化の過程は、現代バスフィッシングの深化そのものを映し出す鏡と言えます。かつてアングラーがタックルボックスに一つの「バイブレーションプラグ」を持っていればよかった時代から、水深、アクション(シミーフォール)、テクニック(スローロール)、フィールドタイプ(広大な湖)といった、より細分化されたシナリオに対応する「バイブレーションプラグのシステム」を求める時代へと移行しました。TDバイブレーションのファミリーは、アングラーのこの高度な要求と歩調を合わせるように、一つの万能選手から、それぞれが特定の役割を持つ専門家集団へと見事な変貌を遂げたのです。
表1:TDバイブレーションシリーズ 進化のタイムライン
モデル名/シリーズ | 発売年(概算) | 主な特徴 / 設計コンセプト | 意義 |
オリジナル 107S | 1991年 | 圧倒的な基本性能を持つ元祖モデル | バイブレーションプラグの新たな基準を定義 |
TDバイブレーション SP | 1994年頃 | サスペンド仕様によるシャロー/ポーズ攻略 | 新たなテクニックとレンジ攻略を可能に |
ウーファーモデル | 1990年代後半 | 「コトコトサウンド」を意図的に再現 | 偶然の産物を製品化し、サウンド戦略を多様化 |
TDバイブレーション Type-R | 2010年 | 「シミーフォール」アクションの追求 | 特定のアクションに特化した完全再設計 |
TDバイブレーション 82S | 2020年 | ディープエリアの「スローロール」専用設計 | 特定のフィールドとテクニックへの超特化 |
TDバイブレーション STEEZカスタム | 2010年代後半 | レガシーと最新技術の融合、サウンドシステムの確立 | 30年の歴史を集約した現代のフラッグシップ |
第4章 現代の頂点:TDバイブレーション STEEZカスタムの徹底解析

TDバイブレーションの30年にわたる進化の集大成として君臨するのが、現行のフラッグシップモデル「TDバイブレーション STEEZカスタム」です。このモデルは、伝説的なTDバイブレーションの血統と、ダイワの最高峰バスフィッシングブランド「STEEZ」が掲げる妥協なきトーナメント性能という哲学とが融合した、まさに現代の頂点と呼ぶにふさわしい存在です。
レガシーとテクノロジーの融合
STEEZカスタムは、オリジナルのDNAを色濃く受け継ぎながら、そのあらゆる側面を現代の技術で磨き上げています。
- 完成されたシミーフォール: タイプRで培われた設計思想をさらに昇華させ、低重心化されたウェイトシステムにより、安定した再現性の高いシミーフォールアクションを実現しています。これにより、リフト&フォール中のフォールバイトを積極的に誘発します。
- アクションレスポンスと低重心設計: 内部ウェイトは、アングラーがリトリーブを開始した瞬間にルアーが振動を開始するよう、最適化されています。この驚異的な泳ぎ出しの良さは、特にリフト&フォールのようなストップ&ゴーを多用する釣りにおいて、バイトチャンスを最大化する上で極めて重要です。
サウンド・アーセナル:音のシステム化
STEEZカスタムにおける最大の革新は、状況に応じてサウンドを戦術的に使い分けることを可能にした、3種類のサウンドシステムです。各モデルは目の色で見分けることができ、アングラーは音響という要素を、より精密な戦略として組み込むことができます。
- サイレント(S)- レッドアイ: オリジナルのサイレントコンセプトの正統進化形。ラトル分のウェイトを固定ウェイトに集中させることで、シリーズ最高のアクションレスポンスと泳ぎ出しの良さを誇ります。ハイプレッシャー下のフィールド、超クリアウォーター、あるいは純粋な振動(波動)だけでアピールしたい場合に選択される、フィネス志向のモデルです。
- ガラスラトル(G)- グリーンアイ: スチールやブラスではなく、複数のガラス製ラトルを内蔵。ガラスは比重が軽く、ぶつかり合うことで「シャラシャラ」という微かで高周波なサウンドを発生させます。このコンセプトは、ベイトフィッシュの群れが発する弱い波動や音をイミテートすることにあります。プロアングラーからは、バスがベイトを活発に追いかけている状況で「数を釣るならこれ」と評されるなど、より多くのバイトを引き出す力を持っています。
- ウーファー(W)- オレンジアイ: あの「コトコト」伝説の現代的解釈。一個の重い鉛製ウェイトが、アクション時にボディ内壁を強打することで、「ゴトゴト」というパワフルで低周波なサウンドと、大きな波動を生み出します。広範囲からバスをサーチしたい時、濁った水質、風や波が強い状況下でルアーの存在をアピールしたい時に絶大な効果を発揮する、パワー系のモデルです。
このサウンドシステムの構築は、ダイワがもはや単に「ラトルを入れるか、入れないか」という二元論でルアーを設計していないことを示しています。そこには、音響工学的なアプローチが存在します。サイレントモデルでは、音を消す代わりにアクションレスポンスという性能にリソースを再配分。ガラスラトルモデルでは、ガラスという素材の音響特性(高周波)を、特定の捕食対象(ベイトフィッシュ)の模倣という目的に合致させています。そしてウーファーモデルでは、鉛という素材の音響特性(低周波)を、広範囲へのアピールという目的に特化させています。TDバイブレーションは、単なる音を出す道具から、目的を持って音を奏でる「精巧に調律された楽器」へと進化したのです。
見えざるアドバンテージ:SaqSasフック
STEEZカスタムをはじめとする現代のTDバイブレーションには、ダイワ独自の表面処理技術である「SaqSas(サクサス)」フックが標準装備されています。これは、フック表面にフッ素系特殊プレーティング加工を施すことで、摩擦係数を極限まで低減し、従来のメッキフックに比べて貫通力を最大40%(平均約20%)向上させるテクノロジーです。これは決して些細な改良ではありません。ショートバイトやじゃれつくような弱いアタックでも、フックポイントがバスの口に「サクッと刺さる」ことで、フッキングからランディングに至る確率を劇的に高めます。これは、ルアーの効率を最大化するという「システム」アプローチにおける、最後の、そして最も重要な構成要素の一つです。
表2:TDバイブレーション STEEZカスタム サウンドモデル比較ガイド
モデル / 目の色 | サウンドプロファイル | プライマリーコンセプト | 最適なコンディション |
サイレント (S) / レッド | 無音 | 最高のアクションレスポンス、究極のフィネス | ハイプレッシャー、クリアウォーター、タフコンディション |
ガラスラトル (G) / グリーン | 高周波な「シャラシャラ」音 | ベイトフィッシュの群れが発する弱い波動を模倣 | バスがベイトを意識している時、より多くのバイトを誘発したい時 |
ウーファー (W) / オレンジ | 低周波な「ゴトゴト」音 | 広範囲への最大限のアピール、強い波動 | 濁り水、強風、広大なエリアのサーチ、リアクションバイト誘発 |
第5章 エキスパートの戦略:TDバイブレーションを水中でマスターする

TDバイブレーションシリーズの持つポテンシャルを最大限に引き出すには、その豊富なラインナップを理解し、状況に応じて適切なモデルとテクニックを選択する戦術眼が求められます。ここでは、そのための実践的なフレームワークを解説します。
ミッションに応じたモデル選択
これまでの分析で明らかになったように、TDバイブレーションは単一のルアーではなく、それぞれが異なる役割を持つシステムです。水質、水深、カバーの種類、そしてバスの活性に応じて、最適なモデルを選択することが釣果への第一歩です。例えば、クリアウォーターのタフな状況ではSTEEZカスタムのサイレントモデルを、濁りが入った広大なシャローフラットを手早く探るならウーファーモデルを、というように、前セクションの比較表を参考に戦略を組み立てます。
コア・テクニック
- ステディリトリーブ(ただ巻き): 最も基本的かつ普遍的なテクニックです。重要なのは、バスが反応するリトリーブスピードを見つけ出すために速度を変化させることです。TDバイブレーションの持つ優れた安定性は、特にウィードの上などを高速で巻く「バーニング」メソッドにおいて、その真価を発揮します。
- リフト&フォール: タイプRやSTEEZカスタムの登場により、極めて効果的なテクニックとなりました。ロッドを鋭くあおってルアーをボトムやウィードから引き剥がし、その後ラインをやや緩めて(セミ・スラックライン)ルアーをフォールさせます。このフォール中に「シミーフォール」アクションが発動し、バイトの多くはこの瞬間に集中します。
- スローロール: 82Sモデルがそのために生まれた専門的なテクニックです。ディープウォーターのボトムやウィードトップを、ルアーがコツコツと接触するのを感じながら、可能な限りゆっくりとリトリーブします。低速でも振動を失わないモデルの選択が鍵となります。
- 障害物へのコンタクト(根掛かり回避的バンピング): TDバイブレーションは、頭を下げた遊泳姿勢により、バイブレーションプラグとしては驚くほど根掛かりに強いという特徴があります。プロアングラーが多用する高等テクニックの一つが、あえて立ち木や岩盤などのストラクチャーにルアーをキャストし、ゆっくりと引いてくることで障害物に当て、ヒラを打たせてリアクションバイトを誘うというものです。ロストを恐れずに攻めることで、他のアングラーが攻めきれない魚を手にすることができます。
最適なタックルセッティング
ルアーの性能を100%引き出すためには、タックルバランスが極めて重要です。
- ロッド: 選択を誤ると、ルアーのポテンシャルを殺してしまいます。例えば、柔らかすぎるグラスロッドでは、ルアーの振動を吸収しすぎてしまい、フッキングパワーが伝わらず、根掛かりも多発します。コンセンサスとなっているのは、ミディアムヘビーパワー、モデレートファストからファストアクションのグラファイトロッドです。適度なティップの入りがバスの吸い込みを助け、強靭なバットパワーがウィードからルアーを引き剥がし、硬い口にフックを貫通させます。特にウィードエリアでは、張りの強い高弾性ロッドが快適な操作感をもたらします。
- ライン: 汎用性の高さもこのルアーの魅力です。ボトムコンタクトを多用する釣りでは、感度と耐摩耗性に優れる12lbから16lbのフロロカーボンラインが定番です。オープンウォーターでのただ巻きなどでは、ナイロンラインも有効な選択肢となります。
- リール: どんな高品質なリールでも対応可能ですが、汎用性を考慮するとギア比6.3:1から7.1:1程度のスタンダードギアが最も扱いやすいでしょう。超ハイギアリールは、時に求められるスローなリトリーブを維持するのが難しくなる場合があります。
第6章 結論:ルアーを超えた、永続する遺産

1991年の登場から30年以上、ダイワのTDバイブレーションが辿ってきた道のりは、単なる一ルアーの歴史に留まりません。それは、革命的でありながらも一つの完成品であった製品が、時代の要求とアングラーの進化に応え、複雑かつ高度に専門化された「ルアーシステム」へと変貌を遂げた、壮大な進化の物語です。
その永続的な成功の核心は、単一の機能に起因するものではありません。それは、以下の三つの要素が複合的に作用した結果であると結論付けられます。
- 完璧な基本設計: オリジナルモデルが持っていた形状、バランス、アクションという基本設計が、あまりにも優れていたこと。その卓越した基盤があったからこそ、30年後の現代においても、そのDNAが色濃く受け継がれています。
- 観察と対応の文化: ダイワが、ユーザーであるアングラーの声に耳を傾け、時には「コトコトチューン」のような製造上の偶然の産物からさえも学び、それを製品開発にフィードバックさせるという、柔軟で有機的な開発姿勢を持ち続けたこと。
- 専門化への挑戦: 過去の成功に安住することなく、シミーフォール、スローロール、そしてサウンドのシステム化といった、現代アングラーの高度で専門的な要求に応えるために、常にルアーを適応させ、特定の状況に特化したツールを生み出し続けたこと。
TDバイブレーションは、もはや単なるプラスチックと金属の塊ではありません。それは、過去30年間のバスフィッシングの進化を刻み込んだ、生きた歴史的資料です。ルアーデザインにおける真の偉大さとは、絶え間ない革新、洗練、そして魚とそれを追い求めるアングラーへの深い理解を通じてのみ達成されるという思想の、動かぬ証人なのです。TDバイブレーションは、これまでも、そしてこれからも、バスフィッシングというスポーツの礎であり続けるでしょう。
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