銀色に輝く刀のような魚体、強烈な引き、そして食せば絶品。タチウオ(太刀魚)は、その独特の魅力で多くのアングラーを惹きつけてやまないターゲットです。そのスリリングなファイトは一度味わうと病みつきになり、釣りの奥深さを教えてくれます。
しかし、「ドラゴン」と呼ばれるメーター超えの大物も潜む一方で、初心者でも十分に楽しめる懐の深さもタチウオ釣りの特徴です。この記事では、これからタチウオ釣りを始めたいと考えている初心者の方々に向けて、必要な知識を網羅的に解説します。釣り場の選び方から、具体的な釣り方、必要な道具、そして釣った後の美味しい食べ方まで、この完全ガイドを読めば、あなたの初めてのタチウオ釣りが成功へと大きく近づくはずです。
まずはタチウオ釣りを知ろう!生態とシーズンの基本

釣りの準備を始める前に、まずはターゲットであるタチウオの基本的な生態や行動パターンを理解することが、釣果への一番の近道です。魚の習性を知ることで、「いつ」「どこで」「どのように」狙えば良いのかが見えてきます。
銀色のサーベル!タチウオの生態と魅力
タチウオという名前の由来は、その姿が「太刀」に似ているからとも、水中で「立つ」ように泳ぐからとも言われています。彼らはイワシやキビナゴといった小魚を主食とする獰猛なフィッシュイーターです。
タチウオの行動を理解する上で最も重要なのが、一日の行動サイクル(日周活動)です。日中は沖合の深い場所に群れで潜んでいますが、夜になると捕食のために浅場へと移動してきます。この習性が、タチウオ釣りの時間帯やポイント選びの鍵となります。
タチウオ釣りの最大の魅力は、初心者には手軽に始められる一方で、熟練者にとっては腕の差が釣果に直結する奥深さを持っている点です。そして何より、その上品な白身は刺身、塩焼き、天ぷらと、どんな料理にしても絶品です。
ベストシーズンはいつ?地域と季節ごとの特徴
タチウオは地域や年によって差はありますが、比較的長いシーズン楽しめる魚です。
一般的に、岸からタチウオを狙うベストシーズンは、水温が上がりベイトとなる小魚が接岸する**夏から秋(8月~11月頃)**とされています。しかし、場所によっては6月や7月の早い時期から釣れ始めることもあります。
特に二大人気エリアである東京湾と大阪湾では、シーズンに特徴があります。
- 東京湾: 夏と冬にハイシーズンを迎えます。6月頃から始まる「夏タチ」は、タチウオの活性が非常に高く、数釣りが楽しめるため、初心者が経験を積むのに最適な季節です。一方、晩秋から冬にかけての「冬タチ」は、数は出にくくなるものの、メーター超えの「ドラゴン級」が狙える夢のあるシーズンです。このように、東京湾ではほぼ一年を通してタチウオ釣りを楽しむことが可能です。
- 大阪湾: こちらも7月頃からシーズンが始まり、特に泉南エリアは毎年安定した釣果が期待できることで知られています。回遊パターンが読みやすく、初心者でも狙いを定めやすいのが特徴です。
このように、季節によって狙えるサイズや難易度が変わることを知っておくと、釣行計画が立てやすくなります。まずは数釣りが期待できる夏に腕を磨き、自信がついたら冬のドラゴン狙いに挑戦するというステップアップがおすすめです。
ゴールデンタイムは「マヅメ」と「夜」
タチウオを釣る上で最も重要な要素が「時合い(じあい)」、つまり魚が最も活発にエサを食べる時間帯です。
タチウオのゴールデンタイムは、**朝マヅメ(日の出前後)と夕マヅメ(日没前後)**です。この時間帯、タチウオは捕食のために岸近くまで接岸し、非常に攻撃的になります。
また、タチウオは夜行性のため、夜釣りも非常に有効な攻略法です。特に初心者にとっては、夜間はタチウオの警戒心が薄れるため、日中よりも釣りやすいというメリットがあります。常夜灯のある港や堤防は、光にベイトフィッシュが集まり、それを狙ってタチウオも寄ってくるため、一級のポイントとなります。
どこで釣る?タチウオの人気釣り場ガイド

タチウオはどこでも釣れる魚ではありません。実績のあるポイントを選ぶことが、釣果への最短ルートです。ここでは、船と陸っぱりに分けて、特に人気の高いエリアをご紹介します。
【船釣り】二大フィールド「東京湾」と「大阪湾」
船釣りでは、船長が魚群探知機でタチウオの群れを探してくれるため、初心者でも高確率で魚に出会うことができます。
- 東京湾: 釣果情報で頻繁に名前が挙がるのが走水(はしりみず)沖と観音崎(かんのんざき)沖です。これらのエリアはタチウオの魚影が濃く、横須賀の久里浜や金沢八景、横浜などから多くの遊漁船が出船しています。
- 大阪湾: 南部の岬町周辺(谷川港、深日港など)が、特にシーズン初期の有望なポイントとして知られています。また、泉佐野もタチウオ船の主要な出船基地の一つです。
【陸っぱり】初心者も安心!アクセスしやすい堤防・公園
手軽に楽しめる陸っぱり(岸からの釣り)では、安全で実績のある釣り公園や大きな港がおすすめです。
- 横須賀エリア(神奈川県):
- うみかぜ公園: 関東で最も有名なタチウオの陸っぱりポイントと言っても過言ではありません。アクセスが良く、トイレなどの施設も充実しているため、安心して釣りが楽しめます。非常に人気が高く混雑するため、遠投できるタックルが有利になる場面もあります。
- 海辺つり公園: うみかぜ公園と並ぶ人気スポット。ただし、開園・閉園時間が定められているため、夜通しの釣りには注意が必要です。
- 浦賀の陸軍桟橋: 夜釣りの実績が高いポイントとして知られています。
- 千葉エリア:
- 検見川浜突堤: 東京湾奥の陸っぱりポイントの中でも、特に良型のタチウオが釣れることで有名です。
- 千葉港周辺: 近年、湾奥部でもタチウオの魚影が濃くなっており、新たな人気スポットとして注目されています。
- 富津新港: 駐車スペースから釣り場が近く、車を横付けして釣りができる手軽さが魅力です。アジなど他の魚も狙えます。
タチウオは「幽霊魚」とも呼ばれるほど神出鬼没な魚です。釣行前には、SNSや釣具店の釣果情報などをチェックし、直近で釣れている場所を選ぶようにしましょう。
初心者必見!タチウオの4大釣り方

タチウオ釣りには様々なアプローチがありますが、ここでは初心者でも始めやすい代表的な4つの釣り方を解説します。それぞれの特徴を理解し、自分に合ったスタイルを見つけてください。
【陸っぱり】シンプルさNo.1「ウキ釣り」
最も伝統的で、視覚的にアタリが分かりやすいのがウキ釣りです。夜の堤防で海面に浮かぶ幻想的な光の列は、このウキ釣りの電気ウキによるものです。
- 概要: キビナゴやサンマの切り身といったエサを付けたハリを、「電気ウキ」を使って狙いの水深に漂わせる釣り方です。タチウオがエサに食いつくと、ウキが海中に引き込まれるため、アタリが非常に分かりやすいのが特徴です。
- 初心者へのおすすめ理由: 難しい操作はほとんど必要なく、仕掛けを投げて待つのが基本なので、釣りが初めての方でも手軽に始められます。
- テクニックの要点: 最も重要なのは、ウキからハリまでの長さ(ウキ下)を調整し、タチウオがいる層(タナ)にエサを届けることです。まずは水深4.5m~6m(3~4ヒロ)あたりから始め、アタリがなければ少しずつ深くしたり浅くしたりして探っていきましょう。
【陸っぱり】ゲーム性が高いエサ釣り「引き釣り(テンヤ)」
エサの集魚力とルアーの操作性を融合させたのが、この引き釣りです。近年、手軽さと釣果の両面から非常に人気が高まっています。
- 概要: 「テンヤ」と呼ばれるオモリとハリが一体化した仕掛けに、キビナゴやドジョウといったエサをワイヤーで固定して使います。これをキャストし、リールを巻いて引いてくることで、タチウオを誘います。
- 人気の理由: エサを使うためアピール力が高く、それでいてルアーのように積極的に誘いをかけるゲーム性の高さが魅力です。最も簡単で釣れやすい釣り方の一つとも言われています。
- テクニックの要点: ただ巻きでも釣れますが、巻くスピードを変えたり、時々竿先でアクションを加えたりすることで、その日のヒットパターンを見つけ出すのが釣果アップの鍵です。
【陸っぱり】ルアーの定番「ワインド釣法」
純粋なルアーフィッシングでタチウオを狙うなら、ワインド釣法が最も代表的です。その独特なアクションは、タチウオの捕食スイッチを強制的にオンにします。
- 概要: 三角形や円錐形の専用ジグヘッドにワームをセットし、竿を鋭くしゃくり上げることで、ルアーを左右に激しくダート(ジグザグに動かす)させて魚を誘う釣り方です。
- 効果的な理由: この予測不能な動きがタチウオのリアクションバイトを誘発し、特に朝夕マヅメの高活性な時間帯に絶大な効果を発揮します。
- テクニックの要点: 竿をリズミカルに「シャクる」ことが基本動作です。竿を鋭く跳ね上げ、竿を戻しながら糸フケを巻き取る、この一連の動作を繰り返します。
【船釣り】伝統の「天秤釣り」と人気の「テンヤ釣り」
船釣りでは、関東と関西で伝統的に異なるスタイルが主流でしたが、近年その垣根は低くなりつつあります。
- 天秤(てんびん)釣り: 主に関東(東京湾)で古くから行われているスタイルです。L字型の天秤を使い、オモリとエサの付いた長いハリス(約2m)を離すことで、エサを自然に漂わせることができます。仕掛けの扱いがシンプルで、初心者にも非常におすすめの釣り方です。
- テンヤ釣り: 関西(大阪湾)で絶大な人気を誇るスタイルで、近年では東京湾でも大流行しています。40~50号(約150g~190g)という重いテンヤにエサを巻き付けて、海底から誘い上げてきます。天秤釣りよりテクニカルですが、大型のタチウオが釣れやすいと言われています。
かつては地域によって明確に分かれていたこの二つの釣り方ですが、現在では東京湾の遊漁船でも「天秤」と「テンヤ」の両方のプランを用意している船宿が増えています。初心者はまず簡単な天秤釣りで船釣りに慣れ、同じフィールドでステップアップとしてテンヤ釣りに挑戦するという選択も可能になっています。
釣り方別!必要な道具(タックル)一覧
「どんな道具を揃えればいいか分からない」というのは初心者が最初にぶつかる壁です。ここでは、まず全釣法共通で必要な基本アイテムと、各釣り方に適したタックルを分かりやすく解説します。
全釣法共通の必須・便利アイテム
以下のアイテムは、安全かつ快適にタチウオ釣りを楽しむために、必ず用意しておきたいものです。
- フィッシュグリップ(魚ばさみ): 絶対に必要です。 タチウオの歯はカミソリのように鋭く、素手で触ると大怪我につながります。釣れたタチウオを安全に掴むための必須アイテムです。
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- プライヤー: 魚の口から安全にハリを外すために使います。先端が長いロングノーズタイプがより安全です。
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- クーラーボックス: 釣ったタチウオを新鮮に持ち帰るために必要です。タチウオは細長い魚なので、魚体が曲がらないよう、容量30L以上の細長いモデルが理想的です。
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- ヘッドライト: 夜釣りでは手元を照らすために必須です。両手が自由になるヘッドライトが最適です。
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- ハサミ: 糸を切ったり、エサを整えたりと、何かと使用頻度が高いアイテムです。
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- ライフジャケット: 遊漁船では着用が義務付けられています。陸っぱりでも、万が一の事故に備えて必ず着用しましょう。
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陸っぱり・船釣り タックル推奨表
タチウオ釣りでは、それぞれの釣法に特化した専用の竿(ロッド)がありますが、初心者のうちはシーバス用やエギング用など、手持ちのタックルで代用できる場合も多くあります。以下の表を参考に、自分のスタイルに合ったタックルを選んでみてください。
釣り方 (Method) | 竿 (Rod) | リール (Reel) | ライン (Line) & リーダー (Leader) |
ウキ釣り (Float) | 専用/理想: 磯竿 1.5-3号, 4-5m 代用/入門: 汎用的な投げ竿 | スピニング 3000-4000番 | 道糸: ナイロン 3-4号 ハリス: ワイヤーリーダー or 太めフロロ |
引き釣り (Pull/Tenya) | 専用/理想: 8-9ft ルアーロッド (20-30g) 代用/入門: シーバスロッド | スピニング 2500-3000番 | 道糸: PE 0.8-1.0号 リーダー: フロロ4-5号 + ワイヤーリーダー |
ワインド (Wind) | 専用/理想: ワインド専用ロッド 8ft前後 代用/入門: シーバス/エギングロッド | スピニング 2500-3000番 (ハイギア推奨) | 道糸: PE 0.6-1.0号 リーダー: フロロ4-5号 + ワイヤーリーダー |
船・天秤 (Boat Tenbin) | 専用/理想: 7:3 or 6:4調子 船竿 代用/入門: ライトゲームロッド | 手巻き両軸 or 小型電動 (カウンター付推奨) | 道糸: PE 1-2号 (200m+) リーダー: フロロ8号前後 |
船・テンヤ (Boat Tenya) | 専用/理想: 8:2 or 9:1調子 テンヤタチウオ専用竿 代用/入門: ジギングロッド | 小型電動 (推奨) or カウンター付両軸 | 道糸: PE 1.5-2号 (200m+) リーダー: フロロ8-12号 or ワイヤー |
釣果を伸ばす!初心者がマスターすべき実践テクニック

道具を揃えたら、次は釣果に直結する実践的なテクニックを学びましょう。ここでは、釣れる人と釣れない人を分ける重要なポイントを4つに絞って解説します。
釣果を左右する「エサの付け方」
エサを使う釣りでは、付け方一つで釣果が大きく変わります。共通するポイントは「水中で回転しないよう、まっすぐ付ける」ことです。
- 天秤・ウキ釣り: サバやサンマの切り身を使う場合、エサの中心にハリを縫うように刺し、エサがまっすぐ垂れ下がるようにセットします。エサが曲がっていると、水中で回転してしまい、タチウオが警戒して食ってきません。
- テンヤ釣り: イワシなどのエサを、テンヤの軸に沿ってまっすぐに乗せ、付属のワイヤーでしっかりと固定します。特に頭の部分は、誘いの最中にズレないようにきつく巻き付けるのがコツです。
魚のいる層を見つける「タナ取り」
タチウオのような中層を泳ぐ魚を釣る上で、最も重要なのが「タナ」を合わせることです。タナとは、魚が泳いでいる水深(層)のことで、これを見つけられるかどうかが釣果の9割を決めると言っても過言ではありません。
- 船釣りの場合: 船長が魚群探知機を見て、「水深55mから45mまで探って」というように、狙うべきタナをアナウンスしてくれます。リールのカウンター機能を使い、指示された範囲の下限まで仕掛けを落とし、そこから上限までを丁寧に探りましょう。基本は下から上へと誘い上げていきます。
- 陸っぱりの場合: 自分でタナを探す必要があります。そこで有効なのが「カウントダウン」です。仕掛けを投入後、着水と同時に心の中で秒数を数え始め、仕掛けが底に着くまでの時間(例:20秒)を把握します。これを基準に、「次は10秒沈めて中層を」「次は5秒沈めて表層を」というように、探る層を変えていきます。タナは時間と共に変化するので、アタリがなければこまめに探る層を変えることが重要です。
基本の3つの誘い「サソイ」
タチウオにエサやルアーの存在を気づかせ、食いつかせるためのアクションを「誘い(サソイ)」と呼びます。基本となる3つの誘いを覚えましょう。
- ただ巻き: 最もシンプルな誘い方。一定のスピードでリールを巻くだけです。その日の状況によって、超スローな「デッドスロー」が効くこともあれば、速めのリトリーブに反応が良いこともあります。まずは色々なスピードを試してみましょう。
- ストップ&ゴー: リールを数回巻いては止め、数秒待つ、という動作を繰り返す誘い方です。この止めた「間(ま)」にタチウオが食いついてくることが非常に多いです。
- リフト&フォール/シャクリ: 竿を上に持ち上げて(リフト)、ゆっくりと下ろしていく(フォール)誘い方です。天秤、テンヤ、ワインドなど、多くの釣り方の基本となるアクションです。竿を動かす幅やスピードを変えることで、様々なパターンを生み出せます。
アタリの読み方と「アワセ」のタイミング
タチウオのアタリは独特で、これを理解することがキャッチ率を上げる鍵です。多くの場合、アタリは2段階で訪れます。
- 前アタリ(まえあたり): 「コンコン」「コツコツ」といった、小さく竿先を叩くような感触です。これはタチウオがエサを警戒しながらついばんでいるサインです。ここで焦ってアワセてはいけません!
- 本アタリ(ほんあたり): 前アタリの後も誘いを続けると、やがて「グーン」と竿が引き込まれるような重いアタリや、「ガツン」という明確な衝撃が伝わります。これが本アタリです。この瞬間に、竿を大きく立ててフッキング(アワセ)を入れます。
なぜ待つ必要があるのでしょうか。それは、タチウオが捕食が苦手な魚と言われ、一度エサを口先で攻撃して弱らせてから、改めてしっかりと食い込む習性があるためです。早アワセは、タチウオがエサを咥え直す前に奪い取ってしまうことになり、すっぽ抜けの原因となります。
アタリは、魚との対話のようなものです。エサや天秤のようなスローな釣りでは、最初のアタリは「こんにちは」という挨拶。本気で食いついてくるまで、じっくりと待ちましょう。一方で、ワインドのようなリアクションの釣りでは、アタリは「ガツン!」の一発勝負。これは魚が考える暇もなく反射的に食ってきている証拠なので、即座にアワセを入れる必要があります。
釣った後に!正しい処理と持ち帰り方

念願のタチウオを釣り上げたら、その喜びを最高の味で締めくくりましょう。そのためには、釣った後の処理が非常に重要です。
安全第一!カミソリのような歯の扱い方
繰り返しになりますが、タチウオの歯は非常に危険です。釣れたタチウオが暴れても、絶対に素手で口の周りを触らないでください。
必ずフィッシュグリップを使い、下顎や頭部をしっかりと掴んで魚を固定します。その上で、プライヤーを使ってハリを外す、という手順を徹底してください。
美味しさを保つ「締め方」と「血抜き」
適切な処理をすることで、魚の生臭さを防ぎ、身の味と鮮度を格段に向上させることができます。
- ステップ1:締める(脳締め): 最も効果的なのは「脳締め」です。ナイフやハサミの先端を使い、目の後ろにあるこめかみの柔らかい部分を突き刺して脳を破壊します。成功すると、魚がブルッと痙攣し、口がカクンと開きます。
- ステップ2:血を抜く(血抜き): 締めた直後に、エラブタを開けて付け根にある太い血管をハサミやナイフで切断します。尾の付け根にも切り込みを入れると、より効果的に血が抜けます。
- ステップ3:血を洗い流す: 海水を汲んだバケツに、頭を下にして5~10分ほど浸けておくと、きれいに血が抜けます。
鮮度をキープ!持ち帰り方のコツ
最高の状態で持ち帰るための鉄則は「真水と氷に直接触れさせない」ことです。
真水に触れると浸透圧で身が水っぽくなり、旨味が逃げてしまいます。また、氷に直接触れると「氷焼け」を起こし、身が傷んでしまいます。
最も良い方法は、血抜きをしたタチウオをビニール袋に入れ(背ビレが鋭いので二重にすると安心です)、口をしっかり縛ってから、氷の入ったクーラーボックスに入れることです。ペットボトルを凍らせた氷を使うと、溶けてもクーラー内が水浸しにならず便利です。
絶品!釣れたてタチウオのおすすめレシピ
自分で釣った魚を食べるのは、釣り人にとって最高の瞬間です。ここでは、初心者でも簡単にできる絶品タチウオ料理をご紹介します。
まずは基本の「三枚おろし」
多くの料理の基本となるのが三枚おろしです。タチウオは骨が硬くないので、家庭用の包丁でも十分にさばけます。
- ウロコ(銀色の表皮)を包丁の背で軽くこそげ落とし、頭と内臓を取り除きます。
- 中骨に沿って、頭側から尾側へ包丁を入れ、片身を切り離します。
- 裏返して、同様にもう片方の身も切り離します。これで2枚の身と中骨に分かれます。
- 身に残っている腹骨を、包丁を寝かせて薄くそぎ取れば完成です。
プロのコツ: 残った中骨は捨てないでください!後述する「骨せんべい」として、美味しく食べられます。
定番の味「ふっくら絶品!塩焼き」
タチウオの持つ上品な脂と繊細な旨味を最もシンプルに味わえるのが塩焼きです。
- 簡単レシピ: 三枚におろした身、または筒切りにしたタチウオに軽く塩を振り、10分ほど置いて余分な水分をキッチンペーパーで拭き取ります。グリルやフライパンで、皮目がパリッとするまで焼き上げれば完成。大根おろしとレモンを添えれば、料亭の味です。
釣り人の特権「香ばしい!炙り刺身」
鮮度が命の刺身は、まさに釣り人の特権です。特にタチウオは皮目を炙ることで香ばしさが加わり、格別の美味しさになります。
- 簡単レシピ: 三枚におろした身の皮を付けたまま、刺身の大きさに切り分けます。皮目を上にして皿に並べ、キッチントーチ(バーナー)で皮の表面が白く色づき、香ばしい匂いが立つまでサッと炙ります。醤油やポン酢、塩でいただきましょう。
家族で楽しむ「サクサク!唐揚げ&骨せんべい」
子供から大人まで大人気の揚げ物もおすすめです。
- 唐揚げ: フィレを一口大に切り、醤油・酒・ショウガで下味をつけます。片栗粉をまぶして、きつね色になるまで揚げれば、外はサクサク、中はふわふわの絶品唐揚げの完成です。
- 骨せんべい: 三枚おろしで出た中骨を適当な長さに切り、低温の油でじっくりと揚げます。水分が完全に抜けてカリカリになったら取り出し、塩を振れば、カルシウム満点の無駄なしおつまみになります。
タチウオ釣りへの旅立ち
タチウオ釣りの成功の鍵は、「季節と時合いを理解し」「実績のある場所を選び」「自分に合った釣り方でタナを探り」「釣った魚を安全・丁寧に扱う」という4つの柱に集約されます。
このガイドで得た知識を武器に、ぜひフィールドへ足を運んでみてください。初めて竿を出す緊張感、竿先に伝わる初めてのアタリ、そして銀色に輝く魚体が見えた瞬間の興奮は、きっと忘れられない思い出になるはずです。安全に、そしてマナーを守って、素晴らしいタチウオ釣りの世界を楽しんでください。
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