「砂浜の女王」シロギス釣りの魅力へようこそ!
透き通るような美しい魚体に、淡いパールピンクの輝きを放つシロギス。その優雅な姿から「砂浜の女王」と称され、古くから多くの釣り人を魅了し続けています。シロギス釣りの最大の魅力は、なんといってもその手軽さと奥深さにあります。竿先に伝わる「ブルブルッ!」という明確なアタリは、釣りの経験がない初心者や子供でもはっきりと感じ取ることができ、一度味わえば誰もが夢中になることでしょう。
家族で楽しむ休日のレジャーフィッシングから、30cmを超える「尺ギス」や「ヒジタタキ」と呼ばれる大物を追い求めるベテランアングラーまで、幅広い層がそれぞれのスタイルで楽しめるのがシロギス釣りの懐の深さです。そして、釣り上げた後の楽しみも格別。特に天ぷらにしたシロギスは、ふわふわの白身に上品な甘みが広がり、まさに絶品です。
しかし近年、シロギスを取り巻く環境は少しずつ変化しています。農林水産省のデータによれば、全国的に漁獲量が減少傾向にあり、特に東京湾や瀬戸内海などの都市近郊の沿岸部では、「数が減った」「サイズが小さくなった」という声も聞かれます。この背景には、シロギスの産卵場所である砂浜の減少や、海水温の上昇といった環境の変化が関係していると考えられています。
「それじゃあ、もうシロギス釣りは楽しめないの?」と不安に思うかもしれません。しかし、答えは「いいえ」です。確かに、以前のように何も考えずに投げれば釣れる、という時代は終わりつつあるのかもしれません。ですが、それは裏を返せば、「知識」と「戦略」が釣果を大きく左右する、よりエキサイティングな時代になったということです。シロギスの生態を理解し、季節や場所に合わせて釣り方を変えることで、今でも十分に満足のいく釣果を得ることが可能です。
この記事は、これからシロギス釣りを始めたいと考えている初心者の方から、もう一歩ステップアップして釣果を伸ばしたいと考えている経験者の方まで、すべてのシロギスファンに贈る「完全ガイド」です。シロギスの生態から、最新の道具選び、釣果を劇的にアップさせるテクニック、そして関東近郊のおすすめ釣り場まで、シロギス釣りのすべてを網羅しました。このガイドを手に、あなたも「砂浜の女王」との出会いを存分に楽しんでください。
まずは敵を知ることから!シロギスの生態とベストシーズン

どんな釣りでも、釣果への一番の近道はターゲットとなる魚の習性を知ることです。シロギスが「いつ、どこで、何をしているのか」を理解すれば、おのずと釣れる確率は高まります。ここでは、シロギスの基本的な生態と、釣りに最適なシーズンについて詳しく解説します。
シロギスの好む場所とは?
シロギスは、その名の通り、主に海底が砂や砂泥の場所(砂地)に生息しています。なぜなら、彼らの主食であるゴカイやイソメ類、エビやカニなどの小さな甲殻類が砂の中に潜んでいるからです。広大な砂浜や、湾内の穏やかな砂地が彼らのレストランであり、生活の場なのです。
ただし、ただだだっ広い砂地ならどこでも良いというわけではありません。シロギスが特に好んで集まるのは、海底の地形に「変化」がある場所です。例えば、以下のようなポイントは一級の狙い目となります。
- カケアガリ(駆け上がり): 海底が急に深くなったり浅くなったりしている斜面のことです。このような場所は潮の流れが変化しやすく、エサとなる生物が集まりやすいため、シロギスの群れが溜まっている可能性が高いポイントです。
- ミオ筋(澪筋): 船の通り道や潮の流れによってできた、海底の溝状のくぼみです。周囲より少し深くなっているため、シロギスが身を隠したり、回遊ルートとして利用したりします。
- 根や海藻が点在する砂地: 砂地の中に岩(根)や海藻がポツポツと点在している場所も有望です。これらの障害物はエサが豊富なだけでなく、外敵から身を守る隠れ家にもなるため、良型のシロギスが潜んでいることが多いです。ただし、根掛かりのリスクも高まるため注意が必要です。
季節ごとの動きと狙い目(シーズナルパターン)
シロギスは水温に非常に敏感な魚で、季節によって生息する水深を大きく変えます。この「シーズナルパターン」を理解することが、年間を通してシロギス釣りを楽しむための鍵となります。
- 春(3月~5月): シーズン開幕。冬の間、水温の安定した深場で過ごしていたシロギスが、水温の上昇とともに産卵のために浅場へと移動を開始します。シーズン初期はまだ沖の深めにいることが多いため、岸から釣るには100m以上の本格的な遠投が必要になる場面もあります。
- 夏(6月~8月): 釣りの最盛期。6月頃から産卵が本格化し、大きな群れを作って水深1m未満の波打ち際まで接岸してきます。この時期はエサを活発に追い求めるため、簡単な「ちょい投げ」でも数釣りが楽しめ、初心者や家族連れがシロギス釣りを始めるのに最適な季節です。
- 秋(9月~11月): 良型・大物狙いの季節。水温が下がり始めると、シロギスは越冬のために再び深場へと移動を始めます。この時期のシロギスは「落ちギス」と呼ばれ、冬に備えて体力を蓄えるために荒食いするため、非常に食いが立ちます。一年で最も大型が狙いやすいシーズンであり、ベテラン釣り師はこの「落ちギス」を心待ちにしています。
- 冬(12月~2月): 岸釣りはオフシーズン。シロギスは完全に水深20~30mの深場に移動してしまうため、砂浜や堤防から狙うのは非常に難しくなります。この時期にシロギスを釣りたい場合は、船釣りがメインとなります。
釣れる時間帯「時合い」と潮の読み方
シロギスがエサを活発に食べる時間帯、いわゆる「時合い(じあい)」を狙って釣りをすることも非常に重要です。
- マズメ時: 魚全般に言えることですが、最も釣果が期待できるのは、太陽が昇る直前の「朝マズメ」と、沈む直前の「夕マズメ」です。薄暗い時間帯は魚の警戒心が薄れ、捕食活動が活発になるため、絶好のチャンスタイムとなります。
- 潮の動き: シロギス釣りにおいて、潮の動きは釣果を左右する最も重要な要素の一つです。潮が止まっている「潮止まり」の時間帯はアタリが遠のき、逆に潮が動いている時間帯は魚の食い気が立ちます。
- 上げ潮が狙い目: 一般的に、干潮から満潮に向かう「上げ潮」のタイミングで、シロギスはエサを求めて浅場に乗り込んでくるため、最も釣れやすいとされています。
- 潮の動き始めと終わりを狙う: 特に、潮が動き始める「上げ3分」や、潮の動きが緩やかになる「下げ7分」といった時間帯は、時合いが集中しやすいゴールデンタイムです。
- 潮周りよりも「潮位の変化」: 「大潮だから釣れる」と一概には言えません。重要なのは、潮が大きく動いているかどうかです。小潮や若潮でも、潮位の変動が大きければ十分にチャンスはあります。釣行前には必ず潮見表を確認し、「マズメ時」と「潮が動く時間」が重なるタイミングを狙うのが、釣果への最短ルートです。
このように、季節によってシロギスのいる場所(水深)は変わり、それに伴って有効な釣り方も変わってきます。例えば、魚が浅場にいる夏は手軽な「ちょい投げ」が有効ですが、魚が遠い春や秋は「本格的な投げ釣り」で遠投しなければ届きません。この「季節・場所・釣り方」の三位一体の関係性を理解することが、現代のシロギス釣りで成功するための核心と言えるでしょう。
あなたのスタイルはどっち?シロギス釣りの2大釣法

岸からシロギスを狙う釣り方には、大きく分けて2つのスタイルがあります。「手軽さ」を重視するのか、それとも「飛距離と大物」を追求するのか。あなたの目的や持っている道具に合わせて、最適なスタイルを選びましょう。
手軽に楽しむ「ちょい投げ」釣り
「ちょい投げ」とは、その名の通り、軽いオモリを使って「ちょいっ」と軽く投げるスタイルの釣り方です。主に10mから40m程度の近距離を狙います。
この釣り方の最大の魅力は、なんといってもその手軽さです。本格的な投げ釣り専用の道具は必要なく、シーバスロッドやエギングロッドといった、他のルアーフィッシングで使う竿を流用できます。そのため、初期投資を抑えて気軽に始めたい初心者の方や、家族連れでのレジャーフィッシングに最適です。特に、シロギスが岸のすぐ近くまで寄ってくる夏のシーズンには、この「ちょい投げ」で面白いように釣れることがあります。
遠投で大物を狙う「本格投げ釣り」
一方、「本格投げ釣り」は、サーフ(砂浜)から100m以上も仕掛けを遠投する、ダイナミックなスタイルの釣り方です。専用の長くて硬い竿と、遠投性能に特化した大型リールを使い、沖合にいる警戒心の薄いシロギスや、体力のある大型のシロギスを狙い撃ちします。
この釣り方は、春先のシーズン初期や、魚が深場に落ち始める秋に特に威力を発揮します。また、多くの釣り人が攻めきれない未開のポイントを狙えるため、釣り荒れた場所でも釣果を期待できるのが強みです。力強いフルキャストの爽快感と、遠くのポイントから良型を引きずり出す興奮は、本格投げ釣りならではの醍醐味と言えるでしょう。
どちらのスタイルが良いかは、あなたの目的次第です。まずは下の比較表を見て、自分に合ったスタイルを見つけてみてください。
項目 | ちょい投げ | 本格投げ釣り |
狙う距離 | 10m ~ 40m | 50m ~ 150m以上 |
必要な道具 | ルアーロッド、コンパクトロッドなどで代用可能 | 投げ釣り専用の竿・リールが必須 |
主なターゲット | ピンギス~中型中心、数釣り | 中型~大型(尺ギス)、型狙い |
難易度 | ★☆☆☆☆(初心者向け) | ★★★☆☆(中級者~) |
おすすめの季節 | 夏(6月~8月) | 春(4月~5月)、秋(9月~11月) |
予算目安 | 1万円~3万円 | 3万円~(上級モデルは10万円以上) |
釣果を左右する!シロギス釣りの道具(タックル)徹底解説

シロギス釣りは、選ぶ道具によって釣りの快適さや釣果が大きく変わります。ここでは、「ちょい投げ」と「本格投げ釣り」のそれぞれに必要な道具(タックル)について、初心者にも分かりやすく、選び方のポイントを徹底解説します。
「ちょい投げ」の道具選び【初心者向けミニマル構成】
まずは手軽に始められる「ちょい投げ」の道具から見ていきましょう。専用品でなくても、手持ちの道具を活かせるのが魅力です。
- 竿(ロッド): 長さ2m~3m程度で、10g~30g(3号~8号)くらいのオモリを投げられる竿であれば、ほとんどのものが使えます。特に、シーバスロッドやエギングロッド、あるいは釣具店で安価に手に入る万能竿やコンパクトロッドセットなどが最適です。
- リール: 2000番~3000番サイズのスピニングリールがあれば十分です。すでに何かしらのルアー釣りなどをしている方なら、そのリールをそのまま使えます。
- 糸(ライン): 初心者の方には、扱いやすくトラブルの少ないナイロンラインの2号~3号がおすすめです。リールに150mほど巻いておけば良いでしょう。感度や飛距離を重視したい場合は、PEラインの0.6号~1.0号が適しています。ただし、PEラインは擦れに弱いので、先端に「ショックリーダー」と呼ばれるナイロンやフロロカーボンの糸(2号~3号を1mほど)を結ぶ必要があります。
- 仕掛け: 釣具店で販売されている**「ちょい投げ仕掛けセット」**を購入するのが最も簡単で確実です。これには、後述する天秤、オモリ、針付きの仕掛けがすべて入っており、道糸に結ぶだけですぐに釣りが始められます。
「本格投げ釣り」の道具選び【遠投と大物への挑戦】
次に、100m以上の遠投を目指す「本格投げ釣り」の道具です。こちらは専門性が高くなりますが、その分、釣りの可能性も大きく広がります。
- 竿(ロッド): **「投げ竿(投げ竿)」**と呼ばれる専用の竿が必要です。長さは4.05mや4.25mが標準的ですが、体力に自信のない方や女性は、少し短い3.85mから始めると扱いやすいでしょう。硬さは「オモリ負荷(錘負荷)」で示され、25号~30号に対応するモデルが、最初の1本として汎用性が高くおすすめです。
- リール: **「投げ専用リール」**を選びます。このリールは、糸を巻くスプール部分の径が大きく、かつ溝が浅い「ロングストローク・大口径スプール」が特徴で、これによりキャスト時の糸の放出抵抗が減り、飛距離が格段に伸びます。ドラグ(糸を出す機能)がないモデルは軽量で、シロギス専門で狙う釣り師に好まれます。
- 糸(ライン): 飛距離が命なので、細くて強いPEラインの0.6号~1.0号が必須です。25mごとに色分けされているラインを使うと、自分がどれくらい投げたか(何色投げたか)が分かり、釣れたポイントを把握するのに非常に便利です。そして、最も重要なのが**「力糸(ちからいと)」**です。これは、重いオモリをフルキャストする際の衝撃でメインのPEラインが切れるのを防ぐための、太いテーパー状のリーダーラインです。力糸なしで本格的な投げ釣りをすることは絶対にできません。
仕掛けの核心部:天秤・オモリ・針を極める
竿やリールがエンジンなら、仕掛けはタイヤやサスペンションのようなもの。シロギスの繊細なアタリを捉え、確実に食わせるための重要なパーツです。
- 天秤(てんびん): オモリと仕掛けを繋ぎ、キャスト時の糸絡みを防ぎ、アタリを竿先に伝える役割を担います。
- 固定式天秤: L字型や逆V字型が代表的。キャスト時に重心が安定しているため、飛行姿勢が良く遠投に向いています。仕掛けを積極的に動かして誘う「引き釣り」のスタイルと相性が良く、多くの投げ釣り師に愛用されています。
- 遊動式天秤: 道糸が天秤の中を自由に動くタイプ。魚がエサをくわえた時にオモリの抵抗が伝わりにくいため、食い込みが良いのが特徴です。アタリが小さい時や、じっくり食わせる「置き竿」釣法で効果を発揮します。
- オモリ: 竿のオモリ負荷に合った重さを選ぶのが基本です。「ちょい投げ」なら3号~10号(約11g~37.5g)、「本格投げ釣り」なら20号~30号(約75g~112.5g)が基準となります。一般的に、オモリは軽い方が感度が良く、着水音も小さいため魚を散らしにくいとされています。潮の流れや風の強さに応じて、底がしっかり取れる範囲でなるべく軽いものを選ぶのがコツです。
- 針: シロギス釣りの釣果を最も左右すると言っても過言ではないのが針です。
- 大きさ(号数): 5号~7号が標準です。小型のシロギスが多い場合や、食いが渋い時は4号~6号の小さな針を使うと吸い込みやすくなります。逆に、25cmを超えるような大型だけを狙う場合は8号以上の大きな針を選ぶこともあります。
- 形状: 吸い込みやすさを重視するなら、軸が短く懐が広い「袖(そで)針」や「キツネ針」がおすすめです。引き釣りで素早く掛ける釣りに向いています。一方、エサを大きく付けたい大型狙いや、置き竿で使う場合は、針がかりするとバレにくい「流線(りゅうせん)針」が適しています。
- 針の数: 初心者の方は、扱いやすくトラブルの少ない2本~3本針の仕掛けから始めましょう。慣れてきて、より広範囲を探りたくなったら、針の数を増やしていくと良いでしょう。
- 装飾(ビーズなど): 針の根元に付いているカラフルなビーズや夜光玉は、濁りがある時などにアピール力を高め、魚に仕掛けを見つけてもらいやすくする効果があります。しかし、フグなどのエサ取りも寄せてしまうことがあるため、状況に応じた使い分けが必要です。
道具選びは、まるで冒険の準備のようです。最初は手軽な「ちょい投げ」セットから始めてみて、シロギス釣りの楽しさに触れてみてください。そして、もし「もっと遠くに投げたい!」「もっと大きな魚を釣りたい!」という情熱が湧いてきたら、少しずつ本格的な投げ釣りの道具へとステップアップしていく。そんな風に、自分の成長に合わせて道具を進化させていくのも、釣りの大きな楽しみの一つです。
釣りの基本にして奥義!エサの付け方と選び方

どんなに高価な道具を揃えても、エサの付け方が悪ければ釣果は伸びません。シロギスは非常に口が小さく、エサを吸い込むように捕食するため、いかに自然に、そして食べやすくエサをセットするかが釣果を分ける鍵となります。
エサの王道、ジャリメと青イソメ
シロギス釣りのエサは、主に2種類のゴカイ(虫エサ)が使われます。釣具店で「シロギス釣りのエサをください」と言えば、まず間違いなくこれらのどちらかを勧められるでしょう。
- ジャリメ(別名:イシゴカイ): シロギス釣りの絶対的エースと言えるエサです。青イソメに比べて細く柔らかいため、口の小さなシロギスでも抵抗なくスッと吸い込むことができます。動きも適度でアピール力もあり、迷ったらまずジャリメを選んでおけば間違いありません。
- 青イソメ: ジャリメよりも太くて硬く、生命力が強いため水中でも非常によく動きます。その強いアピール力は、水の濁りが強い時や、遠投して広範囲の魚に気づかせたい時に効果的です。また、エサ持ちが良いため、良型のシロギスやマダイ、マゴチといった思わぬ大物が掛かることも期待できます。
釣果に直結する「正しいエサの付け方」
ここでは、最も基本的なジャリメの付け方をステップ・バイ・ステップで解説します。この一手間が、アタリの数を劇的に変えることがあります。
- Step 1: 頭の硬い部分をカットするジャリメの頭部(噛みつく顎がある部分)は硬く、シロギスがこれを嫌って吐き出してしまうことがあります。釣果を優先するなら、思い切って頭を指でちぎるか、ハサミでカットしましょう。
- Step 2: 「通し刺し」で真っ直ぐに刺すこれが最も重要なポイントです。針先を、エサの切り口から入れ、針の軸(ジク)に沿わせるように、できるだけ真っ直ぐに刺していきます。エサが曲がっていると、水中で不自然に回転してしまい、シロギスに違和感を与えてしまいます。エサが針と一体化するようなイメージで、丁寧に刺しましょう。
- Step 3: 「タラシ」の長さを調整する「タラシ」とは、針先から垂れ下がっているエサの余分な部分のことです。この長さが釣果を左右します。
- 基本は短め(1cm程度): シロギスの活性が高い時や、数釣りを狙う場合は、タラシは5mm~1cm程度と短くするのが基本です。これにより、シロギスがエサを吸い込んだ時に、針も一緒に口の中に入りやすくなり、フッキング率が上がります。
- 食いが渋い時は長め: アタリはあるのに針掛かりしない時や、大型をじっくり狙いたい時は、アピール力を高めるためにタラシを2cm~3cmと少し長めに取ると効果的な場合があります。
- プロのコツ:石粉(いしこ)を活用する生きたゴカイはぬるぬる滑って非常に付けにくいものです。そんな時は「石粉」や「滑り止めパウダー」と呼ばれる粉を使いましょう。エサにまぶすだけで滑りが取れ、驚くほど簡単に、そして綺麗に針に刺せるようになります。
エサ付けは、単なる作業ではありません。その日のシロギスの活性を読み取りながら、「今日は食いが良いから短くしよう」「アタリが小さいから、柔らかい胴体部分だけを使ってみよう」というように、工夫を凝らすことができる奥深い技術なのです。このひと手間を惜しまないことが、隣の釣り人よりも一匹多く釣るための秘訣です。
実釣編!投入から取り込みまでの完全ステップガイド

道具とエサの準備が整ったら、いよいよ実釣です。ここでは、仕掛けを投げてから魚を釣り上げるまでの一連の流れを、初心者の方でも迷わないように、4つのステップに分けて詳しく解説します。
Step 1: 安全第一!基本のキャスト
まずは仕掛けを海に投入する「キャスト」です。豪快な動作ですが、最も注意が必要な場面でもあります。
- 後方確認: キャストする前には、必ず、必ず後ろを振り返って、人や障害物がないかを確認してください。これは釣りの最も基本的なマナーであり、安全のための絶対条件です。
- タラシの長さを決める: リールから竿先までの仕掛けの長さ(タラシ)を30cm~50cm程度にします。
- キャスト: 腕の力だけで投げようとせず、竿のしなり(反発力)を利用して、仕掛けの重みを竿に乗せるようにして投げます。目標地点に向かって、しなやかに竿を振り抜きましょう。
- サミング(フェザリング): 仕掛けが着水する直前に、リールから出ていくラインを人差し指で軽く触れてブレーキをかけます。これを「サミング」または「フェザリング」と呼びます。この一手間によって、天秤と仕掛けが空中で一直線に伸び、着水時の糸絡みを劇的に減らすことができます。
Step 2: シロギスを誘う「さびき方」の基本と応用
仕掛けが海底に着いたら(オモリが底に着くと、ラインの放出が止まります)、いよいよシロギスを誘い出します。この誘いの動作を「さびく」と言います。
- 基本のさびき方: シロギス釣りでは、複雑なアクションは必要ありません。基本は**「ただゆっくりと引いてくる」**だけです。
- リール巻き: リールを1秒間にハンドル半回転~1回転くらいの非常にゆっくりとしたスピードで巻き続けます。
- 竿さびき: 竿先をゆっくりと手前に引き、その分たるんだラインをリールで巻き取る、という動作を繰り返します。こちらの方が、海底の様子や魚のアタリを感じ取りやすいとされています。
- 釣果アップの応用テクニック:
- ストップ&ゴー: ただ引いてくるだけでなく、途中で5秒~10秒ほど動きを止めて「間」を作ります。シロギスは動いているエサを追いかけ、止まった瞬間に食いついてくることが非常に多いです。
- シェイク(小刻みな誘い): 竿先をチョンチョンと小さく揺すって、エサに不規則な動きを与えたり、オモリで海底を叩いて砂煙を上げたりするのも、遠くのシロギスにアピールするのに効果的です。
その日の状況によって、速い動きに反応が良い日もあれば、ゆっくりとした動きにしか食ってこない日もあります。色々なスピードや誘い方を試して、その日の「当たりパターン」を見つけ出すのが、さびき釣りの面白さです。
Step 3: 「ブルブルッ!」アタリの感知と「連掛け」の狙い方
正しく誘うことができれば、やがて竿先にシロギスからの合図が届きます。
- アタリを感じる: シロギスのアタリは「ブルブルッ!」や「コンコンッ」といった、小気味よくも明確な振動として手元に伝わります。この瞬間が、シロギス釣りの最大のハイライトです。
- 慌てない!これが最重要!: 初心者が最もやりがちな失敗が、この最初のアタリで驚いて、すぐにリールを高速で巻いてしまうことです。これをやってしまうと、まだエサを完全に飲み込んでいないシロギスが針から外れてしまったり、釣果を伸ばす最大のチャンスを逃してしまいます。
- 「連掛け」を狙う: シロギスは群れで行動する魚です。つまり、1匹釣れた場所には、ほぼ間違いなく仲間がいます。最初のアタリを感じたら、リールを巻くのを止めるか、さらにゆっくりと巻き続けます。すると、針に掛かった1匹目のシロギスが暴れることで、周りにいる他のシロギスの好奇心を刺激し、「なんだなんだ?」と集まってきます。そして、残りの針に次々と食いついてくるのです。
- 追い食いを待つ: 「ブルブルッ!」という最初のアタリの後、さらに「ゴンゴンッ!」「ググッ!」と、次々に重みが増していく感触が伝わってきます。これが「追い食い」です。この連鎖的なアタリを存分に楽しんでください。
Step 4: 魚に優しく、確実に。取り込みと針の外し方
アタリが止まったり、竿が十分に重くなったら、いよいよ取り込みです。
- 一定速度で巻き上げる: 竿を立てて、ラインがたるまないように一定の速度でリールを巻いてきます。
- 抜き上げ: 魚が波打ち際まで来たら、波のタイミングに合わせて一気に砂浜に引き上げます。
- 針の外し方: シロギスは針を飲み込んでしまうことがよくあります。無理に引っ張るとハリス(針に結んである糸)が切れてしまいます。そんな時は、シロギエラに親指と人差し指を入れ、エラ蓋をぐっと押し広げるようにしながら針を引くと、不思議なほど簡単に外すことができます。これは覚えておくと非常に便利なテクニックです。
この「アタリを感じる→待つ→追い食いさせる→取り込む」という一連の流れをマスターすれば、あなたの釣果は2倍、3倍と飛躍的にアップするはずです。
「釣れない…」を解決!釣果アップのための上級テクニックと対策

ガイド通りにやってみても、なぜか釣れない…。そんな壁にぶつかることもあります。しかし、それは次のステップに進むためのチャンスです。ここでは、シロギス釣りでよくある「困った」を解決するための、具体的な対策とテクニックを紹介します。
アタリがまったくない…考えられる原因と対策
竿先に何の反応もない時間が続くと、心が折れそうになります。そんな時は、以下の点を確認してみましょう。
- 場所を移動する(キスは足で釣れ!): シロギスは群れで回遊しているため、ほんの10m場所が違うだけで釣果が天と地ほど変わることがあります。同じ場所で粘り続けるのではなく、少しずつ立ち位置を左右にずらしながら、広範囲を探ってみましょう。特に広大なサーフでは、「キスは足で釣る」という格言があるほど、歩いて群れを探し出すことが重要です。
- 誘うスピードを変える: いつも同じスピードでさびいていませんか?魚の活性は時間と共に変化します。超スローに引いてみたり、逆に少し速めに巻いてみたりと、リトリーブ速度に変化をつけて、その時の反応を探りましょう。
- エサを新鮮なものに交換する: 一度投げたエサは、水分を吸ってふやけたり、体液が抜けてアピール力が落ちてしまいます。アタリがない時こそ、こまめに新鮮なエサに付け替えることが大切です。
- 投げる距離を変える: いつも同じ距離ばかり投げていませんか?その日の状況によって、シロギスが岸のすぐ近くにいることもあれば、遠い沖にしかいないこともあります。近距離から遠距離まで、扇状に投げ分けて、魚がいるレンジ(距離)を探し出しましょう。
アタリはあるのに釣れない!(空振り)
「ブルブルッ!」というアタリはあるのに、巻き上げてみるとエサだけ取られている…。これは非常にもどかしい状況ですが、原因はほぼ2つに絞られます。
- 針のサイズが合っていない: シロギスの口は非常に小さいです。アタリに対して針が大きすぎると、うまく吸い込むことができず、エサの端だけをかじって終わってしまいます。そんな時は、思い切って針の号数を一つ小さなものに交換してみましょう。これだけで劇的にフッキング率が上がることがあります。
- エサのタラシが長すぎる: 針先から垂れているエサ(タラシ)が長すぎると、シロギスはその先端部分だけをくわえて引っ張ります。これでは針まで口に入りません。タラシを1cm以下、あるいはゼロにすることで、アタリと同時に針が口に入るようになります。
厄介なゲスト「外道」との付き合い方
シロギスを狙っていると、様々なゲスト(本命以外の魚)、通称「外道(げどう)」が釣れてきます。彼らは厄介者ですが、実は海底の状況を教えてくれる貴重な情報源でもあります。
- フグ: 仕掛けを切っていく厄介者ですが、フグが釣れるということは、その場所の環境が良い証拠でもあります。フグばかり釣れる時は、誘うスピードが遅すぎる可能性が高いです。仕掛けを速く動かすことで、泳ぎの遅いフグをかわし、シロギスに口を使わせることができます。
- メゴチ・ハゼ: これらの魚は、海底に張り付くように生息しています。メゴチやハゼがよく釣れる場合は、仕掛けを止めすぎているか、引くのが遅すぎるサインです。また、シロギスが好むサラサラの砂地ではなく、少し泥が混じった場所にいる可能性も示唆しています。
- ベラ・ガシラ(カサゴ): これらの魚は岩場(根)を好みます。もしベラやカサゴが釣れたら、あなたの仕掛けは砂地ではなく、岩礁帯の近くにある証拠です。根掛かりで仕掛けを失う前に、投げる方向を変えて、完全に砂地の場所を探しましょう。
このように、外道の種類によって、自分の釣りがどうズレているのかを分析し、修正することができます。外道を釣ってがっかりするのではなく、「なるほど、今はこうなっているのか」と、次の一投に活かすヒントにしましょう。
目指せ「ヒジタタキ」!大型シロギスを狙う秘訣
数釣りも楽しいですが、やはり釣り人なら一度は25cmを超える「ヒジタタキ」と呼ばれるような大物を釣ってみたいもの。大型狙いには、数釣りとは少し違ったアプローチが必要です。
- 時期と時間: 越冬に備えて荒食いする秋の「落ちギス」シーズンが最大のチャンスです。また、大型の個体は警戒心が強く、日中よりも朝夕のマズメ時や、夜間に活発に活動することがあります。
- 場所: 多くの釣り人が入る人気ポイントよりも、少しアクセスの悪い場所や、遠投しないと届かない沖のカケアガリなど、プレッシャーの低い場所を狙うのが定石です。
- 仕掛け: 大型シロギスの引きは強烈です。ハリスは普段より太めの1.5号以上、針も軸が太くバレにくい流線針などの7号以上を選び、不意の大物にも対応できるようにしましょう。
- エサ: アピール力の高い青イソメを1匹丸ごと付けるなど、エサを大きくして小型のシロギスに見切らせ、大型に的を絞るのも有効な戦略です。
- 釣り方: 常に仕掛けを動かす引き釣りだけでなく、カレイ釣りのように有望なポイントに投げて待つ**「置き竿」釣法**も効果的です。時折、竿をゆっくりと聞いて誘いをかけることで、潜んでいる大物にアピールします。
【関東エリア】初心者におすすめ!シロギス釣り場ベストセレクション

さて、いよいよ実践の場となる釣り場選びです。ここでは、都心からのアクセスも良く、初心者や家族連れでも安心して楽しめる関東エリアの代表的なシロギス釣り場を、必要な情報と共に厳選してご紹介します。
神奈川県のおすすめ釣り場
都心から最も近く、投げ釣り文化が根付いたエリア。サーフから海釣り施設まで、多彩な選択肢があります。
- 大磯海岸(中郡大磯町): 日本の投げ釣り発祥の地とも言われる歴史あるサーフ。広大な砂浜が広がり、遠浅なため夏場はちょい投げで、春・秋は本格的な投げ釣りで楽しめます。毎年6月には歴史ある釣り大会も開催されます。
- アクセス: JR東海道本線「大磯駅」から徒歩約10分。
- 設備: 周辺に有料駐車場、トイレあり。
- 片瀬海岸・江の島(藤沢市): 湘南を代表する観光地であり、人気の釣り場。海岸からのちょい投げや、境川河口での釣りが楽しめます。非常に人気が高いため、特に夏場は早朝から場所取りが必要です。周辺には多くの釣り船もあり、船からのシロギス釣りも盛んです。
- アクセス: 小田急江ノ島線「片瀬江ノ島駅」から徒歩すぐ。
- 設備: 周辺に有料駐車場、公衆トイレ多数。
- 有料海釣り施設(横浜市): 本牧海づり施設、大黒海づり施設、磯子海づり施設は、初心者や家族連れに絶対的におすすめです。安全な釣り座が確保されており、トイレや売店、レンタルタックルも完備。スタッフに当日の釣況を聞けるのも大きなメリットです。遠投しなくても水深があるため、安定した釣果が期待できます。
- アクセス: 各施設とも公共交通機関または車でのアクセス。
- 設備: 駐車場、トイレ、売店、レンタル完備。
千葉県のおすすめ釣り場
広大な砂浜と穏やかな内湾を持つ千葉県は、シロギスの宝庫です。
- 富津海岸・富津公園(富津市): 東京湾に突き出た富津岬周辺に広がる広大な遠浅サーフ。特に夏場のちょい投げに最適で、家族連れで賑わいます。隣接する富津公園には広大な無料駐車場とトイレが完備されており、利便性は抜群です。
- アクセス: 館山自動車道「木更津南IC」から車で約20分。
- 設備: 広大な無料駐車場、公園内にトイレ多数。
- 館山・北条海岸(館山市): 「鏡ヶ浦」と呼ばれるほど波が穏やかな館山湾に面した美しい海岸。波が静かで根掛かりも少なく、非常に釣りやすいのが特徴です。駅から近く、海岸沿いに無料の市営駐車場もあるため、手軽に楽しめます。
- アクセス: JR内房線「館山駅」から徒歩約5分。
- 設備: 無料駐車場、トイレあり。
- 内房・外房の各漁港: 長浦港や金谷港、鴨川港など、千葉県にはシロギスが釣れる漁港が数多く点在します。漁港は足場が良く、トイレが併設されていることも多いですが、漁業関係者の邪魔にならないよう、立ち入り禁止の場所には絶対に入らないなど、マナーを守って釣りを楽しみましょう。
関東おすすめシロギス釣り場 早見表
場所名 | 県 | エリア | 特徴 | ちょい投げ | 本格投げ | 駐車場 | トイレ | 電車アクセス |
大磯海岸 | 神奈川 | 湘南 | 投げ釣り発祥の地。広大なサーフ。 | ◎ | ◎ | 有(有料) | ○ | ◎(大磯駅) |
片瀬海岸 | 神奈川 | 湘南 | 都心から近く超人気。夏は混雑。 | ◎ | ○ | 有(有料) | ○ | ◎(片瀬江ノ島駅) |
大黒海づり施設 | 神奈川 | 横浜 | 安全な有料施設。初心者・家族連れに最適。 | ◎ | ○ | 有(有料) | ◎ | △(バス) |
富津海岸 | 千葉 | 内房 | 遠浅サーフ。広大な無料駐車場が魅力。 | ◎ | ○ | ◎(無料) | ◎ | △(バス) |
北条海岸 | 千葉 | 南房総 | 波が穏やかで釣りやすい。駅近。 | ◎ | ○ | ◎(無料) | ○ | ◎(館山駅) |
市原市海づり施設 | 千葉 | 東京湾 | 東京湾奥の有料施設。安定した釣果。 | ◎ | ○ | 有(有料) | ◎ | △(バス) |
最後に:安全に楽しく、シロギス釣りに出かけよう
ここまで、シロギス釣りの魅力から具体的なテクニック、そして釣り場まで、幅広く解説してきました。シロギスは、釣りの基本が詰まった素晴らしいターゲットです。自然を読み、魚の気持ちを考え、試行錯誤を繰り返す。そのプロセスこそが、釣りの本当の楽しさなのかもしれません。
最後に、皆さんが末永く釣りを楽しむために、いくつかのお願いがあります。
- 安全第一を心掛ける: 釣りは楽しいレジャーですが、自然が相手である以上、危険も伴います。キャストする際は必ず後方を確認する。足場の悪い場所や海釣り施設ではライフジャケットを着用する。天候の急変に注意し、雷が鳴ったらすぐに竿をたたむ。これらの基本的な安全対策を、決して怠らないでください。
- マナーを守り、未来へ繋ぐ: 釣り場は、釣り人だけのものではありません。漁業関係者や、他のレジャーを楽しむ人々への配慮を忘れずに。そして、最も大切なことは、自分が出したゴミは必ず持ち帰ることです。特に、切れた釣り糸や針は、鳥などの野生動物を傷つける原因になります。美しい釣り場を未来の子供たちに残していくことも、我々釣り人の大切な責任です。
知識と戦略を武器に、安全とマナーを心に留めてフィールドに立てば、きっと「砂浜の女王」はあなたに微笑んでくれるはずです。澄んだ空の下、心地よい潮風に吹かれながら竿を出す喜び。竿先を震わせる小気味よいアタリの興奮。そして、家族や仲間と囲む、釣りたての天ぷらの格別な味。
このガイドが、あなたの素晴らしいシロギス釣り体験の第一歩となることを、心から願っています。
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