はじめに:エギング成功への第一歩 – 目の前の「エギの壁」を乗り越える

釣具店のエギングコーナーに足を踏み入れた瞬間、誰もが一度は圧倒される経験があるでしょう。壁一面に並べられた、数百種類にも及ぶ色とりどりのエギ。その光景を前に、「一体どれを選べばいいんだ…」と途方に暮れてしまうのは、エギング初心者が必ず通る道です。
しかし、その混乱は今日で終わります。この記事は、その漠然とした不安を「確かな自信」に変えるための、あなたのための教科書です。エギ選びにおける最重要項目である「号数(ごうすう)」の本当の意味、釣果を劇的に左右する「沈下速度(ちんかそくど)」という概念、そして科学的根拠に基づいた「ピンクとオレンジ」がなぜ鉄板カラーと呼ばれるのか。これらの核心的な知識を、一つひとつ丁寧に解きほぐしていきます。
この記事を読み終える頃には、あなたは単に「何を買うべきか」を知るだけでなく、「なぜそれを選ぶのか」「いつそれを使うべきか」という、エギンガーとして最も重要な思考のフレームワークを身につけているはずです。さあ、エギング成功への扉を開きましょう。
第1章 最も重要な数字 – エギの「サイズ(号数)」と「沈下速度」を理解する

エギのパッケージに書かれた数字の意味を正しく理解すること。それが、エギ選びのスタートラインです。多くの初心者が誤解しているポイントを明確にし、釣果に直結する真の性能指標を学びましょう。
1.1 最大の誤解を解く:「号数」は重さではなく「サイズ」である
まず、最も重要な基礎知識から始めましょう。エギの「3.0号」や「3.5号」といった「号」で表される数字は、エギの**重さではなく、ボディの大きさ(全長)**を示す単位です。これはエギングにおける絶対的な原則であり、すべての選択の土台となります。
もちろん、一般的には号数が大きくなるほどエギは重くなる傾向にあります。しかし、同じ3.5号のエギであっても、モデルやタイプによって実際の重量や水中での性能は全く異なります。この「タイプ」こそが、エギの性能を決定づける真の鍵なのです。
1.2 真の性能指標:「沈下速度」こそが釣果を左右する
エギ選びで「号数」以上に注目すべき、最も重要な性能指標。それが「沈下速度」です。パッケージには通常、「約3秒/m」のように、「1メートル沈むのに何秒かかるか」という形式で記載されています。
なぜ沈下速度が重要なのでしょうか。それは、アオリイカがエギに襲いかかるタイミングのほとんどが、エギがひらひらと沈んでいく「フォール中」だからです。沈下速度をコントロールするということは、イカがエギを抱くための「食わせの時間」を意図的に作り出し、狙った水深(レンジ)にエギを正確に送り届けることを意味します。
言わば、沈下速度は車のギアのようなものです。浅い場所、深い場所、潮の流れが速い場所など、状況という名の地形に合わせて適切なギアを選択しなければ、目的地(イカのいる場所)にはたどり着けません。
1.3 エギの3つの個性:ノーマル、シャロー、ディープを使い分ける
同じ「3.5号」というサイズの中にも、沈下速度の違いによって主に3つのタイプが存在します。この3つの個性を理解することが、状況対応能力を飛躍的に向上させます。
- ノーマル (Normal): 最も標準的なタイプで、沈下速度は約3秒/m前後が基準です。あらゆる状況に対応しやすく、初心者が最初に手にすべき基準となる存在です。迷った時は、まずこのノーマルタイプから始めるのが最も失敗が少ない選択です。
- シャロー (Shallow): ノーマルタイプより軽く、沈下速度が約6秒/m以上と非常にゆっくり沈むように設計されています。水深の浅い場所や、海藻が生い茂る「藻場」の上をじっくりと攻める際に根掛かりを防ぎます。また、警戒心の強いイカに対して、より長くエギを見せてアピールしたい時にも絶大な効果を発揮します。
- ディープ (Deep): ノーマルタイプより重く、沈下速度が約2秒~2.5秒/mと速く設定されています。水深が深いポイントを効率よく探りたい時や、風が強い日、潮の流れが速い状況でも、エギをしっかりと海底まで沈めたい時に使用します。
この他にも、さらにゆっくり沈む「スーパーシャロー」や、ボートエギング専用の「ティップラン」用エギも存在しますが、まずは陸っぱりからのエギングでは、この基本となる3タイプ(ノーマル、シャロー、ディープ)の存在を覚えておけば十分です。
表1:一目でわかるエギの性能比較チャート
号数 | タイプ | 代表的な重量 (g) | 代表的な沈下速度 (秒/m) |
2.5号 | ノーマル | 10g – 11g | 約5.0秒 – 5.5秒 |
3.0号 | シャロー | 14.5g – 15g | 約6.0秒 – 8.0秒 |
ノーマル | 15g – 16g | 約3.0秒 – 3.5秒 | |
3.5号 | シャロー | 19.5g – 20g | 約6.0秒 – 8.0秒 |
ノーマル | 21g – 22g | 約3.0秒 | |
ディープ | 22.5g | 約2.0秒 – 2.5秒 |
注:重量と沈下速度は代表的なモデル(ヤマシタ エギ王シリーズなど)を参考に記載しており、メーカーや製品によって異なります。
この表が示すように、「3.5号のエギ」は単一の存在ではありません。それは性能の異なる複数の選択肢を含むカテゴリーなのです。この事実を理解し、パッケージの「号数」だけでなく「沈下速度」を確認する癖をつけること。それが、初心者から一歩抜け出すための、決定的で重要なステップとなります。
第2章 あなたの武器庫の中核:3.0号 vs 3.5号の徹底比較

エギングにおいて、最も頻繁に選択を迫られるのが「3.0号」と「3.5号」の使い分けです。それぞれの号数が持つ特性を深く理解し、状況に応じて最適な一本を選び出す能力を身につけましょう。
2.1 王道の存在:3.5号 – パワーとアピール力
3.5号は、エギングにおける「基準」や「スタンダード」と称されるサイズです。特に、春の産卵期に接岸してくる大型の親イカを狙う際には、絶対的な主力となります。
その最大の利点は、その大きさと重量がもたらす圧倒的な性能にあります。
- 優れた遠投性能: 重さがあるため、向かい風の中でも飛距離を稼ぎやすく、広範囲を探ることが可能です。
- 水中での安定性: 風や波、潮の流れが強い状況でもエギが流されにくく、安定した姿勢を保ちやすいため、アングラーの意図したアクションを伝えやすいです。
- 強いアピール力: 大きなシルエットは、大型のイカに対して強い存在感を示し、捕食対象として認識させやすいです。
これらの特性から、3.5号が特に輝くのは、水深10m以上のディープレンジ、潮通しの良いポイント、風の強い日、そして「とにかく遠投して広範囲を効率よく探りたい」という戦略的な場面です。
2.2 変幻自在の仕事人:3.0号 – 喰わせとバランス
もし3.5号が王様なら、3.0号は影の実力者であり、多くの場面でより優れた結果をもたらす万能な仕事人です。特に、エギングのもう一つのハイシーズンである秋においては、3.0号が基準サイズとなります。
3.0号の利点は、その絶妙なバランス感覚に集約されます。
- 秋イカに最適なサイズ感: 秋に釣れる新子(その年に生まれた小型のイカ)にとって、3.0号は捕食しやすいジャストサイズです。大きすぎる3.5号には警戒してしまうイカも、3.0号には素直に抱いてくることが多々あります。
- プレッシャーへの対応力: 釣り人が多い人気ポイントでスレた(警戒心が強くなった)イカに対し、大きすぎないシルエットが違和感を与えにくく、口を使わせるきっかけになります。
- 浅場での操作性: 水深5m~10m前後の、初心者が釣りやすい堤防や漁港といったポイントで非常に扱いやすいです。3.5号では速く沈みすぎて根掛かりが多発するような場面でも、3.0号であれば底を丁寧かつ安全に探ることが可能です。
3.0号は、「2.5号では軽すぎてポイントに届かない、でも3.5号では重すぎて底を取りづらい」といった、あらゆる「隙間」の状況を埋めてくれる、まさに縁の下の力持ちなのです。
2.3 「3.5号の罠」- 初心者が陥りがちな失敗
ここで、多くの初心者が陥る「3.5号の罠」について警鐘を鳴らしておきます。それは、「基準サイズだから」という理由だけで、どんな状況でも3.5号のエギを投げ続けてしまうことです。
例えば、初心者がよく訪れるような、穏やかで水深の浅い湾内でノーマルタイプの3.5号を使うとどうなるでしょうか。エギは着水後、あっという間に海底に到達し、アクションを加える間もなく根掛かりしてしまいます。これはイカを釣る以前の問題であり、高価なエギを失うだけでなく、釣りそのものへのモチベーションを著しく低下させる原因となります。
「なんとなく3.5号」から卒業し、釣り場の水深や季節に合わせて3.0号を適切に選択できること。それが、釣果を安定させるための重要な思考法です。
表2:状況別決戦! 3.0号 vs 3.5号
比較項目 | 3.0号 | 3.5号 |
メインシーズン | 秋(10月~11月)が中心 | 春(3月~6月)が中心 |
主なターゲット | 数釣り(小型~中型) | サイズ狙い(大型) |
得意な水深 | 5m~10m前後の中層域 | 10m以上の深場 |
最適な状況 | 潮が穏やか、浅場、プレッシャーが高い場所 | 潮が速い、深場、風が強い日 |
戦略的メリット | 丁寧な誘い、根掛かり回避 | 遠投性能、サーチ能力の高さ |
注意点 | 遠投性能や強風時の安定性は3.5号に劣る | 浅場での根掛かりリスクが高い |
この表は、どちらが優れているかを示すものではありません。それぞれの号数が持つ役割と得意な戦場を明確にするためのものです。3.5号は遠距離を制圧する重戦車、3.0号は近~中距離を巧みに攻略する軽快な戦闘機とイメージすると良いでしょう。あなたの目の前のフィールドがどちらの戦場にふさわしいかを見極めることが、勝利への鍵となります。
第3章 「必須」カラーの真実 – なぜピンクとオレンジは最強のパイロットなのか

エギのカラー選びは、まさに無限の迷宮です。しかし、その迷宮には確かな出口が存在します。それが「ピンク」と「オレンジ」という2つの鉄板カラーです。なぜこの2色が絶対的な信頼を置かれているのか、アオリイカの視覚の科学に迫りながら解き明かします。
3.1 イカの視覚の科学 – 世界は白黒で見えている
まず、エギのカラー戦略を組み立てる上で最も重要な生物学的事実を知る必要があります。それは、**アオリイカは色を識別できない(色盲である)ということです。彼らの高度に発達した眼は、人間のように色彩を認識するのではなく、光の明暗、つまりコントラスト(濃淡の差)と物体の輪郭(シルエット)**を極めて鋭敏に捉えています。
この事実は、エギの「色」選びが、実際には「背景に対してどれだけ効果的なコントラストを生み出せるか」という「明るさ」選びであることを意味します。この視点を持つことで、カラーローテーションの全てが論理的に理解できるようになります。
3.2 ピンクとオレンジ – コントラストの王様
では、なぜピンクとオレンジが有効なのでしょうか。アオリイカの白黒の世界では、ピンクやオレンジといった色は、**中間の明るさを持つ「グレー」**として認識されていると考えられています。
この「グレー」という明るさが、驚くべき万能性を発揮します。
- 明るい背景(日中の海面)に対しては、暗いシルエットとして際立つ。
- 暗い背景(薄暗い海底や岩礁)に対しては、明るいシルエットとして浮かび上がる。
つまり、ピンクとオレンジは、光量の多い日中から少ないマヅメ(朝夕)、晴天から曇天、澄み潮から濁り潮まで、非常に幅広い状況で安定してエギのシルエットをイカに認識させることができるのです。
この特性から、ピンクとオレンジは「パイロットカラー」や「サーチベイト」と呼ばれます。その日、その場所のイカの活性や居場所を探るための一投目に投げることで、遠くにいるイカにもエギの存在を気づかせ、効率的に反応を引き出すことができるのです。
3.3 隠れたメリット – アングラーにとっての視認性
専門的な議論では見落とされがちですが、ピンクやオレンジには初心者にとって極めて重要な、もう一つのメリットがあります。それは、人間の目にとっても非常に見やすいということです。
エギング初心者のうちは、自分のエギがどこにあり、どのように動いているかを把握することが上達の近道です。視認性の高いピンクやオレンジのエギを使えば、
- キャストしたエギの着水点を確認しやすい。
- 水面近くでのエギの動き(ダートアクション)を目で見て学べる。
- エギを追いかけてくるイカの姿を発見しやすい(サイトフィッシング)。
など、多くの恩恵を受けられます。これは、釣りの技術を学び、モチベーションを維持する上で計り知れない価値を持ちます。
科学的には、アオリイカが最も感知しやすい光の波長は青緑色(約494nm)とされています。そのため、澄んだ水中では青や緑系の色がイカにとって最も「明るく」見えている可能性があります。しかし、エギングが行われるマヅメや曇天、多少の濁りといった光量が十分でない「現実のフィールド」においては、特定の波長の強さよりも、あらゆる背景に対して安定したコントラストを生み出すピンクやオレンジの汎用性が勝るのです。これが、この2色が長年にわたり王座に君臨し続ける理由です。
第4章 上級者の領域へ – 「下地テープ」の秘密言語を解読する

エギの布(上布)の色がそのエギの第一印象を決める「服」だとすれば、その下に隠された「下地テープ」は、エギの性能を根底から支える「エンジン」です。この下地の存在を理解し、使い分けることで、あなたのエギングは一気に深みを増し、エキスパートの領域へと近づきます。
4.1 布の奥に潜む、アピールの源泉
エギのカラーリングは、実は二層構造になっています。我々が普段見ているピンクやオレンジの布の下には、光を操るための特殊なテープが貼られています。これが「下地テープ」です。
下地の役割は、光を「反射」させたり、「吸収」したり、「透過・発光」させたりすることで、エギの光り方やシルエットの出方を根本的にコントロールすることです。上布の色が「ボディカラー」なら、下地テープは「ヘッドライトやメッキパーツ」のようなもの。光との相互作用をデザインするのが、下地テープの役割なのです。
4.2 最初に揃えるべき3つのテープ – 必須の三本柱
下地テープには8種類以上ものバリエーションが存在しますが、初心者が最初に揃えるべきは、最も汎用性が高く、状況変化への対応力を格段に上げてくれる以下の3種類です。
- 金テープ (Gold Tape): 究極のオールラウンダー。光を強く反射する特性を持ち、晴れた日中のアピール力は絶大です。それだけでなく、マヅメ時や濁り潮の中でも、わずかな光を拾ってキラキラと存在感を放つため、非常に幅広い状況で活躍します。イカの活性が高い時や、広範囲からイカを寄せたい時の第一選択肢となります。「迷ったら金」と言われるほどの信頼性を誇る、まさに王道の下地です。
- 赤テープ (Red Tape): シルエットの達人。金テープが光を反射するのに対し、赤テープは光を吸収する性質を持ちます。これにより、エギの輪郭が黒い影のようにクッキリと浮かび上がります。この効果は、光量が少ない朝夕マヅメ、夜間、そして水深のある場所で絶大な威力を発揮します。派手なフラッシング(光の反射)よりも、明確なシルエットで獲物を認識する傾向が強い大型のイカに特に有効とされ、春イカ狙いでは欠かせない存在です。
- ケイムラ (Keimura / UV Glow): 秘密兵器。ケイムラは、人間の目には見えない紫外線(UV)に反応して青白く発光する特殊な下地です。曇りや雨の日など、太陽光は弱くても紫外線は強く降り注いでいる状況で、他のエギにはない独特のアピールをします。また、澄み潮でイカの警戒心が高い時に、過度なフラッシングを嫌うイカに対して、ナチュラルでありながら強いアピールが可能です。
真のエギ選択とは、上布の色を選ぶだけでなく、その下で光を操る下地テープとの「組み合わせ」を考えることです。「ピンク×金テープ」のエギは、日中に強いアピールをするための選択肢。「ピンク×赤テープ」のエギは、同じピンクでもマヅメ時にシルエットを際立たせるための戦略的な選択肢となります。このように、あなたは単なる色ではなく、特定の「光の相互作用プロファイル」を選択しているのです。
表3:初心者のための下地テープ早見表
下地テープ | 最適な時間帯 | 最適な天気 | 最適な潮の状況 | スーパーパワー(得意技) |
金 (Gold) | 朝マヅメ~日中 | 晴れ、曇り | 澄み潮~ささ濁り | 強力なフラッシングで広範囲にアピール |
赤 (Red) | 朝・夕マヅメ、夜 | 曇り、雨 | 澄み潮、濁り潮、深場 | 鋭いシルエットで存在感を強調 |
ケイムラ (UV) | 日中、マヅメ | 曇り、雨 | 澄み潮 | 紫外線発光によるステルスアピール |
第5章 最初のEGIケースを組む – 9割の状況をカバーする鉄壁の5本

これまで学んできた理論を、具体的な「買い物リスト」に落とし込みましょう。ここに示す5本のエギは、サイズ、カラー、下地テープ、沈下速度のバランスを考慮し、初心者が遭遇するであろう状況の90%以上に対応できるように戦略的に組まれたスターターキットです。この5本があれば、自信を持って最初の釣行に臨むことができます。
- 春の捜索者 (The Springtime Searcher)
- スペック: 3.5号 ノーマル、ピンク系ボディ × 金テープ
- 役割: 春の大型イカ狙いの基本となる一本。優れた遠投性能で広範囲を探り、金テープの強いフラッシングで高活性なイカにアピールします。天気の良い日中のパイロットエギとして、まず最初に投げるべき存在です。
- マヅメの暗殺者 (The Low-Light Killer)
- スペック: 3.5号 ノーマル、オレンジ系ボディ × 赤テープ
- 役割: イカの活性が最も高まる朝夕のマヅメ時や、光の届きにくい深場を攻略するための切り札。オレンジの高い視認性と、赤テープが作り出す強烈なシルエットの組み合わせは、薄暗い状況下で絶大な効果を発揮します。
- 秋の万能選手 (The Autumn All-Rounder)
- スペック: 3.0号 ノーマル、オレンジ系ボディ × 金テープ
- 役割: 秋の数釣りシーズンにおける絶対的なエース。秋イカに最適な3.0号サイズで、オレンジと金の組み合わせが日中のあらゆる状況に対応します。飛距離、操作性、アピール力のバランスが最も取れた一本です。
- 曇天の専門家 (The Cloudy Day Specialist)
- スペック: 3.0号 ノーマル、ピンク系ボディ × ケイムラ下地
- 役割: 曇りや雨の日、またはプレッシャーが高くイカがスレている状況で使用します。紫外線に反応するケイムラが、人間の目には見えない光でナチュラルに、しかし強くアピールし、他のエギに見向きもしなかったイカを振り向かせます。
- 最終兵器 (The “Picky Eater” Option)
- スペック: 3.0号 シャロー、ナチュラル系(アジやイワシ)ボディ × 銀テープ
- 役割: 明るいカラーに反応がない時、イカがエギを追いかけては来るものの抱ききらない時に投入する最終兵器。ゆっくりとしたフォールでじっくり見せつけ、ベイトフィッシュそっくりのリアルなカラーと銀テープの自然なきらめきで、最後の最後で警戒心を解かせます。
戦略的ローテーションのすすめ
このスターターキットの真価は、個々のエギの性能だけでなく、それらをローテーションさせることで発揮されます。
- Step 1 (サーチ): まずは状況に応じて
#1
(春)か#3
(秋)を投げ、広範囲にイカがいるかを探ります。 - Step 2 (状況変化への対応): 30分ほど投げて反応がなければ、時間帯や天候を考慮し、
#2
(マヅメ時)や#4
(曇天時)に交換してアピールの質を変えます。 - Step 3 (喰わせ): イカがエギの後ろをついてくるのに抱かない場合は、警戒している証拠です。ここで
#5
を投入し、よりナチュラルなアピールで最後のひと押しを狙います。
このシンプルな思考フローチャートを持つことで、あなたはただ闇雲にエギを投げるのではなく、イカの反応を見ながら戦略的にアプローチする「考えるエギンガー」になることができるのです。
ボーナス章 成功への準備 – 最初の釣行に必要なその他の重要装備

完璧なエギを選んでも、それだけでは釣りは成立しません。ここでは、エギングを安全かつ快適に楽しむために必要な、エギ以外の装備をチェックリスト形式でご紹介します。この記事を、あなたの最初の釣行準備の完全ガイドとして活用してください。
絶対に不可欠な装備
これらの道具がなければ、エギングは始まりません。最初に揃えるべき必須アイテムです。
- エギングロッド: 長さ8フィート3インチ~8フィート6インチ(約2.5m~2.6m)、硬さがML(ミディアムライト)またはM(ミディアム)の専用ロッドが標準的です。
- リール: 2500番~3000番サイズのスピニングリール。軽さと巻き心地の滑らかさが重要です。
- PEライン: リールに巻くメインのライン。太さは0.6号~0.8号が一般的。初心者は切れにくい0.8号から始めると安心です。
- ショックリーダー: PEラインの先に結ぶ、摩擦に強い糸。フロロカーボン素材の2.0号~2.5号を1mほど接続します。
- スナップ: リーダーの先に付け、エギをワンタッチで交換するための金具。
- ライフジャケット: 安全第一。万が一の落水に備え、必ず着用しましょう。堤防では腰巻タイプの自動膨張式が手軽でおすすめです。
あると非常に便利な装備
これらは必須ではありませんが、揃えることで釣りの快適度と釣果が格段に向上するアイテムです。
- エギケース: エギを安全かつ整理して持ち運ぶための専用ケース。カンナ(針)での怪我や、エギ同士の絡みを防ぎます。
- ギャフまたはタモ網: 釣れたイカを取り込むための道具。特に足場の高い堤防では必須です。
- イカ締めピック: 釣れたイカを新鮮な状態で持ち帰るために、その場で締めるための道具。
- ヘッドライト: 朝夕のマヅメ時や夜釣りの必需品。手元や足元を照らし、安全を確保します。
- 偏光サングラス: 水面のギラつきを抑え、水中の様子やイカの姿を見やすくします。また、飛んでくるエギから目を守る役割もあります。
- 小型クーラーボックスとチャック付き袋: 釣果を美味しく持ち帰るために。イカを袋に入れることで、真水に直接触れるのを防ぎ、クーラーボックスが墨で汚れるのも防げます。
結論:あなたはもう、水辺に立つ準備ができている
ここまで読み進めたあなたは、もはや釣具店で途方に暮れていた初心者ではありません。
- 号数は季節と状況に合わせるための指標であること。
- 沈下速度は水深を攻略するための武器であること。
- ピンクとオレンジは、最も信頼できる万能のパイロットであること。
- 下地テープは、光を操り、状況に適応するための奥義であること。
エギングの核心となる、これらの知識をあなたは完全に理解しました。これは、エギングを始める人々の9割が知らない、成功への最短ルートです。
この知識を羅針盤とし、自信を持ってあなただけのスターターキットを組み上げてください。そして、水辺に立ち、学んだすべてを実践してみてください。エギが空を切り、水面を割り、そしてロッドを通して伝わってくる生命の躍動。その最初の感動が、あなたを待っています。
エギングの世界へ、ようこそ。